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野菜は「買う」から「育てる」へ。物価高の今こそ始めたい、初心者にもやさしい秋の家庭菜園

  • 2026.10.7

「種まきしたのに芽が出なかった」「せっかく育てた野菜が虫だらけに」「家庭菜園で思ったように育たなかった」……そんな経験はありませんか? 失敗が続くうちに、「私には野菜づくりは向いていないのかも」と、家庭菜園を諦めてしまった方もいるかもしれません。 もしかすると、それは育て方の問題ではなく、その植物と育てていた季節が合っていなかっただけかもしれません。 有機無農薬によるローメンテナンスな栽培を実践する持田和樹さんが、初心者にもおすすめしたい「秋の家庭菜園」についてご案内します。

家庭菜園は“旬”がポイント

家庭菜園
菜園での収穫。

スーパーへ行けば、一年中たくさんの野菜が並ぶ現在。私たちは、野菜にもそれぞれ「旬」があることを、つい忘れてしまいがちです。

けれど植物には本来、それぞれに合った「芽を出し」「葉や根を育て」「花を咲かせ」「種子を残す」という命のリズムがあります。そのリズムに合わせて育てるだけで、家庭菜園はぐっと楽になります。

そして、秋は、初めて家庭菜園に挑戦する方にとっても、とてもおすすめしたい季節です。

なぜ、初心者には「秋の家庭菜園」がおすすめなのか

家庭菜園

家庭菜園というと、トマトやナス、ピーマン、キュウリなど、夏野菜を思い浮かべる方が多いでしょうか。ホームセンターの園芸コーナーでも、春になるとたくさんの夏野菜の苗が並びます。その光景を見ると、「今年こそ家庭菜園を始めてみよう」と思いますよね。

もちろん夏野菜を育てる楽しさは格別です。

しかし、初めて植物を育てる方にとって、日本の夏は意外と植物の栽培が難しい季節。気温が高く、土は乾きやすく、雑草は勢いよく伸び、さまざまな虫も活発になります。さらに近年は猛暑が続き、人間にとっても植物にとっても厳しい環境になっています。

一方、秋になると状況は少しずつ変わってきます。

雑草の勢いは弱まり、気温も徐々に落ち着いてきます。季節が進めば、虫たちの活動も少しずつ穏やかになります。もちろん秋でも虫がまったくいなくなるわけではなく、特にアブラナ科の野菜は、時期によってアオムシなどの被害を受けることもあります。それでも、真夏のような高温や乾燥、旺盛な雑草との格闘が少なくなることは、初心者にとって大きなメリットです。

何より、秋から冬にかけて育てやすい野菜には、比較的栽培がシンプルなものがたくさんあります。

「葉」と「根」を楽しむ秋冬におすすめの野菜

ニンジンとハツカダイコン
秋冬に育てやすいニンジンやハツカダイコン(ラディッシュ)。

夏の家庭菜園の主役は、トマト、ナス、ピーマンなどの「実」を収穫する野菜。それに対して、秋から冬に楽しみたいのは、

  • 小松菜
  • チンゲンサイ
  • 水菜
  • カブ
  • 大根
  • ニンジン
  • ホウレンソウ

などの葉物野菜や根菜類です。

葉物野菜

種類によって適温や種まき時期は異なりますが、これらの野菜類には冷涼な気候を好むものが多く、秋から冬は本来持つそうした性質を生かしやすい季節。例えば、小松菜やカブ、大根などのアブラナ科には、秋から冬に育てやすいものがたくさんあります。ニンジンなどの根菜や、パセリなど一部のセリ科植物も、暑さが落ち着く季節に育てやすくなります。

ここで大切なのは、「何を育てたいか」だけで選ばないこと。

「今の季節に、何が合っているのか」という視点を持ってみてください。

人間の都合に植物を合わせるのではなく、植物の性質に私たちが少し合わせてあげる。

それだけでも、ガーデニングはずっと楽になります。

ハツカダイコン
見た目もかわいらしく、栽培期間が短く育てやすいハツカダイコン。

一年中売られている野菜にも、本来の季節がある

スーパーの野菜
Iamkuranova/Shutterstock.com

現在は品種改良や栽培技術が進み、さまざまな野菜を長い期間栽培できるようになりました。小松菜など、品種や地域によっては一年を通して栽培できる野菜もあります。

これは素晴らしい技術です。

ただし、「栽培できる」ことと「初心者でも育てやすい」ことは、少し違います。

例えば冷涼な気候を好む植物を暑い時期に育てようとすれば、高温や乾燥によるストレスを受けやすくなりますし、植物が弱れば、病気や害虫など別の問題も起こりやすくなります。

すると、「虫がついたから農薬を使おう」「病気になったから薬を使おう」「うまく育たないから肥料を増やそう」と、次々と何かを足して解決したくなります。

その前に一度考えてみてほしいのが、そもそも、その植物にとって今は過ごしやすい季節かということ。

私自身も、長年植物を育てる中で、植物を元気に育てるためには、何か特別なものを与えること以上にその植物が持つ本来の性質を知ることが大切だと実感しています。

「虫がついた=失敗」ではない

家庭菜園
Cecilia Di Dio/Shutterstock.com

家庭菜園を始めた方から、「虫に全部食べられてしまいました」という話を聞くことがあります。

スーパーに並ぶ形の整った美しい野菜を見慣れていると、穴のあいた葉を見ると「失敗した」と感じてしまうかもしれません。特に葉を食用する葉物野菜は、少し虫に食べられただけでも目立ちます。

でも家庭菜園では、スーパーに並ぶ野菜と同じ規格を目指す必要はありません。

葉っぱに少しくらい穴があっても、大根が少し曲がっていても、ニンジンが二股になっていてもいい。自分や家族で食べるのであれば、それも立派な収穫です。そこに、家庭菜園ならではの自由さがあると思います。

農家さんは商品として野菜を出荷するため、品質や大きさ、形など、さまざまな条件を考えながら栽培されています。一方、家庭菜園では「商品」をつくる必要はなく、多少不揃いでも、自分で育て、収穫して食卓へ運ぶことができます。

野菜や農業資材の価格が変動し、異常気象によって農業そのものが難しくなっている今だからこそ、家庭の小さなスペースで食べ物を育てることには、以前とはまた違った価値があるように思います。

一粒の種子から、食卓までつながる

キッチンガーデン

秋冬の家庭菜園で、ぜひ体験してほしいのが「種まきから育てること」です。

苗を買って植えるのも楽しみ方の一つですが、小松菜やカブ、大根、ニンジンなどは、種まきから育てやすい野菜。土に小さな種子を播き、数日後、小さな芽が土を押し上げる。少しずつ葉が増えていく。そして、それを自分の手で収穫して食べる。

家庭菜園は、普段購入している野菜が、「商品」になる前は一つの生命だったという、当たり前のことを私たちに思い出させてくれます。子どもと一緒に種子を播けば、食育にもなりますね。

野菜がどのように育つのか。どんな虫がやってくるのか。雨が降った翌日に植物がどう変化するのか。教科書だけでは知ることのできない「命の時間」を、庭やプランターの中で体験することができます。

食卓

野菜と花とハーブを一緒に。「ポタジェ」という家庭菜園

ポタジェ
Sergey V Kalyakin/Shutterstock.com

今回、私がおすすめしたいのが「ポタジェ」という庭の楽しみ方です。

ポタジェとは、野菜だけを育てる畑ではありません。季節の野菜に、ハーブや花、時には果樹なども組み合わせ、食べることと眺めることの両方を楽しむ庭です。

例えば、葉物野菜の隣にハーブが育ち、その向こうでは季節の花が咲いている。収穫する場所でありながら、蝶が舞い、ハチが花を訪れ、人間にとっても美しい。私は、そんな「食べられる庭」がポタジェの大きな魅力だと思っています。

しかも、花やハーブを一緒に育てる理由は、美しいからだけではありません。

植物の種類を増やすことは、家庭菜園の生態系を豊かにすることにもつながります。

野菜だけを植えるより、いろいろな植物を育ててみる

ポタジェ
花が混じり咲くポタジェ。

例えば、ある敷地に同じ種類の野菜だけをたくさん植えたとします。そこは、その野菜を好む虫にとっては、好物がたくさん並んでいることになります。

一方、野菜の間にさまざまな花やハーブが混ざっていたらどうでしょう。植物の姿や香り、花の咲く時期などが複雑になり、庭そのものの環境が多様になります。

こうした植物の組み合わせによっては、害虫の行動や寄主植物の見つけやすさに影響を与えるケースもあります。また花を植えることで、花粉や蜜を求めてハチやチョウ、ハナアブなど、さまざまな昆虫が訪れるようになります。

虫を除外するのではなく、生き物のバランスを育てる

ポタジェ

「虫を呼んだら、逆に野菜が食べられてしまうのでは?」と心配する方もいるかもしれませんが、庭にくる虫のすべてが、野菜を食べる「害虫」ではありません。

例えば、アブラムシを食べるテントウムシや、幼虫がアブラムシなどを食べる種類もいるハナアブ、害虫を捕らえるクモやカマキリ。庭の環境によっては、トカゲやカエル、鳥などもやってきます。

花が咲けば、蜜や花粉を求める昆虫が訪れる。その昆虫を求めて、さらに別の生き物がやってくる。一つの生き物が増えればそれを食べる生き物が現れ、庭の中には、小さな食物網が生まれていきます。

私は、無農薬で植物を育てる中で、「虫を一匹もいなくする」ことよりも、「特定の虫だけが増えすぎない環境を育てる」ことのほうが大切なのではないかと感じるようになりました。

生物多様性というと、どこか壮大な自然環境の話のように聞こえるかもしれません。けれど、それは家庭の小さな庭やプランターからでも始められます。

野菜だけだった場所に花やハーブを1株植えてみたり、農薬を使う前に葉の上にいる虫を少し観察してみたり、そんな小さなところから、庭の生態系は少しずつ豊かになっていきます。

庭には、人間にはできない仕事をしてくれる生き物がいる

テントウムシ
アブラムシを食べてくれるテントウムシ。Harappa/Shutterstock.com

私たちには、庭仕事に使える時間には限りがあります。一日中、野菜の前に立って害虫が来ないか見張っていることなどできません。

でも、庭に暮らす生き物たちは違います。昼夜のどちらにも活動するものがいて、花粉を運び、ほかの虫を食べ、落ち葉や有機物の分解に関わるなど、人間には真似できない能力を持っています。

人間が一本一本の花を回らなくても受粉を助けてくれるハチなどの訪花昆虫。網を張ったり歩き回ったりして、庭にいる虫たちを捕らえるクモ。鳥やカエル、トカゲなども、それぞれの食性の中で庭の生態系に関わっています。

現代の農業では、AIやセンサー、さまざまな機械を活用した高度な技術も発達しています。それらも、これからの農業を支える大切な技術でしょう。

その一方で、自然界には、はるか昔から働き続けてきた仕組みがあります。

それが、生き物同士がつながり合う「生態系」というシステムです。

植物、昆虫、クモ、鳥、土の中の小さな生き物まで、それぞれが異なる役割を持ちながら庭を支えています。

人間の手による対策が必要になる場面ももちろんありますが、すべてを人間だけで管理しようとするのではなく、自然が持っている力を借りながら育てる。

そんな家庭菜園があってもいいのではないでしょうか。

ポタジェは「収穫する場所」から「命が循環する庭」へ

家庭菜園

ポタジェの魅力は、単に野菜と花を一緒に植えることではありません。

野菜やハーブ、季節の花々が育ち、生き物たちが暮らし、人間も収穫としてその恵みを少し分けてもらう場所。そこでは、人間だけが一方的に何かを「育てている」のではなく、さまざまな命がお互いに関わりながら、一つの庭をつくっています。そして、その循環が豊かになればなるほど、人間がすべてを管理しなくても、庭自身がバランスを取り戻そうとする力が働きやすくなります。

私はそこに、これからの家庭菜園の一つのヒントがあると思っています。

たくさん収穫できたかどうかだけを成功の基準にするのではなく、植物の成長や生き物たちの訪れ、子どもが初めて自分で野菜を収穫した経験などもまた、庭から受け取る大切な「収穫」です。

野菜を育てることから始まって、生き物が集まり、いつの間にか一つの小さな生態系が生まれている。

そんなポタジェを、ぜひ楽しんでみてください。

まずは、小さな場所から始めてみる

家庭菜園
Joanne Dale/Shutterstock.com

大きな畑がなくても、庭の一角やプランター1つからでも家庭菜園は始められます。最初からたくさんの種類を育てる必要もありません。

秋になったら、ぜひホームセンターや園芸店の種売り場へ行ってみてください。そして、種袋の裏側を見てみましょう。そこには、その植物を育てるための大切な情報がたくさん書かれています。

  • 種まきの時期
  • 発芽に適した温度
  • 収穫までのおおよその期間

など。

同じ野菜でも、品種や地域によって種まきの適期は変わります。特に日本は南北に長く、北海道と関東、九州では同じ時期でも気温が大きく異なります。

だからこそ「○月になったら必ず種子を播く」と覚えるのではなく、種袋の表示と自分の地域の気候を確認してみてください。

これは失敗を減らす、とても簡単で大切な習慣です。

失敗したのは、あなたに才能がなかったからではない

家庭菜園

これまで家庭菜園に挑戦してうまくいかなかった方に、最後に一つだけ伝えたいことがあります。

植物を育てることに「才能がない」と決めつけないでください。

「種子を播いたけれど芽が出なかった」「虫に食べられてしまった」「枯らしてしまった」という経験は、あなたが植物を育てることに向いていなかったからではなく、タイミングが少し違っていただけ、あるいはほんの少し環境が合わなかっただけかもしれません。

植物には、それぞれの季節があります。

春に芽吹くもの。夏の光を好むもの。秋の涼しさの中で育つもの。冬の寒さを経験することで、次の季節へ向かうもの。

植物を上手に育てる第一歩は、植物を私たちの都合に合わせることではなく、その植物がどんな季節を生きようとしているのかを知ることです。

この秋、1粒の種子を播いてみませんか

種まき
Max_555/Shutterstock.com

秋は、植物を育て始める季節です。

春のような華やかさはないかもしれませんが、これから冬を迎える土の中では、次の季節へ向けた命が静かに育っていきます。

まずは1袋の種から。1つのプランターから。

そこに花やハーブが加われば、小さな家庭菜園は、小さなポタジェへと変わっていきます。

自分で育てた野菜を収穫する喜び。花を訪れるハチや蝶を眺める時間。知らないうちに現れたテントウムシ。そして、その野菜を家族と食べる時間。

スーパーで野菜を買うだけでは出会えなかった物語が、1粒の種子から始まります。

この秋は、「育てる暮らし」の最初の一歩を踏み出してみませんか。

持田さん
庭の切り花と。

【この庭から生まれたものを、あなたの暮らしへ】

私が植物と向き合う中で見つけてきたことを綴った書籍、農薬に頼らず大切に育てたバラから生まれたローズウォーターなど、日々向き合っている「庭」から生まれた品々を、オンラインショップでご紹介しています。

日々の活動情報はインスタグラムにて発信中です。

Credit
文&写真(クレジット記載以外) / 持田和樹

-ガーデンライフコーディネーター-
ローズと植物のある暮らしから、心と身体、意識を整える生き方を提案。自然と調和するバラの庭や菜園づくりを通して、人と地球の健康を育む活動を行う。福祉事業所での食用バラ栽培により、「生物多様性アクション大賞2019」審査委員賞受賞。

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