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「あんなところにあったのか…」指導員が23年で何度も見た、70歳以上の受講者が"止まれ"を素通りする瞬間

  • 2026.10.24
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

私が指導員として勤めていた自動車教習所では、70歳以上の方が免許更新の前に受ける高齢者講習を行っています。指導員として私が何度も目にしてきたのが、「止まれ」の標識がある交差点を止まらずに通過する場面です。

今回は実際のエピソードを交えながら、標識が「見えているのに止まらない」理由と対策をご紹介します。

「止まれ」の標識とは

「止まれ」は、赤い逆三角形に白い文字で書かれた一時停止の標識。この標識がある場所では、停止線の直前(停止線がない場合は交差点の直前)で、車を完全に止めなければなりません。

止まったあとは左右の安全を確かめ、交差する道路を走る車の進行を妨げないことも必要です。一時停止をせずに通過すれば、道路交通法違反にもあたります。

特に気にする様子もなく交差点へ

ある日担当したのは、免許更新に向けて高齢者講習を受けに来た受講者の方です。コースの直線を走り、交差点へ差し掛かると、目の前にははっきりと「止まれ」の標識が見えていました。

ところが、車は停止する気配がありません。そのまま交差点へ進入しそうになり、とっさに補助ブレーキ(教習車の助手席に付いている指導員用のブレーキ)を踏んだのです。

「今の標識、見えましたか?」と尋ねて返ってきたのは、意外な言葉でした。

「え…あぁ、あんなところにあったのか…」

受講者は慌てた様子もなく、きょとんとした表情を浮かべていました。

「止まらない」ケースは少なくない

こうした場面は、高齢者に関する指導の現場では珍しくありません。教習でも講習でも、教習所内で行うイベントでも同じです。
「止まれ」の標識がある交差点を、まったく止まらずに通過してしまうケースは、指導の現場で少なくありません。

もちろん、高齢の方すべてに当てはまる話ではなく、一時停止をしっかり守って慎重に運転される方もたくさんいます。

見えているのに止まらない理由

理由を尋ねると、「標識があったことを認識していなかった」と答える方がほとんど。教習所内のコースは狭く、周囲には指定自動車教習所の基準で定められた塀やカラーコーン、構造物などが立っています。狭路コース(Sコースやクランクなどの狭い道)の看板もあり、周囲の視覚情報が多いぶん、標識が見えにくくなりがちです。

視界には入っていても、頭の中で「止まれ」の標識として処理されていない可能性があります。「ここに標識なんてないだろう」という思い込みが、存在そのものを見えにくくすることもあるでしょう。

こうした落とし穴は高齢の方に限らず、運転に慣れた人なら誰にでも起こり得ること。長年、事故なく運転してきた経験は自信になる一方で、見落としを招くきっかけにもなりかねません。

油断が招く出会い頭事故の危険

実際の道路でこのような油断が生じたら、どうなるでしょうか?見通しの悪い交差点で一時停止をしなければ、横から来た車や自転車、歩行者とぶつかるおそれがあります。建物の陰から、子どもが急に飛び出してくる場合もあるでしょう。

出会い頭事故(交差点で横から来た相手と衝突すること)は、重大なけがにつながりかねない事故です。講習中なら補助ブレーキで止められても、一人で運転しているときは誰も止めてくれません。

一時停止を見落とさないために

標識だけでなく、道路標示(路面に描かれた文字や記号)も確認しましょう。交差点付近では、路面に「止まれ」と書かれている場所も多くあります。最近は、事故の多い場所やそのおそれがある場所で、路面に色を塗る対策も取られています。こうした場所では、特に注意して走行してください。

「止まれ」の標識には、設置されている理由があります。見通しが非常に悪い場所や、一方が主要道路で交通量が大きく違う場所など、一時停止して確認しなければ危険な場所だからです。

標識があるのに止まらなければ、事故に直結しかねません。見落とさないよう、日頃から確認する習慣を身につけましょう。

「止まれ」の標識を見落とすのは、運転が苦手な人だけではありません。慣れた道を長く走ってきた人ほど、注意が必要です。標識が見えていることと、止まろうと意識が働くかどうかは別物。走るたびに、標識を一つひとつ確かめたいものです。


ライター:ちだてつし
自動車教習所の指導員・技能検定員として、23年間にわたり現場で安全運転の指導・検定を担当。現在はその専門知識と現場での実務経験を活かし、安全運転やドライブテクニックに関するWebライターとして活動中。また、ペーパードライバーや外免切り替えの事業を展開し、運転に自信のないライダーを対象に、実践的なツーリングを通して運転技術を身につける「日本ツーリングサポート協会」を設立・運営。「安全で楽しいカー&バイクライフ」を伝える発信を行っている。日本二輪車普及安全協会の二輪安全運転指導員として活躍中。ココナラでバイクのライディングに関する質問を受け付け中。


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