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「出身地まで尋ねてくれるなんて」旅館の場所を尋ねた。だが、年配女性との会話で気づいた勘違い

  • 2026.10.6

冬の夕方、旅館が見つからない

出張で、初めて訪れる古い町に来たときのことです。

冬の夕方、古い木の家が並ぶ通りで、私はかばんを提げたまま立ち止まっていました。

予約した旅館が、どうしても見つかりません。冷たい風のなかを30分ほど歩き回り、同じ格子戸の前を通るのも、これで3度目でした。

指先の感覚までなくなってきたころ、通りの向こうから着物姿の年配の女性が歩いてきました。70代くらいでしょうか。背すじの伸びた上品な方でした。

私は思い切って声をかけました。

「すみません。道をうかがってもいいでしょうか」

「はい。どうされました?」

私は予約した旅館の名前を伝え、行き方が分からなくなってしまったと話しました。

女性は足を止め、方言らしき言葉で、旅館の場所を確かめるために何かを尋ね返しました。

ところが、寒さと疲れで頭が回っていなかったのでしょう。

私はその言葉を、なぜか「どこから来たのですか」と聞かれたのだと思い込んでしまったのです。

会社の先輩から、この町の人は旅人にも親切だと聞いていました。

そのせいもあって、「道を聞いただけなのに、出身地まで尋ねてくれるなんて」と、すっかり感心していました。

それなら、こちらもきちんと答えなければ。

私はかばんを持ち直し、背すじを伸ばしました。

胸を張って答えた、そのあとで

「生まれは雪国です。電車で10時間です」

女性は一瞬、目を丸くしました。

「まあ……ずいぶん遠くから」

「はい」

私が真面目な顔でうなずくと、女性は口もとを手で覆い、くすっと笑いました。

「ごめんなさいね。私が知りたかったのは、旅館の場所が分かるものをお持ちかどうかなんです」

そこでようやく、自分が盛大に勘違いしていたことに気づきました。

顔から火が出そうになり、さっきまで冷たかった風まで急に暑く感じます。私は慌ててかばんを開け、予約の紙を取り出しました。

「あっ……これです。すみません、勘違いしました」

女性は紙に書かれた住所を確認すると、通りの先を指しました。

「ここならバスですね。3つ先の停留所です。乗り場までご一緒しましょう」

そのまま女性は、バス停まで一緒に歩いてくれました。

道すがら、「雪はたくさん積もるんですか」と聞かれ、私は今度こそ聞かれたことにそのまま答えました。

やがて角の向こうからバスが来ると、女性は別れぎわに笑って言いました。

「雪国の方は、まっすぐでいいですね。お仕事、うまくいきますように」

翌日の商談でこの出来事を話すと、相手の人たちにも笑ってもらえました。緊張していた場も少し和み、その後の話も順調に進みました。

それ以来、知らない土地で道を尋ねるときは、まず住所の書かれた紙を見せるようにしています。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた50代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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