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70代男性「なんとなく具合が悪い」救急要請…駆けつけた救急隊が『家の中の様子』に違和感を覚えたワケ

  • 2026.10.23
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

こんにちは。ライターのとしです。

救急現場では、傷病者本人の話だけでは分からないことがあります。

今回は、「なんとなく具合が悪い」と自ら救急要請した70代男性の自宅で、本人の説明と現場に残された痕跡が噛み合わなかった事案をご紹介します。

「なんとなく具合が悪い」

70代男性本人から、「なんとなく具合が悪い」と救急要請が入りました。

自宅へ到着すると、男性は受け答えができる状態で、強い痛みなどを訴えている様子もありませんでした。

ただ、室内を見渡すと、物が少し散乱しているような形跡がありました。

男性に症状を尋ねても、「なんとなく具合が悪い」という曖昧な訴えが中心でした。

そこで、最近転倒したことはないか、途中で意識を失ったことはないかなどを確認しました。

しかし男性は、「転んでいません」「意識を失ったこともありません」と答えました。

本人の話だけを聞けば、転倒や意識消失を疑う材料はありません。

それでも、現場の様子と本人の話がどこか噛み合わないように感じました。

体に残っていた痕跡

男性の全身を観察していくと、肘や膝に打撲したような痕が確認できました。

さらに頭部にも、どこかにぶつけたと考えられる形跡がありました。

本人は転倒を否定しています。

一方で、室内には物が散乱したような跡があり、体にも複数の打撲痕が残っています。

「本当に転んでいないのだろうか」

そう考え、もう一度状況を整理しました。

救急現場では、本人が出来事を覚えていない可能性も考えなければなりません。

何らかの原因で一時的に意識を失い、その際に転倒していた可能性もあります。

また、脳血管障害などによって体調に変化が起こり、その結果として転倒した可能性も否定できません。

反対に、先に転倒して頭部を打ち、その後に体調変化が出た可能性もあります。

現場の段階では、どれが先に起きたのかを断定することはできませんでした。

だからこそ、「なんとなく具合が悪い」という本人の訴えだけで終わらせず、複数の可能性を考えながら搬送する必要があると判断しました。

家族にも連絡して搬送へ

男性には、体に打撲痕があることや、本人が覚えていない出来事が起きていた可能性もあるため、医療機関で詳しく確認した方がよいことを説明しました。

家族にも連絡を取り、現在の状況を伝えたうえで、搬送先の医療機関へ来てもらえるようお願いしました。

男性にも搬送の必要性を理解してもらい、受け入れ可能な医療機関へ向かいました。

搬送中に大きな容体変化はありませんでした。

到着後は、本人が「転んでいない」と話していたこと、室内に物が少し散乱していたこと、肘や膝、頭部に打撲を疑う痕跡があったことなどを医師へ申し送りました。

医療機関では、脳血管障害の可能性も含めて診察が進められたと聞きました。

現場そのものも大切な情報になる

救急現場では、傷病者本人の話はもちろん重要です。

ただ、本人の記憶が曖昧だったり、意識を失っていた時間があったりすれば、起きた出来事そのものを覚えていないこともあります。

特に一人でいる時に体調を崩した場合、何が起きたのかを見ていた人がいないこともあります。

そのような時は、体に残っている傷や、室内の状況なども大切な情報になります。

今回も、「転んでいない」という本人の言葉と、肘や膝、頭部に残る痕跡が噛み合わないことが、より慎重に状態を確認するきっかけになりました。

本人の訴えだけで判断せず、目の前に残された情報を一つずつ拾いながら考えることの大切さを改めて感じた事案でした。


ライター:とし

元救急隊員。
消防で17年、主に救急隊として活動し救急救命士資格を取得。
現場経験をもとに、救急の分かりにくい部分を一般向けに噛み砕いて発信しています。


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