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「5万円でも買う価値がある」と即決した私。半年後、ドレスを着ていた場所は自分の部屋でした

  • 2026.10.7
「5万円でも買う価値がある」と即決した私。半年後、ドレスを着ていた場所は自分の部屋でした

仕事帰り、マネキンの前で足が止まった

今から40年ほど前、私がまだ20代で、実家から会社に通っていたころの話です。

ある日の仕事帰り、百貨店の婦人服売り場を通りかかった私は、一体のマネキンの前で思わず足を止めました。

着ていたのは、深い青のロングドレス。胸もとには細かな刺しゅうがあり、すそはふわりと広がっています。

気になって値札を見ると、5万円。当時の私のお給料ではかなり高い金額でした。

「5万円か…」

さすがにすぐには決められず、その場でしばらく迷いました。それでも、どうしてもドレスから目を離せません。

「でも、これなら買いたい」

そう思った私は、そのままレジへ向かいました。

大きな紙袋を抱えて家に帰ると、台所にいた母が、中から出てきたドレスを見て目を丸くしました。

「まあ、きれいね。どこに着ていくの?」

「そのうち、パーティーとかあるかもしれないし」

母は少し考えてから、私の顔を見ました。

「そんな予定、あった?」

「今はないけど、そのうちあるわよ」

そう言って、私はドレスを自分の部屋へ運びました。

半年待っても、着ていく場所はなかった

ところが、待っても待ってもパーティーに呼ばれることはありませんでした。

ドレスは部屋の壁に吊るされたまま。

夜になると、布団の中から眺めては、「いつ着られるんだろう」と思う日が続きました。

買ってから半年ほどたったある夜、私はとうとう思いました。

「もう、家で着ればいいか」

ドレスに袖を通し、髪をまとめ、いちばん上等なカップに紅茶を注ぎます。

鏡の前に立つと、せっかくなので少しだけ気取ってみたくなりました。

「本日はお招きいただき、ありがとうございます」

誰もいない部屋で会釈をした、そのときです。

コンコン、とドアをたたく音がしました。

少し開いたドアの向こうから、母が顔をのぞかせます。どうやら私の声が廊下まで聞こえていたようです。

母は、ドレス姿の私を上から下までしばらく見ていました。

「……どこか行くの?」

「……行かない」

母はそれ以上何も言わず、そっとドアを閉めました。

結局、ドレスが外へ出たのは

それから何年たっても、そのドレスを着て出かける日は来ませんでした。

深い青色もいつの間にかあせてしまい、人前で着るのは難しい状態になっていました。

とうとう手放すことにしたのは、ゴミ出しの日の朝です。

袋に入れたドレスを抱えて玄関へ向かうと、後ろから母の声がしました。

「あら。やっとお出かけ?」

私は思わず振り返りました。

何年も部屋にあったドレスが、初めて家の外へ出た日。

残念ながら、その行き先はパーティー会場ではなく、ゴミ置き場でした。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた60代以上女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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