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「残業、お疲れさま。愛をこめて」同じ会社の妻に送ったはずの一文。だが、真っ先に届いた返信とは

  • 2026.10.3

資料を作り終えた夜のひと息

その夜、職場の時計は22時を少し回っていた。

僕は自分の机で、朝から取りかかっていた大量の資料を、ようやく作り終えたところだった。

まわりの席には、同じチームの同僚がまだ何人か残り、黙って画面に向かっている。

妻も同じ会社の別の部署で働いていて、2人とも残業が多い。

今ごろは別の階で、妻もまだ仕事をしているはずだった。

せめて少しでも元気づけようと、僕は社内のチャットを開いた。

「22時まで残業、お疲れさま。愛をこめて」

「帰りにちょっと奮発して、おいしいもの買って帰ろう」

我ながら悪くない。疲れているときなら、こんな一言でも少しはうれしいだろう。

そう思いながら送信ボタンを押し、冷めたコーヒーをひと口飲んだ。

妻が画面を見て、少し笑ってくれたらいい。

そんなことを考えながら返事を待っていた。

妻ではなく、15人に届いていた

ところが、なかなか返事が来ない。

「忙しいのかな」と画面を見直した瞬間、僕は固まった。

いちばん上に表示されていた宛先は妻ではない。

連絡用に使っている、15人のチームのグループだった。

一気に血の気が引いた。

あわてて取り消そうとしたが、僕が送った2行には、すでに読んだことを示すしるしがいくつも付いている。

斜め向かいの席では、同僚が画面を見ながら肩を震わせていた。

誰も口を開かない。その沈黙が余計につらい。

しばらくして、最初に返信してきたのは同じチームの若い後輩だった。

「僕にもおいしいもの、買ってきてくれるんですか」

思わず机に突っ伏しそうになった。

さらに、先に帰ったはずの上司からも、愛の力で明日の商談も頼むぞ、と一言だけ届いた。

そこでとうとう、近くの席から笑い声がもれた。

隣の同僚が口元を押さえながら、僕を見る。

「すみません…もう無理です」

「頼む。見なかったことにしてくれ」

「いや、届いてますから」

僕はとうとう机に顔を伏せた。耳まで熱くなっているのが自分でも分かった。

翌日、妻から言われたこと

次の日、廊下で妻とすれ違った。

妻は僕の前で足を止めると、あきれたように笑った。

「聞いたよ。私には届いてないけどね」

「…今から送り直そうか?」

「もういいよ。それより、おいしいものって何?」

その夜、僕は約束どおり、少し値の張るケーキを2つ買って帰った。

箱を開けながら、妻が笑う。

「チームの人たちの分は買わなくてよかったの?」

「それは勘弁してくれ」

それ以来、チームで残業が続くと、誰かが僕のほうを見て言うようになった。

「そろそろ、愛の力が必要ですね」

そのたびに僕は、送信ボタンを押す前に宛先を見る癖がついた。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた50代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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