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「コンビニの数分」でぶつけられた30代男性→0:100のはずが…相手のドラレコに映っていた“1本の線”

  • 2026.10.23
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

「少し停めてコンビニに行くくらい、誰でもすると思うんですけど」

契約者のAさん(30代・男性)は、電話口でそう話しました。

「停めていた車にぶつけられたのに、自分にも過失が発生する可能性がある」

Aさんは、事故の相手であるBさんの保険会社からそう言われたそうです。

今回は、以前に損害保険会社で事案を担当していた私が相談を受けた事例を紹介します。Aさんが「0:100」だと考えていた事故が、「10:90」になってしまったケースです。

コンビニに寄った数分のあいだに

あるお昼のこと。Aさんは買い物のため、道路脇に車を停めてコンビニに入ったそうです。

そこへ、Bさん(60代・女性)の車が後方から走ってきました。Aさんの車の横を通り過ぎようとしたとき、Bさんの左ミラーがAさんの右ミラーに接触します。

Aさんの右ミラーは開閉に不具合が出て、交換が必要な状態になりました。一方、Bさんの左ミラーは接触時に内側へ畳まれ、ミラーカバーの交換だけで済んでいます。損害は双方合わせて数万円程度です。

Aさんは、停めていた車にぶつけられた被害事故だと考えていました。契約者に賠償責任がない事故では、保険会社は契約者に代わって相手と示談交渉をすることができません。

そのため私は当初、Aさんからの相談として対応することになりました。

ドライブレコーダーに映っていた黄色い線

状況が変わったのは、Bさん側から「Aさんにも過失がある」として、ドライブレコーダーの映像が送られてきたことがきっかけでした。

映像には、Aさんが車を停めていた場所が映っています。

そして、Aさんの車のすぐそばにある縁石。そこには黄色の実線が引かれていたのです。

縁石に引かれた黄色の実線は、駐停車禁止を示す道路標示です。つまりAさんが車を停めていたのは、たとえ短い時間であっても、車を停めてはいけない場所でした。

駐車中の車に走行中の車が接触した場合、駐車方法などに問題がなければ、一般的には停めていた側に過失はないとされます。

しかしBさん側の保険会社は、Aさんが駐停車禁止の場所に車を停めていたことを修正要素(基本の過失割合を増減させる事情)として、Aさんにも10%の過失があると主張しました。

提示された過失割合は、10:90(Aさん:Bさん)。

「なぜ私に過失が出ると言われるのか、よく分からないです」

Aさんは、そう話しました。

停まっていた車に過失はあるのか

私はAさんに、「なぜBさん側が停まっていたAさんにも10%の過失があると主張しているのか」、その考え方を説明します。

Aさんは、駐停車が禁止されている場所で車を離れ、コンビニに入っていました。停めていた時間が短くても、運転者が車を離れ、すぐに運転できない状態であれば「駐車」にあたります。

駐停車が禁止されているのは、そこに車があることで道路幅が狭くなり、ほかの車の通行を妨げたり、事故の危険を高めたりするためです。Bさん側は、こうした場所にAさんが車を駐車していたことも、事故の発生に影響したと主張していました。

もちろん、実際にAさんの車へ接触したのはBさんです。停まっている車の横を通過するときには、安全な間隔を保つなど、接触しないよう注意して走行する必要があります。そのため、Bさん側も自らの過失を90%とする割合を提示していました。

Aさんの過失として問われたのは、駐停車が禁止された場所に車を停めていたことでした。

10%の過失で変わった事故対応

「停めてはいけない場所だったのは分かりました。でも、停まっていたのに10%なんですか」

説明を聞いたAさんは、そう言います。

私はあらためて、Bさん側が提示した10:90を必ず受け入れる必要はないことを伝えました。そのうえで、Aさんにも過失がある事故として対応する場合には、私が示談交渉に入ることもできると説明します。

「正直、納得はしづらいですが、考え方は分かりました」

その後、Aさんは自身にも過失があることを認め、私は示談交渉の担当としてBさん側との交渉に入りました。Aさんにも賠償責任が生じる事故であれば、その責任を負担する保険会社も示談交渉を行うことができます。

Aさんにも10%の過失があることで、0:100の事故とは対応が変わりました。

まず、Aさんの右ミラーの修理費は、Bさんの過失分である90%が支払われます。Aさんは車両保険に加入していなかったため、残りの10%は自己負担です。

また、Aさんの修理期間中の代車についても、双方に過失がある事故では、相手の保険会社に手配してもらえない場合があります。なお、今回のAさんはミラーの交換が1日で終わる予定だったため、代車は必要ありませんでした。

そして、AさんはBさんの損害についても、自分の過失分を賠償する立場になります。Bさんの左ミラーについて、Aさんが賠償する金額は約3,000円でした。

この約3,000円に対物賠償責任保険を使うこともできます。しかし、保険を使えば等級が3つ下がり、翌年以降の保険料にも影響します。

最終的には、10:90(Aさん:Bさん)の過失割合で双方が合意し、Aさんは対物賠償責任保険を使わず、約3,000円を自分で支払うことにしました。

「10%と0%で、相手の保険会社の対応も変わっちゃうんですね」

Aさんはそうつぶやき、最後にこう付け加えました。

「次からは停める場所をよく見ておくようにします」

「少しだけ停める」その前に確認したい黄色い線

車を停める前には、標識だけでなく、道路の端に引かれた線や縁石にも目を向けておきたいところです。

黄色の実線は駐停車禁止、黄色の破線は駐車禁止の標示です。駐車禁止の場所では「停車」まで禁止されているわけではありませんが、車を離れてすぐに運転できない状態になれば、短時間でも「駐車」にあたります。

なお、事故の状況や駐車していた場所、時間などによって過失割合の考え方は異なります。駐停車禁止の場所に車を停めていたからといって、一律に10%の過失割合が適用されるわけではない点には注意が必要です。

たかが数分の駐車、たかが10%。その10%につながったのは、縁石の上に引かれた1本の黄色い線でした。


ライター:スライカズヤ
保険・自動車分野を専門とするライター。損害保険会社で事案担当者として10年間、示談交渉・損害査定・自動車修理の協定業務に携わり、数多くの事故対応の現場に立ってきた。初級技術アジャスター、3級ファイナンシャル・プランニング技能士、損害保険事業総合研究所 本科講座修了。専門性の高い知識を、正確に、分かりやすく伝えることを信条とし、「当事者にならないとわからない」事故と保険のリアルを読者に届ける。


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