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礼文島「桃岩荘ユースホステル」ってどんな宿?北海道の最北端の離島にあるライダー歓迎の宿|忘れられない宿の思い出

  • 2026.10.1

北海道の最北端・礼文島で足を踏み入れた「桃岩荘ユースホステル」。合唱、禁酒、爆音の早朝……狂気と情熱の渦。編集長・盛が語る一生モノの旅の記憶

二度と行かない礼文島・桃岩荘と、僕の誇らしいトラウマモリ(編集部)

僕は断言する。もう二度と、桃岩荘には行かない。絶対にだ。

初夏の風が心地いい、6月か7月のことだった。取材のために訪れた北海道の最北端、礼文島。離島というだけで、旅人の心は無条件に跳ね上がる。青く澄んだ空と、果てしない日本海。せっかくならこの島でしかできない、特別な体験を取材に盛り込みたい。そう思って軽い気持ちで取材を申し込み、足を踏み入れたのが始まりだった。

「桃岩トンネル」を抜け、暗闇から抜け出た先に広がっていたのは、切り立った崖と荒々しい海岸線、そしてその隙間にポツンと佇む木造の建物だった。潮風が心地よく吹き抜ける絶好の立地。海沿いにぽつんと佇むその姿は実に絵になり、僕のテンションは最高潮に達していた。「ここに来てよかった。最高じゃねぇか……!」……そう確信していたのは、ほんの数分前のことだ。

宿の重い扉を開けた瞬間、世界は一変した。飛び込んできたのは、狂気すら感じるほどの純度を持った、皆の満面の笑顔と地鳴りのような出迎え。雰囲気に呑まれ、圧倒されている間もなく、矢継ぎ早に「自己紹介タイム」が始まり、気づけば「合唱」の渦へと巻き込まれていく。

この宿には、独自の、そして絶対的なルール(という名の儀式)が存在していた。ひとつ、またひとつとカリキュラムが進んでいくたび、冷や汗が背中を伝う。僕の頭の中で、警報が鳴り響いていた。「どういうことだよコレは」という同行スタッフの目(あ、完全に間違えた。ここは、僕の来る場所じゃない……)。

少し落ち着いて周りを見渡すと、全国から集まった旅人やヘルパーたちの姿があった。脱サラして放浪している人、自分探しの途中の学生、毎年のようにここへ帰ってくるリピーター。熱狂の合間にポツリポツリと語られる彼らの背景を聞いていると、「ああ、誰もが何かを抱えて、この最北の地にたどり着いたんだな」と、胸の奥が少し温かくなるのを感じた。旅先ならではの、じんわりとした旅情。彼らの素朴な優しさに触れ、僕の頑なだった心も少しずつ解きほぐされ――。

……ていくかと思いきや、この独特な世界観の中で、僕の心を満たしたのはただひとつ。「帰りてぇ……」という、切実で切ない切望だった。僕はお酒が好きなので、一日の終わりに近所の居酒屋に入ってみたり、部屋でダラダラ、夜の長さに浸る時間が何よりの癒やしである。しかし、ここはアルコール禁止。知らなかった。さっきコンビニで買ってきた缶ビールが無慈悲に常温に戻っていく。え、シラフの状態でこの熱狂の渦に耐え抜けってこと?相変わらず同行者の「お前さぁ……」という目線が痛い(宿に入ってから会話ほぼ無し)。おまけに就寝時間は信じられないほど早い。

そして翌朝は、早朝に爆音で流れる曲とともに叩き起こされた。酒も飲めず、己のペースも乱され、気分は最悪だった。もう逆に笑えてきた。

出発の時。

ヘルパーや旅人たちが、これ以上ない純度100%の笑顔で手を振り、「いってらっしゃーい!」「さようならー!」と絶叫。その恐ろしいほどの熱量と声を背中にバシバシと受けながら、僕たちは文字通り、逃げるようにしてその場所を後にした。頭に浮かんでいたのは映画『千と千尋の神隠し』のラストシーンだ。トンネルを抜けて元の世界に戻るまで、振り返ってはいけない。息を止めて走らなければ、あの世界に引き戻されてしまう。そんな恐怖すら感じながら、僕は必死で桃岩トンネルをくぐり抜けた。

何だったんだ、あれは。一体、僕はどこへ迷い込んでいたのだろうか。客観的に言えば、あれは僕の人生において「ひどい思い出」の部類に入る。居心地は悪く、居場所はなく、ただただ苦痛で、早く帰りたかった。

けれど不思議なことに、今でも酒場などで旅の話になると、僕は真っ先にこの桃岩荘の話をしてしまうのだ。それも、どこか誇らしげな顔をしながら。

合わないものは、合わない。だから、僕は桃岩荘には二度と行かない。けれど僕はきっと、これからもずっと、あの狂気と情熱に満ちた北の最果ての宿の話を、愛おしそうに語り続けていくのだと思う。

桃岩荘ユースホステル(ももいわそうゆーすほすてる)
北海道礼文郡礼文町香深
TEL0163-86-1421

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