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「この資料、前のより10倍分かりやすいですね」新人の私が隣の先輩に言った直後、表紙を見て固まった理由

  • 2026.10.4

昼休みあけの事務所で

40年ほど前、私が入社1年目だったころの話です。

昼休みが終わったばかりの事務所で、私は自分の机に2冊の資料を並べていました。

右隣の席には、30代の先輩が座っています。

課長から渡されたのは、部署で使う新しい手順の資料でした。

前の年の資料と読み比べるように言われ、午前中から目を通していたのです。

新しい資料には図が多く、ページをめくるたびに手順がすっと頭に入ってきました。

一方、前の年の資料は30ページもあり、細かい字がびっしり。午前中に読み始めたものの、半分もいかないうちに何度もあくびをかみ殺していました。

新しい資料を読み終えた私は、すっかり感心していました。

思わず椅子ごと隣へ向き、先輩に声をかけました。

「この資料、前のより10倍分かりやすいですね」

先輩は書類から顔を上げました。

「そう?」

穏やかな返事だったので、私はてっきり同意してくれたのだと思いました。

「前のは字ばっかりで、途中からどこ読んでるのか分からなくなりました」

「まあ、字は多かったね」

その言葉に安心した私は、さらに調子に乗ってしまいました。

表紙にあった先輩の名前

私は前の年の資料を持ち上げました。

「しかも30ページですよ。これ、誰が作ったんでしょうね」

先輩はすぐには答えませんでした。ただ、少し困ったように笑っています。

その表情が気になり、私は何気なく手元の資料へ目を落としました。

表紙の下のほうに、小さく作成者の欄があります。

そこに書かれていたのは、右隣に座っている先輩の名前でした。

「……あ」

資料を持ったまま、私は固まりました。

先輩は私の机にある新しい資料を手に取り、ぱらぱらとめくりました。

「前のも、けっこう頑張ったんだけどね」

一気に顔が熱くなりました。

「すみません。本当にすみません…」

「いいよ。新しいほうが分かりやすいのは、本当だから」

そう言って先輩は、新しい資料の表紙をこちらへ向けました。

「これ作ったの、俺の後輩なんだ」

そのとき、通路の向こうの席から、小さな笑い声が聞こえてきました。私はますます恥ずかしくなり、もう一度先輩に頭を下げました。

あれから40年。人が作ったものについて口にするとき、私はまず表紙を見るようになりました。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた60代以上男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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