1. トップ
  2. エピソード
  3. 彼女の分までまとめて払うと、笑みが消える→その理由は財布の奥の「返す分」の封筒にあった

彼女の分までまとめて払うと、笑みが消える→その理由は財布の奥の「返す分」の封筒にあった

  • 2026.10.2
ハウコレ

拾い上げた封筒の表には、彼女の字で「返す分」とありました。裏には、俺が会計を断った日の日付が並んでいました。

レジで彼女の分までまとめて払うと、彼女の口元から笑みが消えました。付き合って1年、デートのたびに繰り返してきた光景です。俺にはその理由が、わからないままでした。

会計はいつも俺がまとめて

付き合って1年になる彼女は事務の仕事をしていて、俺より給料が少ないと本人から聞いていました。だから会計は、俺が先に済ませるのが習慣になっていました。彼女が財布を出しながら「私も半分出すよ」と言うたび、俺は「いいよ、俺が出したいだけだから」と返してきました。2か月ほど前、彼女が「この前の分」と言って千円札を差し出したこともありましたが、俺は「そんなの気にしなくていいよ」と押し返しました。

ところが、レジから席へ戻るたび、彼女の返事は「ありがとう」だけで、そのあとの会話がどこか短くなるのです。

「機嫌悪い?」と聞いても、「別に」と首を振るだけでした。俺は、お金のやり取りをさせること自体が彼女を気まずくさせているのだと考え、次からは彼女が財布を出す前に会計を済ませるようになりました。そのたびに、彼女の口数はまた減っていきました。

水族館の帰り、テーブルに落ちた封筒

その日は水族館へ行き、帰りに駅前のカフェへ寄りました。会計は例によって俺が済ませ、窓際の席に戻ると、彼女は財布を開けてポイントカードを探していました。カード入れの奥から、折りたたまれた白い小さな封筒が滑り落ち、テーブルの上で俺のほうへ開きました。

拾い上げた表には、彼女の字で「返す分」と書いてありました。中には千円札が何枚か入っていて、封筒の裏にはここ2か月ほどの日付と金額が並んでいます。俺がまとめて払った日の日付でした。

「これ、なに」

彼女は封筒に手を伸ばしかけて、途中でやめました。

「あなたが払ってくれた私の分。返そうとしても、受け取ってくれないから」

俺は封筒を裏返し、並んだ日付と金額を見ました。

断ったのは、数回ではなかった

「別に返してほしくて出してたわけじゃないよ」

彼女はカップの取っ手を持ったまま、こう続けました。

「わかってる。でも、してもらう側でずっといるのは嫌だったの」

「でも、俺は負担させたくなかっただけで」

「それはわかってる。嫌だったのは、払ってもらうことじゃなくて、私が出すって言っても決めるのがいつもそっちだったこと」

俺はもう一度、封筒の裏を見ました。日付の列を上から指でたどると、途中で数えるのをやめて、また最初に戻りました。

「これ、ずっと取ってたの?」

「うん」

「毎回?」

「出すって言っても、受け取ってくれなかったから」

封筒の裏には、ここ2か月ほどのデートの日付が並んでいました。俺には数回のつもりでも、彼女はそのたびに、自分が出すと言った分を封筒へ入れていたのです。「私も半分出すよ」は遠慮ではなく、その日の会計を一緒に決めたいという申し出で、それを却下し続けていたのは俺でした。

「ごめん。次から、出すって言われたら勝手に断らない」

「毎回半分じゃなくてもいい。ちゃんと出せるようにしてほしいだけ」

俺はうなずいて、封筒を彼女の手に戻しました。

そして...

次のデートの会計前、彼女は封筒から千円札を抜いて、俺に差し出しました。「この前の分」と言われて押し返した日と、同じ手つきでした。今度は受け取りました。彼女が財布を開けるまで待つことは、今も続けています。

(20代男性・営業職)

本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。

(ハウコレ編集部)

元記事で読む
の記事をもっとみる

注目コンテンツ