1. トップ
  2. エピソード
  3. 「娘が30分で帰ってきた家は、ダメな家だから」笑顔のママ友が、うちの玄関でゆっくり見回していた理由

「娘が30分で帰ってきた家は、ダメな家だから」笑顔のママ友が、うちの玄関でゆっくり見回していた理由

  • 2026.10.3

玄関でゆっくり動いた目

娘が5歳で保育園に通っていたころ、同じクラスの女の子とそのお母さんが、週末になるとよくうちへ遊びに来ていました。

ママ友は30代後半くらいで、いつも穏やかに笑っている人でした。

その日も子どもたちは夕方まで人形で遊び、そろそろ帰る時間に。

私は上がり口に立ち、ママ友はしゃがんで娘さんに靴をはかせていました。

「今日もありがとう。長くおじゃましちゃって」

「ううん。うちの子も楽しそうだったから」

娘さんの靴をはかせて立ち上がると、ママ友の目が私の肩ごしに動きました。

廊下の奥、開いた居間の戸、そして階段の上へ。ゆっくり家の中を見渡しているように見えました。

「うちの子、ここ気に入ったみたい」

「よかった。また遊びに来てね」

私はほめてもらえたのだと思い、笑って見送りました。

片づいていない廊下を見られたことが、少し恥ずかしかったくらいです。

「ダメな家だから」と笑顔で言った

ひと月ほどたった朝、娘を預けて保育園の門を出ると、ママ友と一緒になりました。

そこで彼女は、別のお母さんの家へ娘さんを遊びに行かせた話を始めました。私も知っている、いつもやさしいお母さんの家です。

「この前ね、娘が30分で帰ってきたの」

「え、30分で?」

ママ友は笑顔のまま、さらりと言いました。

「娘が30分で帰ってきた家は、ダメな家だから。もう行かせないの」

「…そうなんだ」

私はそれ以上、何と言えばいいのか分かりませんでした。

ママ友はにこやかに会釈すると、そのまま先に歩いていきました。

そのとき、私は以前うちの玄関で向けられた視線を思い出しました。

あれは単に家の中を見ていただけではなく、娘さんが楽しく過ごせる家かどうかを気にしていたのかもしれない。

そう考えると、急に落ち着かなくなりました。

いつもより早く「帰る」と言った日

それから2人が遊びに来るたび、私は娘さんが帰るときの表情を気にするようになりました。おやつの種類を増やし、新しい折り紙まで買い足しました。

「ママ、今日はお客さんの日?」

「お友だちが来る日だよ」

ある土曜日、娘さんはいつもより少し早く「もう帰る」と言い、自分で靴をはきました。

ママ友はたたきに立ったまま、廊下の奥から階段のほうへ、もう一度ゆっくり目を動かしました。表情はいつもの笑顔のままです。

「じゃあ、またね」

「うん。またね」

けれど、次の週から2人は来なくなりました。それきり、あの親子がうちに上がったことはありません。

送り迎えで顔を合わせれば、ママ友は以前と変わらず笑顔であいさつをします。

「おはよう。今日は冷えるね」

私も今までどおり返しています。

今も私は同じ家に住んでいます。ママ友がうちの前を通るところを私が見かけたときは、門の前で一度足を止め、玄関のほうへ目を向けています。

その姿を見るたび、私はあの「ダメな家だから」という一言を思い出すのです。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた40代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

元記事で読む
の記事をもっとみる

注目コンテンツ