1. トップ
  2. エピソード
  3. 「5万円でいいだろう」と甥の結婚祝いを決めた私。80代の母が「10万円にしなさい」と言った理由

「5万円でいいだろう」と甥の結婚祝いを決めた私。80代の母が「10万円にしなさい」と言った理由

  • 2026.10.8

こたつで切り出したお祝いの額

姉の長男が、式を挙げずに籍だけ入れて結婚したと聞いたのは、冬の初めでした。

60代の私がその甥に会ったのは、子どものころの2回きりです。

それでも甥は甥ですから、お祝いはきちんと渡そうと思いました。

自分の中では5万円と決めていました。

ただ、これでいいだろうと誰かに背中を押してもらいたい気持ちもあり、その日の昼、実家へ寄ったついでに80代の母へ話してみました。

こたつで向かい合いながら、私は言いました。

「甥っ子のお祝いは5万円で十分だろう」

「あら、そう」

母はみかんの皮をむきながら、軽く相づちを打ちました。

私はてっきり賛成してくれたのだと思い、そのまま続けました。

「式もないんだし、会ったのも2回だけだしさ」

すると母は手を止め、湯のみをひと口すすりました。

母が口にしたのは倍の金額

「お姉ちゃんの顔もあるの。10万円にしなさい」

「え、10万円?」

思わず聞き返すと、母は当然のような顔で続けました。

「あなた、昔お姉ちゃんにさんざんお世話になったでしょう。お嫁さんのおうちのこともあるんだから、5万円じゃお姉ちゃんも気にするわよ」

私は何か言い返そうとしましたが、母はもう次の話に移っていました。

「それから、お札は新しいのにしなさい。向きもそろえてね」

「……はい」

自分でも驚くほど素直な返事が出ました。60歳を過ぎても、母にこう言われると子どものころに戻ったような気分になります。

私はその足で銀行へ行き、窓口の列に並びました。

順番が来るまで財布のお札を確認すると、向きは見事にばらばらです。窓口では、1万円札10枚を新しいお札にしてもらいました。

家に帰ると祝い袋を机に広げ、お札を1枚ずつ入れます。母の言葉が頭に残っていて、入れ終わってから向きを3回も確かめてしまいました。

数日後の夜、姉から電話がかかってきました。

「お祝いありがとう。あんなにたくさん、よかったのに」

「いや、甥っ子だし。それくらいはさ」

少し間があったあと、姉が笑いました。

「お母さんに言われたでしょ」

図星でした。私は受話器を持ったまま、笑うしかありませんでした。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた60代以上男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

元記事で読む
の記事をもっとみる

注目コンテンツ