1. トップ
  2. エピソード
  3. 「うちの子は綺麗だからいいでしょ」大浴場で犬にドライヤーを使う女性。だが、周囲が驚く中で支配人が伝えた一言

「うちの子は綺麗だからいいでしょ」大浴場で犬にドライヤーを使う女性。だが、周囲が驚く中で支配人が伝えた一言

  • 2026.10.3

洗面台にのった小さな犬

1年ほど前、少し奮発して泊まった温泉旅館でのことだ。夕食のあとに大浴場で温まり、私は脱衣所の洗面台の前で髪を乾かしていた。

ほかにも浴衣姿のお客さんが5人ほどいて、それぞれ髪を乾かしたり、身支度をしたりしていた。

隣の洗面台では、50代くらいの女性が持ち込んだ大きなドライヤーで髪を乾かしていた。やがて自分の髪を乾かし終えると、女性は足元のかごから、タオルにくるまれた小さな犬を抱き上げた。

「はい、次はあなたの番ね」

そう言うと、女性は犬を洗面台の上にのせ、毛にドライヤーの風を当て始めた。

私は思わず手を止めた。鏡を見ると、周りのお客さんも驚いたように女性のほうを見ている。

ドライヤーの風で犬の細い毛がふわふわと舞い、洗面台の周りにも落ちていた。隣にいたお客さんは化粧ポーチを手に取ると、何も言わず別の洗面台へ移った。

どうしたものかと思っていると、20代くらいの女性従業員が入口から入ってきた。

「お客様、申し訳ありません。こちらでワンちゃんにドライヤーを使うのはご遠慮いただいております」

女性は振り返り、少し不満そうな顔をした。

「え? どうして?」

「ほかのお客様もお使いになる場所ですので……」

すると女性は、ドライヤーを止めないまま声を大きくした。

「うちの子は綺麗だからいいでしょ、10分で終わるわよ」

支配人が静かに伝えたこと

従業員は困ったように頭を下げ、いったん入口のほうへ戻った。ほどなくして、50代くらいの女性支配人がやってきた。

支配人は女性のそばまで行くと、落ち着いた声で話しかけた。

「お客様、申し訳ございません。当館ではペットをお連れでのご宿泊をお受けしておりません」

女性は犬を抱き寄せた。

「でも、この子は家族なのよ」

支配人はうなずいてから、静かに続けた。

「大切なご家族なのは承知しております。ただ、こちらは皆さまがお使いになる場所です。申し訳ありませんが、ここで乾かすことはできません」

さらに、今後についてはフロントで相談すること、必要なら近くのペット同伴可能な宿を調べることもできると伝えた。

女性は何か言いかけたが、鏡の中に映る周囲のお客さんに気づいたのか、そのまま口を閉じた。

やがてドライヤーのスイッチを切り、犬をタオルで包み直す。

「……わかりました」

女性は犬を抱いて脱衣所を出ていき、支配人もそのあとに続いた。

残った従業員は洗面台の周りを丁寧に拭き、私たちに頭を下げた。

「お騒がせして申し訳ございませんでした」

移動していたお客さんも、ようやく元の場所へ戻ってきた。

犬を大切な家族と思う気持ちは分かる。それでも、多くの人が一緒に使う場所では、守らなければならない線引きがあるのだと感じた出来事だった。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた40代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

元記事で読む
の記事をもっとみる

注目コンテンツ