1. トップ
  2. エピソード
  3. 「えっ、2本も?」散歩のたびにじゃれつく隣の犬。だが、僕が困っていたけど伝えにくかったこととは

「えっ、2本も?」散歩のたびにじゃれつく隣の犬。だが、僕が困っていたけど伝えにくかったこととは

  • 2026.10.1

散歩に出るたび、気になっていた隣の犬

仕事を退いてから、朝の散歩が毎日の楽しみになりました。

一戸建ての自宅を出て、川沿いの道をひと回りして帰ってくるのが、いつものコースです。

ところが半年ほど前から、少し困ったことがありました。隣の家で飼われている、茶色い犬です。

僕が家の前を通ると、犬は門のすき間から器用に抜け出し、しっぽを振りながら寄ってきます。

そして、じゃれつくようにズボンのすそをくわえて引っぱるのです。

痛いわけではありません。犬にも悪気はなさそうでした。

それでも布には少しずつ傷がつき、とうとう穴のあいたズボンが2本になってしまいました。

ある晩、ほつれたすそを妻に見せると、妻は驚いた顔をしました。

「え、これで2本目なの?」

「そうなんだ。散歩に出ると、また来るんだよ」

「それなら、お隣に言ったほうがいいんじゃない?」

「でも、あの犬もかわいいしなあ。奥さんもいつも感じのいい人だし…」

僕がそう言うと、妻は「困ってるなら、ちゃんと伝えたほうがいいよ」と苦笑しました。

それからは玄関を出るたびに隣の庭を気にして、犬の姿が見えないときを選ぶようになりました。

好きだった朝の散歩なのに、いつの間にか隣の様子をうかがってから出かけるのが習慣になっていました。

「これで2本目なんです」と伝えると

ある朝、いつもより時間をずらして家を出ました。ところが門を出たところで、犬がこちらに気づきました。

しっぽを振りながら駆けてきて、いつものように僕のズボンのすそをくわえます。

そのとき、隣の家の門の内側に飼い主の奥さんがいました。じょうろを手にしたまま、こちらを見ています。

「あら、またご挨拶に行ってるの」

奥さんは笑っていました。僕は少し迷いましたが、このまま避け続けるのも違うと思い、犬からすそを離しながら声をかけました。

「実は、ズボンのすそに穴があいてしまって。これで2本目なんです」

「えっ、2本も?」

奥さんの表情がすぐに変わりました。

「すみません。じゃれてるだけだと思ってました。そんなことになってたなんて…」

「僕も、もっと早く言えばよかったんです。かわいいから、なかなか言いづらくて」

奥さんは犬を抱き上げ、何度も頭を下げました。犬は何が起きたのか分からない様子で、その腕の中から僕を見ています。

向かいの家の前では、新聞を取りに出ていた年配の男性がこちらを見ていました。僕も少し気まずくなり、「本当に、気をつけてもらえれば大丈夫ですから」と伝えて、その場を離れました。

門のすき間がふさがれた週末

その週末、隣の家の門を見ると、犬が抜け出していたすき間に白い板がしっかり取り付けられていました。

さらに日曜の夕方、奥さんが紙袋を持って家を訪ねてきました。

「この前は本当にすみませんでした。よかったら、これ使ってください」

中に入っていたのは、新しいズボンでした。

「そこまでしていただかなくても……」

そう言いながらも、せっかく用意してくれたものなので、ありがたく受け取ることにしました。

奥さんはようやく安心したように笑いました。玄関の奥にいた妻も、「ちゃんと話してよかったね」と小さくうなずいていました。

今では隣の家の前を通っても、犬は庭の中からしっぽを振っているだけです。僕ももう時間を気にする必要はありません。

言いづらいことほど、我慢して避け続けるより、穏やかに事情を伝えたほうがいいこともあるのだと感じた出来事でした。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた60代以上男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

元記事で読む
の記事をもっとみる

注目コンテンツ