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「何とか免許が更新できそうで」車いすで高齢者講習に臨んだ男性…指導員の頭をよぎった“懸念”

  • 2026.10.31
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

「とにかく、免許が更新できればそれで…」

講習を終えた受講者の方から、ほっとした表情でこのようなひと言をいただくことがあります。高齢者講習は文字どおり講習ですが、受講する方にとってはドキドキするもの。受講者一人ひとりに、免許を更新する理由とドラマがあるのです。

今回はそのエピソードから、これからの運転と移動について考えてみましょう。

2人がかりで乗り降りをサポート

ある日の受講者は、車いすを利用しているCさん。右足が不自由で自力での乗り降りが難しいため、実車指導(教習所のコースを実際に走る指導)ではスタッフ2人で移乗を手伝いました。

車いすを運転席の横に付け、1人が体を支え、もう1人が足元を補助する形です。ゆっくりとシートへ移ってもらい、エンジンを始動して走行開始。私の在籍していた教習所には、幸い左足でアクセルペダルを踏める仕様の教習車があります。それを使用してCさんのペースに合わせて進め、講習は無事に修了できました。

車いすに戻ったCさんは、笑顔でこう話してくれました。

「何とか免許が更新できそうでよかったです」

その表情に、私もうれしくなったものです。ただ、普段の乗り降りや、いざというときの対応はどうしているのか?ご家族の思いは?そんな点も頭をよぎりました。

車いすでも運転を続けられる道がある

まず知っておきたいのは、車いすを利用していることだけで、運転を諦める必要はないということです。足が不自由でも、年齢に関係なく運転を続けている方は大勢います。新たに免許の取得に挑戦する方も、決して珍しくありません。

車いすを利用している方は、どのように運転するのでしょうか?答えは、体の不自由な部分を補う補助装置付きの車です。
たとえば、アクセルやブレーキを手で操作できる手動運転装置や、片手でハンドルを回しやすくする旋回装置、運転席が回転して乗り降りしやすい車など、福祉車両の種類もさまざまです。

体の変化に伴って補助装置を使う場合は、運転免許センターなどで安全運転相談を受けてください。必要に応じて適性検査を実施し、その結果に応じて運転方法や必要な装置が決まります。免許には「AT車に限る」「左アクセルに限る」などの条件が付き、条件に合わない車は運転できません。

新たに免許を取る場合も、最初に受けるのは安全運転相談です。結果に応じて教習原簿(教習の記録簿)に条件が記載され、条件に合った教習車で教習を進めます。条件に合う教習車がなければ、車両を持ち込む場合もあるでしょう。入校の条件や規定は教習所によって大きく異なるため、入校前に一度相談してみてください。

装置の取り付けは、福祉車両を扱う販売店や専門の業者に相談できます。

加齢による変化は別の視点で考える

体の不自由さとは別に考えたいのが、加齢による変化です。判断の速さや反応のスピード、とっさの対応力は、年齢とともに少しずつ変わっていきます。75歳以上の方は、免許更新の際に認知機能検査も必須になっています。

こうした変化を補う手段の一つが、サポカー(安全運転サポート車)。衝突被害軽減ブレーキやペダル踏み間違い急発進抑制装置などで、運転を支えてくれる車です。ただし、機能には限界があるため、過信は禁物です。

補助装置やサポカーを使っても、操作や確認に不安が残ることもあるかもしれません。そのときは、免許の自主返納も前向きな選択肢の一つです。

返納後も役立つ運転経歴証明書

免許を返納したあとも、申請すれば「運転経歴証明書」を受け取れます。金融機関などで本人確認書類としても使えます。申請は、返納した日から5年以内であれば可能です。

返納の手続きは、運転免許センターや警察署で行えます。路線バスやコミュニティバス、タクシーなど、運転をやめたあとの移動手段も確認しておくと安心でしょう。

「更新できるか」ではなく「安全に運転できるか」

大切なのは、免許の更新そのものを目的にしないことです。ペダルやハンドルの操作、緊急時の対応はもちろん、乗り降りの負担や長時間の運転での疲れ方も見直したいポイントになります。その視点で、今の運転を見つめ直してみてください。

体の状態や暮らし方は人それぞれで、選択肢はたくさんあります。自分に合った移動の方法も、車の運転だけとは限りません。運転を続けるにしても、卒業するにしても、早めに家族で話し合っておくと安心です。

まだ若い方や体に不安のない方も、これを機に「もしものとき、運転をどうするか」を考えてみてはいかがでしょうか?


参考:
安全運転相談(身体等の障害)(愛知県警察)
交通安全:運転継続について(三重県)
運転経歴証明書の申請手続(滋賀県警察)


ライター:ちだてつし
自動車教習所の指導員・技能検定員として、23年間にわたり現場で安全運転の指導・検定を担当。現在はその専門知識と現場での実務経験を活かし、安全運転やドライブテクニックに関するWebライターとして活動中。また、ペーパードライバーや外免切り替えの事業を展開し、運転に自信のないライダーを対象に、実践的なツーリングを通して運転技術を身につける「日本ツーリングサポート協会」を設立・運営。「安全で楽しいカー&バイクライフ」を伝える発信を行っている。日本二輪車普及安全協会の二輪安全運転指導員として活躍中。


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