1. トップ
  2. エピソード
  3. 「同じ部屋でイビキかいたらごめんね」と先に謝った私。女3人の温泉旅行で、眠れなかった本当の理由

「同じ部屋でイビキかいたらごめんね」と先に謝った私。女3人の温泉旅行で、眠れなかった本当の理由

  • 2026.10.3

寝る前に念を押した、真ん中の布団

その週はずっと残業続きで、金曜の夜にはくたくたでした。そこへ友人2人から誘いがあり、仕事帰りにそのまま、近場の温泉旅館へ女3人で1泊することになりました。

急に決めたので、空いていたのは12畳の和室ひとつだけです。

温泉につかり、料理を食べ、カードゲームで笑っているうちに、時計は深夜0時を回りました。

布団は川の字に並んでいます。右が宿を取ってくれた幹事役の友人、左がのんびり屋の友人で、私は真ん中でした。

歯みがきを終えた私は、2人に向かって手を合わせました。

疲れた日の私はひどいと、家族に何度も言われてきたからです。

「同じ部屋でイビキかいたらごめんね」

「大丈夫、大丈夫。こっちも疲れてるから気づかないよ」

幹事役の友人は笑って手を振りました。それでも私は落ち着かず、布団に入ってからもう一度、顔だけ出して頼みました。

「本当にうるさかったら起こしてね。遠慮しないで」

「はいはい、おやすみ」

のんびり屋の友人があくびまじりに答えて電気を消し、部屋は静かになりました。今夜いちばん迷惑をかけるのは自分だと、私は本気で思っていました。

朝まで続いた音と、朝食の席の一言

電気を消して5分後、右隣から低い地鳴りのような音が響きはじめました。イビキでした。

畳の下に怪獣がいるのかと思うほどの音で、規則正しく、力強く続きます。

私は枕を耳に当てましたが、音は枕を通りぬけてきます。ときどきイビキがやむと、今度は寝言がはっきり聞こえました。

「だから、それは先週も言いましたよね」

夢の中でも、誰かに仕事の注意をしているようでした。左隣の友人は一度だけ体を起こし、右のほうを見て笑いました。

「うるさいなあ」

そう言うと、すぐにまた寝息を立てはじめました。

私だけが天井を見たまま、そのうち収まるだろうと待ちつづけ、気づけば障子の向こうが明るくなっていました。

翌朝、朝食会場の席についても、私は箸が進みませんでした。

向かいでは幹事役の友人が、つやつやした顔でごはんをおかわりしています。

「食べないの?私は久しぶりによく寝たよ」

「…そう」

「そうそう、あなた、イビキなんて全然かいてなかったよ。心配して損したね」

私の隣でお茶を飲んでいたのんびり屋の友人が、吹き出しそうになって口を押さえました。私は力なく笑いました。

「……それはよかった」

帰りの電車で、私は座ったとたんに眠りました。目を覚ますと、隣の2人が撮ったばかりの写真をこちらに向けて笑っています。

「ほら、やっぱりかいてる」

次の旅行から、私のかばんには真っ先に耳せんが入るようになりました。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた40代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

元記事で読む
の記事をもっとみる

注目コンテンツ