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「社長、座椅子は4つ頼んでおきました」翌週、職場に届いた巨大な段ボール4箱を開けて固まった私

  • 2026.10.4

気を利かせた「4つ」

小さな会社で、事務の仕事を長く続けている。

事務所の奥には靴を脱いで上がる畳の小上がりがあって、社長は昼になるとそこで弁当を広げ、壁にもたれて休憩をとる。

ある日、その小上がりから戻ってきた社長が、腰をさすりながら私の机の横で足を止めた。

「休憩用に、座椅子を1つ頼んでおいて」

「分かりました。今日のうちに注文しておきますね」

私は小上がりをのぞいてみた。畳は4人がゆったり座れる広さで、そこに座椅子が1つだけ置かれている様子を思い浮かべると、どうにも寂しい。

お客様が来たときにも使えるのだから、数はそろえておいたほうがいい。

私はパソコンで通販の画面を開き、落ち着いた色の座椅子を選んで、個数の欄に「4」と入れた。注文を終えると、その足で社長の席へ報告に行った。

「社長、座椅子は4つ頼んでおきました」

「4つ?ああ、お客さん用か。気が利くね」

社長が笑ってくれたので、私はすっかり気をよくした。昼休みには、向かいの席の同僚にまで話して聞かせた。

「私、こういうところは抜かりないの」

「さすがですね。届くのが楽しみです」

翌週、届いた段ボールの山

翌週の昼過ぎ、運送会社のトラックが事務所の前に止まった。

配達員さんが台車で運びこんできた段ボールは、私の背丈ほどもあった。座椅子にしては大きいと思ったが、しっかり梱包してあるのだろうと受け取りの印を押した。

「あと3箱ありますので、続けて入れますね」

2箱、3箱、4箱と、同じ大きさの箱が通路に並んでいった。コピー機へ行く道がふさがり、同僚たちが席から立ち上がってこちらを見ている。

私は1箱目のテープをはがし、中をのぞいて手を止めた。座椅子が8個、重なって入っていた。

あわてて注文画面を見直すと、商品名の最後に小さく「8個セット」と書いてある。4つのつもりが、8個入りを4箱で32個。休憩を終えて小上がりから出てきた社長は、箱の山と固まっている私を順番に見て、あきれた顔になった。

「座椅子が32個、どこに置くんだ。うちは旅館じゃないぞ」

向かいの席の同僚が、口を押さえて肩をふるわせた。返品はできないと分かり、私は小上がりに4つ、会議室に6つ並べ、残りは近所の公民館と取引先へ配って歩いた。

公民館の人には、ちょうど足りなかったんですと喜ばれた。

それ以来、社長は私に何かを頼むとき、必ず指を1本立ててこう言う。

「1つだよ。1セットじゃなくて、1つ」


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた60代以上女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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