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「もう普通にしゃべっていいんだよね?」上階からの苦情で小声になった母娘。だが、管理会社の訪問で変わったこと

  • 2026.10.3

家の中でも小声で話すようになった

2階建ての賃貸アパートの1階で、私は大学生の娘と2人で暮らしている。

去年から、クローゼットの戸を閉めたり、洗濯機を回したりすると、天井からドン、ドンと床を叩くような音が返ってくるようになった。

真上の部屋には、60代くらいの男性が住んでいる。

昼でも夜でも関係なかった。

こちらの生活音が気になるのかもしれないと思い、戸はできるだけ静かに閉め、洗濯も昼のうちに済ませるようにした。それでも、娘と普通に話しているだけで音がすることがあった。

「お母さん、まただね」

「うん…。もう少し小さい声で話そうか」

いつの間にか、自宅なのに娘と声をひそめて話すようになっていた。

そんなある日、管理会社の担当者から電話がかかってきた。

「上の階の方から、テレビの音がうるさいというご連絡がありまして」

思わず聞き返した。

「テレビですか?うちにはテレビがないんです」

「そうなんですか……。上の方は、下の部屋から音がするとおっしゃっていまして。念のため、生活音にはお気をつけいただけますか」

「でも、本当にテレビは置いていないんです」

そう伝えても、その場ではそれ以上の確認にはならなかった。

その後も、上の階から苦情があったという電話は何度か続いた。電話を切るたびに、「私たちが気づかないうちに何か大きな音を出しているのだろうか」と考えるようになった。

休みの日には、娘と用もないのに外へ出ることさえあった。

静かな部屋に響いた3回の音

冬のある日、水道管の凍結を防ぐ手順を説明するため、管理会社の担当者がうちを訪ねてきた。

以前電話をかけてきた、40代くらいの男性だった。

娘は大学へ行っていて、部屋にいたのは私だけだった。

担当者が玄関から入り、居間の真ん中に立つ。

私は台所との境あたりで話を聞いていた。

テレビもついていない静かな部屋だった。

「では、元栓の場所からご説明しますね」

担当者が普通の声で話し始めた、そのときだった。

ドン、ドン、ドン。

天井から3回、大きな音が響いた。

担当者は言葉を止め、そのまま天井を見上げた。

私は思わず口を開いた。

「…いつも、こんな感じなんです。クローゼットを閉めても、娘と話していても」

担当者はしばらく天井を見たあと、何も置いていない壁ぎわにも目を向けた。そして、私のほうへ向き直った。

「今の音は、私もここで確認しました。これまで何度も注意のお電話をしてしまって、申し訳ありませんでした」

「いえ…。実際に聞いてもらえてよかったです」

元栓の説明を終えると、担当者は外へ出て、そのまま階段を上がっていった。

しばらくして戻ってくると、玄関先でこう言った。

「上の階の方には、床を叩くのはやめていただくようお伝えしました」

それ以降、管理会社から注意の電話がかかってくることはなくなった。天井からの音も聞こえなくなった。

その晩、帰宅した娘がクローゼットの戸を閉めた。少し音がして、2人で思わず天井を見上げた。

何も聞こえない。

娘が少し笑って言った。

「ねえ、もう普通にしゃべっていいんだよね?」

「うん。もう小声じゃなくていいよ」

娘が吹き出し、私もつられて笑った。

家の中に2人の普通の声が響いたのは、ずいぶん久しぶりのことだった。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた50代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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