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「水、くれ」と言って配膳場まで来る男性客。誰にも勤務時間を話していない私が、男性客の一言に凍った日

  • 2026.10.4
「水、くれ」と言って配膳場まで来る男性客。誰にも勤務時間を話していない私が、男性客の一言に凍った日

客のいない午後、すぐ後ろから聞こえた声

焼肉店でホールのパートを始めて1年になります。

昼の営業が落ち着く午後3時すぎは、客席に誰もいなくなることがあり、ホールを担当するのは私ひとりでした。

50代くらいの店長は、調理場の奥で夜の仕込みをしています。

その時間帯に、50代くらいの男性客がひとりで来るようになりました。

窓ぎわの席で定食を頼み、黙って肉を焼く。

最初は、ごく普通のお客様だと思っていました。

客席と調理場のあいだには、料理を受け渡す配膳場があります。

従業員しか入らない場所です。

ある日、そこで客席に背を向けて皿を重ねていると、すぐ後ろから声がしました。

「ちょっと」

驚いて振り向くと、男性が配膳場の入口より内側に立っていました。

席を見ると、グラスは空になっています。

呼ばれたのに気づかなかったのだと思い、私はすぐに声をかけました。

「すみません。お待たせしました」

「水、くれ」

「はい、すぐお持ちします。お席でお待ちください」

ところが次に来た日も、その次も、男性は配膳場までやってきました。

席から声をかけても聞こえる距離です。

しかも、グラスにはまだ水が残っていることもありました。

それでも用件を聞けば、返ってくるのはいつも「水」でした。

何度も続いたため、私は仕込みをしていた店長に相談しました。

「店長、あのお客様なんですけど…毎回、配膳場の中まで入ってくるんです」

店長は少し考えてから答えました。

「分かった。入口に札を出しておこう」

札の手前で、黙って立つようになった男性

翌日、配膳場の入口には「従業員以外は入らないでください」と書かれた札が下げられました。

すると男性は、中まで入ってこなくなりました。

ただ、今度は札のぎりぎり手前で立ち止まり、何も言わずに配膳場にいる私を見るようになったのです。

札より先には入ってきません。私は戸惑いながらも、こちらから声をかけました。

「お水ですか?」

男性は少し間を置いて、

「いや、いい」

とだけ答えました。

ほかのお客様が入って店内がにぎやかになると、男性はいつの間にか会計を済ませて帰っていました。

そんなある日、男性はまた札の手前に立ちました。私が皿を置くのを待っていたように、何気ない口調で言ったのです。

「今日も3時から1人なんだね」

一瞬、返事に詰まりました。

「…この時間は、そうですね」

「そう」

男性はそれだけ言うと、席へ戻っていきました。

私が勤務する日をお客様に話した覚えはありません。勤務の予定が書かれた紙も店の奥にあります。

もちろん、何度か来るうちに時間帯を覚えただけなのかもしれません。それでも「今日も」と言われたことが気になり、私は店長にそのまま伝えました。

それから午後3時台は、できるだけ店長もホールに出てくれるようになりました。

すると不思議なことに、店長がその時間にホールにいる日は、男性は店に来なくなりました。反対に、店長が仕入れで店を空けている日に姿を見せることはありました。

それでも男性は、あの札より先には入ってきません。

私は今もこの店で働いています。

午後3時。客のいない店内で入口の戸が開く音がすると、今でも思わずそちらを確認してしまいます。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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