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「リズムが合ってないよ」娘のピアノに毎回口を出す上の階の女性。だが、招待状を渡した結果

  • 2026.9.30

エレベーターで繰り返された言葉

娘は小学4年生で、2年前からピアノを習っている。

毎日の練習は夕方5時から30分。娘がピアノの前に座ると、わが家ではいつもの時間が始まる。

上の階には、60代くらいの女性が暮らしている。越してきたころは、エレベーターや駐輪場で顔を合わせると、よく娘に声をかけてくれた。

「ピアノ、頑張ってるね」

「いつも聞こえてるよ」

娘は照れながら頭を下げ、私も「ありがとうございます」と返していた。

ところが、この春ごろから少しずつ言われることが変わってきた。

ある日、エレベーターで一緒になると、女性は娘にこう言った。

「リズムが合ってないよ」

別の日には、

「毎日30分くらいでしょ?もう少し練習したほうがいいんじゃない?」

とも言われた。

責めるような口調ではなかったものの、会うたびに練習について言われるうち、娘はエレベーターで女性に会うと、うつむくことが増えていった。

その晩、帰ってきた夫に話すと、夫は少し眉を寄せた。

「今日も言われたの?」

「うん」

「先生は、今は楽しく続ければいいって言ってたよな」

私もうなずいた。先生からは、今は自分のペースで楽しく弾けばいいと言われている。

ふと見ると、机の上には来月の発表会の招待状が何枚か重ねて置いてあった。

バッグから取り出した一枚の招待状

数日後の夕方、娘と買い物から戻ると、エレベーターにはあの女性が乗っていた。

扉が閉まると、女性は娘を見て口を開いた。

「昨日も弾いてたね。やっぱり、もう少しリズムを意識したほうがいいわよ」

娘が黙ったまま私の袖をつかんだ。

私は少し迷ってから、バッグに入れていた発表会の招待状を一枚取り出した。

「いつも聞いてくださって、ありがとうございます」

そう言ってから、招待状を差し出した。

「先生からは、今は自分のペースで楽しく弾けばいいと言われているんです。よかったら、発表会で聞いてやってください」

女性は一瞬黙り、招待状へ目を落とした。

「あら……発表会があるのね」

そして、もう一度招待状を見てから、両手で受け取った。

「ありがとう」

それだけ言うと、女性は自分の階で降りていった。

いちばん後ろの席にいた人

発表会の日、客席のいちばん後ろに見覚えのある姿があった。

上の階の女性だった。

娘が練習してきた曲を最後まで弾き終えると、客席から大きな拍手が起こった。私も手をたたきながら後ろを見ると、女性も笑顔で拍手をしていた。

演奏を終えた娘も、客席にいた女性に気づいたようだった。

「ママ、上の人、来てくれてたね」

「うん。ちゃんと聞いてくれてたね」

それ以来、女性から練習について細かく言われることはなくなった。

エレベーターで会ったある日、女性は娘に短く声をかけた。

「発表会、よかったよ」

娘は少し驚いたあと、顔を上げた。

「ありがとうございます」

今日も夕方5時になると、娘はいつものようにピアノの前へ座る。30分の練習は、今も変わらず続いている。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた40代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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