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「本当にこんな世界があったの?」と驚いて…綾瀬はるかが語る、違和感への向き合い方「否定せず、声をあげ…」《バブル期の“生きづらさ”と女性たちの“戦い”》

  • 2026.10.2

日本初の「ハラスメント」裁判に挑んだ女性たちに着想を得て描いた映画『ファーストボイス』で、人間味と愛嬌、力強さを兼ね備えた主人公・朝日道子弁護士を演じた綾瀬はるかさん。本作で体現したパワフルな女性像について、撮影エピソードを振り返りながら語っていただきました。


当時はどれほどの勇気が必要だったのだろう

綾瀬はるかさん。

――今回、日本初の「ハラスメント」裁判に立ち向かう弁護士・朝日道子を演じるにあたり、意識されたことを教えてください。

以前『元彼の遺言状』というドラマでも弁護士役をやらせていただきましたが、今回はバブル時代の設定ですし、実話に着想を得た作品でもあり、社会の様子や描かれている人物像も異なります。そのうえで台本を読んだとき、まず朝日先生に抱いた印象は「とても芯の強い方だな」ということでした。

彼女だって、もちろん落ち込むこともあるのですが、それすら前向きなパワーに変えられる人で、「始めてみなくちゃ始まらない。レッツ・ビギンよ!」と、どこか楽観的でマイペースに見えながらも、依頼者に寄り添える優しさや、困った人を放っておけない面倒見の良さ、最後まで一緒に戦おうとする粘り強さがある。そういった人間味溢れる部分が魅力的でもあり、彼女の強さに繋がっているのかなと思ったので、そこを意識して演じさせていただきました。

綾瀬はるかさん。

――そのほか、台本を読んだときに感じられたことはありますか?

「本当にこんなことがあったの?」と驚く場面が何度もありました。「やめてください」という一言を発するのにも、当時はどれほどの勇気が必要だったのだろうかと。そこから、今の私たちにとってはごく普通のことだったりするけれど、この先、何十年後かに「なぜあの時代の人たちはこんな理不尽なことをされていたんだろう」と思われることもあるのかなと考えたりもして。

裁判を起こして戦うことがどれほど大きな壁だったのだろうかと胸がいっぱいになりました。バブルと呼ばれたあの頃の服やメイクを見ていると、エネルギッシュで勢いがある反面、女性にとっては今以上に生きづらく、多くの葛藤があったはずです。今でこそ「女性は強い」なんて言われたりもしますけれどね(笑)。ただ、男性であっても苦しかったという方はいらっしゃったと思います。

話を聞いてくださいと注意されて(笑)

綾瀬はるかさん。

――物語の核ともいえる、終盤の法廷シーン。原告役の上原恵(ファーストサマーウイカ)への贈りものと、朝日先生の胸を打つセリフに赤いボディコンスーツ姿が印象的でしたが、撮り終えていかがでしたか?

それまでは、きっちりとした控えめな色のスーツを着ていた先生にとっても、最後の口頭弁論のための勝負服になったと思っています。私自身も真っ赤な服を着たことで、新しいパワーをもらえた気がしました。

「自分の子どもや大切な人がこんな目にあったらどうしますか? 想像してみてください」と法廷内の人に問いかけるようにお話をするのですが、この裁判は決して恵(ファーストサマーウイカ)一人が戦っているのではなく、いろんな人の思いを背負って立っているのだということが伝わっていたらうれしいです。

カメラに映っていないところでも、スタッフのみなさんが役に入りやすい空間を作ってくださり、とても一体感がありました。朝から晩まで数日間かけての撮影でしたが、いい緊張感が張りつめた中で、しっかりやりきれたと思います。

綾瀬はるかさん。

――ファーストサマーウイカさんや新人弁護士・藤野栞役の松本穂香さんら、共演者の方との現場での雰囲気はいかがでしたか?

ウイカさんはとても元気な方で、現場のムードメーカーとして、ずっとお話をされていました。松本さんも関西のご出身だったので、おふたりが揃うとすごいテンポのいいトークが繰り広げられるんです。前田監督も関西の方で、3人が話しているのを聞いていると「何かに怒っているのかな?」って思ってしまって「なんか怖いんですけど……」と私が言ったら、「普段からこういう喋り方だよ」と言われてしまいました(笑)。

私は松本さんから何度もツッコまれましたね。何をツッコまれたか忘れちゃったんですけど(笑)。空き時間には「あのテレビ見た!」とか、他愛もない話をずっと喋っていて、前田監督から「ちょっと話を聞いてください」と注意されたときも。

©2026「ファーストボイス」製作委員会

――今回、弁護士役を演じられたことで、初めて知ったことや印象に残っていることはありますか?

まず思ったことは、判決が下るまでの期間がとても長いということです。この長期戦を乗り切る粘り強さが必要だということを感じました。その間、弁護士さん自身もそうですが、依頼者さんの心の揺れなどもしっかりケアしなければいけない大変さもありますし、本作で言えば女性支援団体のみなさんとの関係性を円滑に進めることや、駆け引きも重要になってきます。

裁判を起こしたのは恵だけれど、支援団体の方から「この裁判は貴女⼀⼈のものじゃない」「私達は色んなモノを犠牲にして支援してきたのよ!」というセリフが出てきて、とてもリアルだなと感じました。現場には弁護士の先生がいらっしゃったのでいろいろお聞きしたのですが、印象的だったのが「裁判は心理戦というか、戦う中であえて“演じている”こともある」ということ。改めて凄いお仕事だなと思いました。

自分の中に出てきた違和感は否定しない

綾瀬はるかさん。

――本作の着想になった、かつて「ハラスメント裁判」で戦った女性たち、そして、この作品をご覧になる女性たちにメッセージをお願いします。

今のわたしたちには想像できないくらい、まずはハラスメント裁判を起こすこと自体が大変だったと思います。“100%負ける”と言われても、それでも同じ思いの人が一丸となって踏み出してくださったことでその後の状況が変わっていったと思うので、とにかく有難いですし、感謝しています。「その気持ちを大事にしながら、朝日先生を演じさせていただきました」とお伝えしたいです。

本作を通して、自分のなかに出てきた違和感は否定せずに声をあげること、そして自分を信じることが大事なのかなと感じました。登場人物たちが「この裁判は未来に繋がる」と信じて、どんなに不利な状況になっても諦めずに戦い続ける姿に、きっと勇気をもらえると思います。

綾瀬はるか(あやせ・はるか)

1985年、広島県出身。是枝裕和監督の『海街diary』(2015年)で、第28回日刊スポーツ映画大賞主演女優賞、第70回毎日映画コンクール女優主演賞、第37回ヨコハマ映画祭主演女優賞を受賞。近年は『今夜、ロマンス劇場で』(2018年)、『はい、泳げません』(2022年)、『レジェンド&バタフライ』(2023年)、『リボルバー・リリー』(2023年)、『ルート29』(2024年)などで主演を務める。『レジェンド&バタフライ』と『リボルバー・リリー』で第48回報知映画賞主演女優賞を受賞。2026年は本作のほか、『人はなぜラブレターを書くのか』『箱の中の羊』という3本の主演作が公開された。

衣装クレジット

ニット 456,500円、スカート 1,705,000円(全て予定価格)
プラダ/プラダ クライアントサービス

文=くれい響 写真=鈴木七絵 ヘア=ASASHI(ota office) メイク= ASAMI TAGUCHI (home agency) スタイリング=中澤咲希

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