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「これを、3時間も煮たのか」正月の数の子を手作りした私。ひと口かんだ80代の父が笑った理由

  • 2026.10.8

年の瀬の台所で、数の子を煮始めた

60代の私には、正月が来るたびに思い出す料理の失敗があります。

数年前の年末、わが家では普段の料理を私が担当していました。毎日の食事には慣れていたこともあり、その年は「おせちも自分で作ってみよう」と思い立ったのです。

まず挑戦したのは数の子でした。せっかくならと、3000円ほどする立派なものを奮発しました。

包みを開けると黄色い粒がぎっしり詰まっていて、それだけで正月らしい気分になったのを覚えています。

ただ、私は数の子の作り方をきちんと調べていませんでした。

「おせちなんだから、出汁としょうゆで煮れば味がつくだろう」

そんなふうに考え、鍋に出汁としょうゆを入れ、数の子を煮始めました。

「3時間くらい煮れば、しっかり味もつくはずだ」

弱火でじっくり火を通しましたが、しばらくたっても思い描いていたような仕上がりにはなりません。それでも私は、時間をかければおいしくなると思い、そのまま煮続けました。

台所に出汁のにおいが広がると、奥の部屋から父が顔を出しました。

「いいにおいだな。何を作ってるんだ」

「数の子だよ。正月に食べようと思って」

結局、私は3時間ほど煮てから火を止めました。見た目には少し不安が残ったものの、これだけ時間をかけたのだから味はついているだろうと、そのときは満足していました。

ひと口食べた父が、動きを止めた

元日の朝、重箱を食卓に出し、数の子を小皿に盛りました。向かいに座っていた80代の父が、それを見て目を細めます。

「ほう、数の子まで作ったのか」

「うん。3時間くらい煮たから、味はついてると思うよ」

父は箸でひとつつまみ、口に入れました。

ところが、ひと口かんだところで動きが止まりました。しばらく無言でかんでいた父は、やがて私の顔を見て笑い始めました。

「これを、3時間も煮たのか」

「え、そんなに変?」

不思議に思って私も食べてみると、すぐに分かりました。

かたくてパサつき、私が知っている数の子のぽりぽりとした食感とはまるで違います。

「……なんで、こんなことになったんだろう」

時間をかければおいしくなると思っていた私は、そこでようやく失敗したことに気づきました。

後日、本屋で料理の本を開いてみると、私が作ろうとしていた味付け数の子は、長時間煮込むのではなく、出汁を使った調味液に漬けて味をなじませる料理だと知りました。

父はその正月、残った数の子を見るたびに、思い出したように笑っていました。

それ以来、わが家では味のついた数の子を買うことにしています。

翌年の正月、買ってきた数の子をひと口食べた父は、満足そうにうなずきました。

「うん。今年のは、ちゃんとぽりぽりするな」

当時はせっかく奮発したのにと残念でしたが、今では正月になるたびに思い出して笑ってしまう、わが家の失敗談です。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた60代以上男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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