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A24新作で再注目。シリコンバレーを騙した女、エリザベス・ホームズを支える富豪婚約者は何者?

  • 2026.10.3
Philip Pacheco / Getty Images

血液検査のスタートアップ「セラノス」の創業者として一時シリコンバレーの寵児となるも、間もなくその不正が暴かれて詐欺事件の中心人物へと転落したエリザベス・ホームズ。現在、投資家を欺いた罪で服役する彼女を支えているのが、ホテル御曹司の婚約者、ビリー・エヴァンスだ。騒動の渦中で出会った二人は婚約し、収監前には2人の子どもまでもうけている。

収監直前の34日間に密着したA24の新作ドキュメンタリー映画『You Can See Everything』(2026年10月16日に北米劇場公開)で再び注目を集めるホームズだが、驚くことに、エヴァンスも血液検査会社を立ち上げたという。彼は何者で、なぜ彼女と人生を共にする道を選んだのか。異例のラブストーリーと、セラノスを想起させる新事業に迫る。AU版『ELLE』より。

MIT卒のホテル御曹司から医療ビジネスの起業家へ

Philip Pacheco / Getty Images

ビリー・エヴァンスは、婚約者のホームズとはまったく異なる業界の出身。34歳の彼は、祖父母のウィリアムとアン・エヴァンスが1953年にサンディエゴで創業した、家族経営のホテル会社「エヴァンス・ホテルズ」の御曹司だ。同社は現在、市内で「Bahia Resort Hotel」をはじめ3軒の高級ホテルを運営しているという。

エヴァンスは2010〜2015年にマサチューセッツ工科大学(MIT)で学び、経済学の理学士号を取得。在学中には全額奨学金で上海の復旦大学に留学し、中国語と中国文学も学んだ。

ホームズと同じく起業に関心を持ち、中国と米国の富裕層向けに医療渡航を手配する事業を立ち上げたが失敗に終わる。その後、LinkedInやルミナー・テクノロジーズ(2025年12月に破綻)で戦略や事業運営に携わり、現在は診断技術のスタートアップ「Haemanthus(ヘマンサス)」のCEOを務めている。

エヴァンスが立ち上げた血液検査会社「ヘマンサス」

エヴァンスが歩むキャリアは、驚くほどホームズと酷似している。2024年、彼は血液や唾液、尿を分析し、病気の兆候を検出する技術を開発する診断技術のスタートアップ「Haemanthus(ヘマンサス)」を設立した。ABCニュースによると、同社は当初、友人や家族から350万ドル(約5億5,000万円)を調達。その後、さらに1,500万ドル(約23億6,000万円)の資金を確保したと報じられている。

セラノスとの類似点は当然ながら指摘されているが、同社は2025年5月、Xの投稿で次のように反論している。「これは“セラノス2.0”ではありません。セラノスは既存の検査を小型化しようとしていました。私たちのアプローチは根本的に異なります。光を使って体液に含まれる分子の情報を包括的に読み取り、現在の検査では検出できないパターンを見つけます。既存の方法を改良するのではなく、まったく異なる枠組みなのです」

セラノス事件の渦中で出会った2人

MediaNews Group/The Mercury News via Getty Images / Getty Images

ホームズとエヴァンスが初めて出会ったのは、セラノスのスキャンダルが過熱していた2017年、あるチャリティーイベントがきっかけだった。ホームズが『ピープル』誌に語ったインタビューによると、二人はすぐに心を通わせたという。「私は彼にすっかり恋をしていました。彼を愛していたんです」とホームズ。「私たちは何時間も話しました。人生でこれほどはっきりと心が動いた瞬間はありませんでした。自分の心を信じた瞬間でした」

エヴァンスも同じように感じていたようで、2022年9月、量刑を決める判事に宛てた手紙にこう記している。「世界のほかのすべてが消え去ったようでした。知らない相手にこれほど安心して自分のことを話したいと思えるのは、不思議な感覚でした。彼女の子どものような好奇心と、飾らない人柄に心を奪われました。彼女は、それまでに出会った誰よりも真剣に私の話を聞いてくれました。私たちは何時間も話し、私は時間を忘れていました。そして、自分では気づいていなかったとしても、恋に落ちていたのです」

二人は出会いから半年後に交際を開始。『ピープル』誌によると、エヴァンスはホームズと交際することにためらいもあったが、彼女をよく知るにつれて気持ちが深まっていったという。そして2018年、テイラー・スウィフトの「レピュテーション」ツアーの公演後、エヴァンスは会場で購入した銀色のヘビの指輪を手に、片膝をついてホームズにプロポーズした。

世間の疑念をよそに、閉じていく二人の世界

Justin Sullivan / Getty Images

この時点で、セラノスのスキャンダルはすでに大きく展開していた。ウォール・ストリート・ジャーナル紙が同社の血液検査技術について重大な疑問を初めて提起したのは2015年。2018年6月には、ホームズとセラノス元社長のラメシュ・“サニー”・バルワニが詐欺の罪で刑事起訴されていた。

一方が10年以上刑務所で過ごす可能性に直面していたにもかかわらず、2人は残りの人生を共にすることを喜んでいた。当然かもしれないが、エヴァンスの家族や友人らは懸念を示した。「ビリーの家族が私に疑いの目を向けていたのは確かだと思います。でも、その過程には感謝しています」とホームズは『ピープル』誌で語っている。「いま私が経験しているような状況では、その人がどんな人なのかが本当によく分かります。この裁判を経験するなかで、私たちは絆を築いてきました。そして私には、何度でもこの状況に立ち向かい続ける強さがあります」

しかし、エヴァンスが判事に宛てた手紙からは、ホームズとの関係を続けるなかで周囲の反応が疑念にとどまらず、一部の友人や家族との断絶にまで至っていたことがうかがえる。

「理由も分からないまま離れていった友人もいれば、私と付き合わなくなった家族もいます。結婚式への招待を取り消されたこともありました。自分の子どもを私の家族と関わらせたくないという理由で、ほかの家庭から息子が避けられたこともあります」

「私の友人、同僚、知人の何百人もが、特ダネを求める記者にしつこく追い回されてきました。私たちはプライバシーを守るため、窓のシャッターを閉めたまま眠り、毎朝の美しい日の出を見ることもできません。この状況は、一生ついて回るでしょう。エリザベス・ホームズに向けられる侮蔑から逃れることはできないのです」

ホームズとエヴァンスは2018年から婚約しているものの、まだ結婚していないとみられている。極秘結婚の噂は流れているが、二人が結婚許可証を取得したことを示す公的な記録はない。ホームズ自身も『ピープル』誌のインタビューで、「いつか結婚するかもしれませんが、私たちの絆は一枚の紙以上のものです」と語っている。

子どもを立て続けに出産したホームズ。収監逃れとの批判も

二人の間には、2021年7月10日生まれのウィリアム・ホームズ・エヴァンスと、2023年2月ごろに生まれたインヴィクタの2人の子どもがいる。ウィリアムが生まれたのは、ホームズの刑事裁判が始まる予定のわずか数週間前だったため裁判は延期。さらに1年後にはインヴィクタの誕生によりホームズの収監予定日が約1カ月延期された。

これらの妊娠のタイミングについては、ホームズが収監を免れるために子どもを利用しているのでは?と疑問の声が上がっている。事実、「ロサンゼルス・タイムズ」紙は弁護側が2023年2月、有罪判決に対する控訴中も彼女を収監せずにおくべきだと主張し、その理由の一つとして「非常に幼い二人の子ども」がいることを挙げていたことを伝えている。また、エヴァンスも量刑を決める判事に宛てた手紙のなかで、家族のために寛大な処分を求めていた。「リズと一日でも離れて過ごすことを考えると、胸が張り裂けそうです。息子が、武装した看守に見張られながらガラス越しに母親との関係を育んでいく未来を思うと心が痛みます」

結局、弁護側やエヴァンスの要請は認められず、ホームズはインヴィクタの出産から約3カ月後の2023年5月に収監された。ホームズは『ピープル』誌に「周囲にどう見えるかは分かっています。でも、私はずっと母親になりたかったんです」と語った。「私は刑務所のなかにいて、子どもたちの人生の大切な瞬間すべてに立ち会えない。それがつらいんです。人々が私について何を思うかは自由です。でも、妊娠や出産は自然な成り行きで、私の人生で最も幸せな出来事でした。子どもたちを愛しています」

エリザベス・ホームズの元パートナー、サニー・バルワニの現在

Ramin Rahimian / Getty Images

エヴァンスと出会う前にホームズが長年交際していたのは、セラノスの元社長兼最高執行責任者(COO)、ラメシュ・“サニー”・バルワニだ。二人は2002年、中国での中国語研修プログラムで出会った。当時、ホームズは18歳でバルワニは37歳だった。

二人は数年後に交際を始め、2009年にはバルワニがセラノスに加わったことで私生活だけでなく仕事でもパートナーに。彼はホームズの側近として経営に深く関わったが、交際はほぼ秘密にされ、投資家や従業員も二人の関係を知らなかったと報じられている。

2016年に二人は破局、バルワニは同年セラノスを退社。ホームズは翌年にエヴァンスと出会った。その後の刑事裁判で、ホームズはバルワニから支配され、精神的・性的虐待を受けていたと証言したが、バルワニはこれを強く否定している。ホームズはまた、彼の影響がセラノスでの判断の一部に及んでいたと述べている。

バルワニは2022年にセラノスをめぐる詐欺と共謀の計12件について有罪評決を受け、約13年の禁錮刑を言い渡されたのち、2023年4月20日にカリフォルニア州の連邦刑務所に収監された。

A24のドキュメンタリー『You Can See Everything』ではいったいどのような真実が明らかにされるのか。ホームズのそばにいるエヴァンスの存在にも注目したい。

Translation & Text : Naoko Ogata


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