1. トップ
  2. エピソード
  3. 「10年ぶりじゃない?」駅で1時間話した、名前を思い出せない旧知の女性。だが、思わぬ事実に笑ったワケ

「10年ぶりじゃない?」駅で1時間話した、名前を思い出せない旧知の女性。だが、思わぬ事実に笑ったワケ

  • 2026.10.4

顔は分かるのに、名前だけが出てこない

仕事帰りの夕方、私は駅のホームのベンチで電車を待っていた。ぼんやり線路を眺めていると、後ろから明るい声がした。

「久しぶり!10年ぶりじゃない?」

振り向くと、同じ年ごろの女性がうれしそうに手を振っていた。

顔には覚えがある。笑うと目が細くなるところも知っている。それなのに、肝心の名前だけがどうしても出てこない。

「久しぶり!元気だった?」

私はとっさに笑顔で返した。話しているうちに思い出すだろうと思ったのだ。

彼女も隣に座り、仕事や家族のことなど、近況を話し始めた。ところが10分ほどたっても、名前はまったく浮かばない。

このまま聞くのも気まずくて、私は遠回しに探ってみた。

「そういえば、今って周りから何て呼ばれてる?」

「え? 昔と同じだよ。変わりようがないじゃん」

彼女は笑う。その「昔と同じ」が分からない。

ならば連絡先を見れば名前が出るかもしれないと思い、私はもう一度聞いた。

「せっかくだし、連絡先交換しない?」

すると彼女は少し不思議そうな顔をした。

「前に交換したじゃない。私、変えてないよ」

私は「あ、そっか」と笑うしかなかった。

1時間話したあと、彼女が小さな声で聞いた

話は思いのほか弾み、電車が来ても「もう少し話そうか」と、そのままホームに残った。

そんなことを繰り返して、気づけば3本も見送っていた。

名前の話題だけを避けながら話し続け、いつの間にか1時間ほどたっていた。

「さすがに、次のには乗らなきゃ」

彼女が腕時計を見たところへ、乗る電車がホームに入ってきた。

私たちは立ち上がり、乗り口の前まで歩く。するとドアが開く直前、彼女が少し言いにくそうな顔でこちらを見た。

「ねえ…1時間も話して今さらなんだけど、お名前なんでしたっけ?」

「えっ?」

思わず彼女の顔を見ると、気まずそうに笑っている。

その瞬間、私も吹き出した。

「待って。私もずっと聞きたかったの!顔は見たことあるな、って思ってたんだよね」

「うそ!全然そんなふうに見えなかった!」

「そっちこそ!」

開いたドアの前で、私たちは慌てて名乗り合った。

名字を聞いた瞬間、高校時代の廊下が頭に浮かんだ。彼女は隣のクラスにいた人だった。

「ああ! 思い出した!」

2人でまた笑い、彼女はそのまま電車へ。閉まるドアの向こうから、大きく手を振っていた。

それ以来、彼女と会うと、私はまず自分から名乗ることにしている。すると彼女も、毎回まじめな顔をして名乗り返してくる。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

元記事で読む
の記事をもっとみる

注目コンテンツ