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脳の老け方は「腸内細菌」と結びついていた

  • 2026.10.1
脳の老け方は「腸内細菌」と結びついていた
脳の老け方は「腸内細菌」と結びついていた / ※画像はイメージです。Credit: Generated by Codex (gpt-image), ナゾロジー編集部

同窓会で「全然変わらないね」と言われる人もいれば、言われずにそっとグラスを置く人もいます。

見た目の若さに差があるように、脳の見積もった年齢も、その人の実際の年齢とずれることがあります。

これまでの研究では、実年齢より老けて見える脳は記憶や考える力、気分の不調と結びつくと報告されてきましたが、調べられてきたのは主に高齢者や脳の病気がある人でした。

では、まだ若い世代や働き盛りの世代で、脳の老け具合が人によって違うのは何と関係しているのでしょうか。

UCLAヘルス(米カリフォルニア大学ロサンゼルス校の医療機関)の研究チームは、およそ1500人の脳を調べたうえで、意外な場所にまで手がかりを探しに行きました。

その場所とは、おなかの中の「腸」です。

研究内容の詳細は2026年9月9日に『EBioMedicine』にて発表されました。

目次

  • 脳の「年齢」は画像から見積もれる
  • 脳の老け具合は「腸」とつながっていたのか?

脳の「年齢」は画像から見積もれる

脳の「年齢」は画像から見積もれる
脳の「年齢」は画像から見積もれる / ※画像はイメージです。Credit: Generated by Codex (gpt-image), ナゾロジー編集部

脳の老化というと、脳の組織が失われていく姿を思い浮かべる人が多いかもしれません。

しかし今回の研究チームが注目したのは、失われた組織ではなく、脳のあちこちの領域がどう連絡を取り合っているかという「つながり方」でした。

対象は、3つのグループに分かれた若い世代から中年世代の大人、合わせておよそ1500人です。

参加者は、おおむね健康な人たちでした。

チームは、安静にしているときの脳の活動を脳スキャン(fMRI)で撮影しました。

そして脳を100の領域に分け、それぞれがどのくらい連動して動いているかを計算しました。

このつながり方のパターンをもとに、コンピューターのモデルが一人ひとりの「脳の年齢」を見積もったのです。

さらに、見積もった脳の年齢から実際の年齢を引いた差を「脳老化指数(BAI)」と名づけました。

この数値が大きいほど、脳が実年齢より老けて見えるということになります。

チームはこの指数と、記憶や集中力のテストの成績、気分の落ち込みの程度との関係を調べました。

加えて、1つのグループ(344人)では便を集め、腸内細菌の顔ぶれや、便に含まれる物質も詳しく分析しました。

若い世代や働き盛りの世代で、脳の老け具合は何と結びついていたのでしょうか。

脳の老け具合は「腸」とつながっていたのか?

脳の老け具合は「腸」とつながっていたのか?
脳の老け具合は「腸」とつながっていたのか? / ※画像はイメージです。Credit: Generated by Codex (gpt-image), ナゾロジー編集部

まず、画像から見積もった脳の年齢は、3つのグループすべてで実際の年齢とある程度そろって動いていました。

2つの数字がどれだけ一緒に動くかを表す相関の値は、0.50〜0.59でした。

そのうえで、脳老化指数が高い人、つまり脳が実年齢より老けて見える人には、グループをまたいで共通する特徴がありました。

以前ナゾロジーではこういう記事も紹介しています(「自分は実年齢よりも若い」と思っている人は「脳年齢」も若いと判明)

ひとつは、記憶や自分をふり返ることに関わる脳の領域で、つながり方に一貫したパターンが見られたことです。

もうひとつは、テストの成績が低い傾向があり、とくにワーキングメモリ(作業記憶)や、集中し段取りを整える力(実行機能)で差が出ていたことです。

さらに、指数が高い人ほど、うつに関わる症状を多く報告していました。

ではいよいよ、腸との関係です。

便を分析したグループでは、脳老化指数と結びつく腸内細菌の種類や、便の中の物質が見つかりました。

以前ナゾロジーではこういう記事も紹介しています(腸内細菌叢の善玉菌も老化を促進する場合がある「不都合な真実」)

その中には、セラミドと呼ばれる脂肪の分子や、24-ヒドロキシコレステロールというコレステロールに関わる物質、ジカルボン酸と呼ばれる物質などが含まれていました。

反対に、エステトロールというホルモンは、指数が高い人ほど少ないという逆向きの関係にありました。

これらの物質に関わる体の仕組みをたどると、免疫の働き、血管の働き、脳の細胞どうしのやりとり、細胞のエネルギーづくりといった経路が関係している可能性が示されました。

論文のシニア著者であるアルパナ・チャーチ博士は、「脳の老化は年を取ってから突然始まるわけではなく、その生物学的なサインは数十年も前から捉えられるかもしれない」と話しています。

博士はまた、腸の状態に働きかけることで脳の健やかな老い方を支えられるかどうかを、今後探っていく道が開けたとも述べています。

ただし、今回の研究はある一時点のデータを比べたもので、腸内細菌が脳を老けさせると確かめたわけではありません。

腸の分析も1つのグループ(344人)だけで行われており、分かったのはあくまで「結びつき」です。

それでも、若い世代や働き盛りの世代で、脳の老け具合と腸の中身に関連が見えたことは、脳の老化を考えるうえで新しい手がかりになりそうです。

脳の年齢は頭の中だけで決まるものではなく、おなかの中ともどこかでつながっているのかもしれません。

「もっと頭を使え」と言われたら、これからは「おなかも使っています」と言い返してみてもいいかもしれません。

参考文献

Scientists Find Signs of Brain Aging Decades Before Cognitive Symptoms (SciTechDaily)
https://scitechdaily.com/scientists-find-signs-of-brain-aging-decades-before-cognitive-symptoms/

元論文

Brain-gut crosstalk associated with brain ageing in young and mid-life adults: a multicohort cross-sectional study
https://doi.org/10.1016/j.ebiom.2026.106468

ライター

山下 浩介: むずかしい研究を、なるべく分かりやすく伝えたい。専門の言葉はふだんの言葉に置きかえて、身近な例で例える。それで「わかった」「楽しかった」と言ってもらえたら嬉しいです。 好きなのは、通学路や台所や日常の中にある科学。眠っているあいだに記憶が整理される話や、虫の鳴き方に意味がある話のように、読み終わったあとに誰かへ話したくなる研究を探しています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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