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中古車買取の客「190万円で…」査定額は160万だったのに…何度も急かす客が明かした“切実な事情”

  • 2026.10.22
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出典:PIXTA(※画像はイメージです)

中古車の買取を担当していたとき、カスタムパーツが多く装着されたスポーツカーを査定しました。私は査定の際、乗り換える車についても必ず伺っていました。

「次は、どのような車をお考えですか?」

あるとき来店されたお客様・Aさんにも尋ねましたが、そのときはお話を伺えませんでした。詳しい事情は分からないまま、車の査定を進めました。

最初にお伝えした査定額は、160万円でした。しかし、Aさんは、金額を再検討してほしいと希望されました。

「190万円で買い取ってもらえませんか?気に入っている車なので、できるだけ納得できる金額で売りたいんです」

愛車への強い思い入れを感じさせる言葉でしたが、Aさんが金額の再検討を求めた真意は、車への愛着だけではありませんでした。

「売ったら、お金はいつ入りますか」査定の再検討と続く確認

車両の状態や店頭販売の見込みを改めて精査する必要があるため、私は慎重に言葉を選んでAさんにお答えしました。

「もう一度、評価を見直してみます。ただ、今の段階では、その金額をお約束できません」

そうお答えすると、「売ったら、お金はいつ入りますか」と、入金時期について尋ねられました。私は売却後の入金の流れをご説明し、査定額については再検討し、結果が出次第、こちらから連絡するとお伝えしました。

そして確認を進めている間に、Aさんから「金額の件は、どうなりましたか?」と電話が入ります。まだ確認しているところであること、結果が出たらすぐにご連絡することを伝えました。

さらに別の日には、「振り込みは、いつになりますか」など、入金時期について改めて尋ねられることもありました。

金額も入金時期も、車を売る方にとって大事なことです。ですが、まだ結果が出ておらず、明確な金額をお答えできません。早くお返事をしたいという焦りと、確認前の金額を約束できないもどかしさがありました。

こちらが「確認中です」とお伝えしている間も、Aさんには進めたい予定があるのかもしれません。何か急ぐ事情があるのだろうか、と気になっていました。

査定額を見直したあとに聞いた事情

装着パーツは、最初の査定でも確認していました。再検討では、装着内容と状態を改めて確かめ、その仕様のまま店頭でいくらで販売できるかを見直しました。

車の状態と装着内容を踏まえた販売見込みを、買取額にどこまで反映できるか。その点をもう一度検討し、提示できる金額を確認しました。その結果、初回より20万円高い、180万円をご提示できることになりました。

「今回は、180万円のご提示になります」

「190万円までは、難しいでしょうか…」

販売見込みを見直した内容と提示額の根拠をご説明すると、Aさんが、査定時には伺えなかった乗り換えの事情を話してくださったのです。

「母と一緒に出かけられる車にしたくて…」

Aさんのお母様が車いすを使うようになったそうです。大切に乗ってきた2ドアのスポーツカーには、お母様の車いすを積めず、一緒に外出するのが難しくなっていました。

「この車、気に入っているんです。できれば乗っていたいんですけど、母と出かけることを考えると、買い替えたほうがいいと思って」

査定のときにも聞いた「気に入っている」という言葉が、ここでも出てきました。Aさんは、車への愛着を持ったまま、お母様のために買い替えを考えていたのです。

「売ったお金を、次の車の購入に充てたいんです」

続けて、Aさんは金額と入金時期を気にしていた理由も話してくださいました。

「少しでも高く売れたら、その分、次の車を選びやすくなるので。お金が入る時期も分かれば、買い替えの予定を立てられますし」

査定のときには分からなかった、乗り換えの目的。それを聞いて、金額や入金時期を繰り返し確認されていた理由が、ようやく分かりました。

早くお母様と出かけたいという気持ちもあったそうです。

「何度も連絡してしまって、すみません」

Aさんはそう言って、頭を下げられました。

売却を決めたあと、最後に話してくれたこと

「180万円で、次の車の予算を考えてみます」

Aさんは提示された金額を前提に、買い替え候補と予算を見直しました。希望額との差は10万円あります。その金額で購入を進められるかを考えたうえで、売却するというお返事をいただきました。

「180万円でお願いします」

私たちは、車の引き渡しと、その後の入金の段取りを改めて確認。手続きを終えたAさんの表情には、新しい車でお母様と出かける日を心待ちにしている様子が浮かんでおり、その晴れやかな気持ちが私にもまっすぐ伝わってきました。

そして別れ際、嬉しそうに話してくださったのが、この言葉でした。

「次は、母に行き先を決めてもらいます」


ライター:三枝 雄太
自動車アフターマーケットや自動車流通の分野で長年、販売・買取、店舗運営、接客、スタッフ育成などに携わる。カー用品や車のカスタムにも幅広く関わり、現場で培った経験をもとに、クルマに詳しくない人にも伝わりやすい言葉で、カーライフや懐かしい車文化を紹介している。


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