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AI生成曲をボットで不正再生、約12億円詐取の男に実刑判決

  • 2026.10.9

AIで生成した大量の楽曲を音楽配信サービスにアップロードし、ボットに繰り返し再生させて印税をだまし取っていた米ノースカロライナ州の男に、禁錮18か月の判決が言い渡された。音楽ストリーミングの不正をめぐり、米連邦レベルで初めて刑事訴追された事件だという。(フロントロウ編集部)

最大1万のボットで再生回数を水増し

有罪となったのは、ミュージシャンのマイク・スミス(54歳)。2017年から2024年にかけて、数千ものボットを使い、自身の楽曲や、購入してアップロードしたAI生成楽曲を繰り返し再生させていた。

手口は周到だった。偽のメールアドレスや不正に入手したデビットカードを使って音楽配信サービスのアカウントを大量に作成し、ソフトウェアを使って同じ楽曲を繰り返し再生させるというもの。一度に稼働させていたボットアカウントは、最大1万にのぼったと報じられている。こうして水増しした再生回数によって不正に得た印税は、総額約800万ドル(約12億円)。2024年に逮捕されるまで、約7年間にわたって不正を続けていた。

検察は「本物のアーティストから奪った」と非難

スミスは通信詐欺の共謀罪について有罪を認めていた。最高刑は禁錮5年。弁護側は保護観察処分にとどめるよう求め、検察側は少なくとも46か月の禁錮を求めていたが、裁判所は禁錮18か月と出所後2年間の保護観察を言い渡した。また、司法取引の一環として、不正に得た約800万ドルの没収にも同意している。

連邦検事のジェイミー・マクドナルドは声明で、「実際のリスナーの代わりに自動化されたボットを使い、創造性の代わりに偽の楽曲を配信サービスにあふれさせることで、スミスは本物のアーティストとそのファンから何百万ドルもの印税を奪った」と厳しく非難した。

再生回数の水増しがアーティストの収益を奪う仕組み

なぜボットによる不正再生が、ほかのアーティストの損害につながるのか。Spotifyなどの音楽配信サービスでは、一定期間の総再生回数に占める各権利者の楽曲の再生割合などに応じて、収益を分配する仕組みが採用されている。そのため、不正に再生回数が水増しされると、正規の再生によってアーティストや権利者に分配されるはずの収益が減少する可能性がある。とりわけ小規模なアーティストにとって、不正再生は以前から深刻な問題とされてきた。

背景には、AI生成楽曲の急増もある。音楽配信サービスのDeezerでは、1日にアップロードされる楽曲のうちAI生成楽曲が5割を超え、人間が制作した楽曲の数を初めて上回ったという。さらに、調査では回答者の97%がAI生成楽曲と人間が制作した楽曲を聴き分けられなかったとする結果も報告されている。AI音楽をめぐっては、ドクター・ドレーら著名アーティストも意見を表明するなど、業界内で議論が続いている。

誰でも手軽に楽曲を大量生成できる時代に、再生回数の信頼性をどう守るのか。米連邦レベルで初めて刑事訴追された音楽ストリーミング不正事件の実刑判決は、音楽業界にとって重要な先例となりそうだ。

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