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「お薬飲めていますか?」「全部飲んでます」70代男性が嘘をついた理由に…「胸が熱くなった」

  • 2026.10.23
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

お薬手帳が新しくなったタイミングで来局された70代の男性。

新しい手帳の表紙には、これまでとはまったく違う筆跡の文字が書かれていました。「薬は全部飲んでます」と即答したのに、残りの薬の話になると口をつぐんだ男性。

その沈黙の理由は、一体何だったのか。家族が薬を管理していた場合の引き継ぎのコツもご紹介します。

新しいお薬手帳に並んでいた、見慣れない丁寧な文字

「手帳がいっぱいになったんで、新しいのにしました」

そう言って70代の男性が差し出したお薬手帳は、まだ折り目もない新品でした。

表紙の名前の欄には、一画ずつ確かめるように書かれた、少し震えた文字が並んでいました。

男性は何年も通ってくださっている方で、これまでの手帳には見覚えがありました。流れるような細い字で、日付や「朝食後 忘れずに」といったメモが毎回書き込まれていたのです。

新しい手帳の文字は、それとはまったく違っていました。

「お薬はきちんと飲めていますか」と伺うと、男性は「全部飲んでます」とすぐに答えました。ところが、「お手元に残っているお薬はありますか」と続けた途端、返事が止まりました。

視線が手帳の上を行ったり来たりし、数秒後に「……たぶん、ないと思います」と小さな声が返ってきました。

手帳を書いていたのは誰だったのか

「前の手帳は、奥さまが書かれていたんですか」と尋ねると、男性は少し驚いた顔をしてから、ゆっくりうなずきました。

「家内が入院してから、薬のことは何も分からなくて」

奥さまは3週間ほど前に転倒して骨折し、入院中とのことでした。これまでは奥さまが、日付つきのお薬カレンダーに毎日の分をセットしてくれていたそうです。

「入院してる家内に電話で聞いたら、心配させるでしょう。だから、分かる薬だけ飲んでました」

「全部飲んでます」という言葉は、奥さまに心配をかけたくない思いから出たものでした。

次の来局時、男性は自宅にあったお薬を紙袋に入れて持ってきてくださいました。中には、開封されていない目薬が3本と、ほぼ3週間分の錠剤が残っていました。

男性の了承を得て処方医に状況を伝えたところ、一包化に切り替えることになりました。

新しい手帳の、少し震えた丁寧な文字。それは、ご夫婦が二人三脚で続けてきた服薬を、一人で引き継ごうとした跡だったのだと気づき、胸が熱くなりました。

家族が薬を管理していた場合の引き継ぎのコツ

家族が薬を管理している場合、引き継ぎにおいて知っておきたいコツがあります。

お薬手帳の切り替え時期は“管理の見直し”のタイミング

手帳を新しくするときは、誰が・どのように薬を管理しているかを見直すよい機会です。

管理していたご家族の入院など、生活の変化があったときは、ぜひ薬剤師に教えてください。一包化やお薬カレンダーの活用など、ご本人に合った方法を一緒に考えることができます。

残薬は袋ごと薬局に持参して相談してよい

飲み残しの薬は、袋にまとめてそのまま薬局へ持参して構いません。数を確認したうえで、必要に応じて医師と相談し、処方の調整につなげることができます。

※登場人物のプライバシー保護のため、内容の一部を変更しています。


ライター:下田篤男

京都大学薬学部総合薬学科を卒業後、調剤薬局やドラッグストアグループで薬剤師として勤務してきました。総合病院の門前店舗では管理薬剤師を務め、たくさんの患者さんと向き合う日々の中で、「薬を渡す」だけではない、人と人との関わりの大切さを実感しています。現在は薬剤師として現場に立ちながら、医療記事の執筆・編集や薬局経営コンサルタントとしても活動中。読者の皆さまに、薬局がもっと身近で頼れる場所になるような情報をお届けしていきたいと思っています。


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