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受講者「昔は怒られたので…」70歳以上の高齢者講習で“急加速”→その後、指導員が聞いた思わぬ理由

  • 2026.10.22
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

70歳以上の方は、免許更新の前に高齢者講習を受けます。座学や適性検査(加齢による身体機能の変化を確かめる検査)のほか、教習所のコースを実際に走る「実車指導」もある講習です。

その実車指導で、ときどき出会うのが、走り出した途端に勢いよく加速する受講者の方です。話を聞くと、普段はいたって慎重に運転している方ばかり。なぜ講習の場になると、アクセルを強く踏み込んでしまうのでしょうか?

今回は、その背景にある“昔の教習事情”と、安全運転につながるポイントをご紹介します。

実車指導が始まると勢いよく加速

ある日の講習で、発進の合図を出したときのことです。受講者の方はいきなりアクセルをぐっと踏み込み、コースの直線で速度をぐんぐん上げていきました。カーブの手前でも速度が出すぎ気味で、ハンドル操作が慌ただしくなる場面もありました。

「無理にスピードを出さなくても大丈夫ですよ」

と声をかけると、返ってきたのはこんな言葉でした。

「昔はもたもたしていると怒られたので…」「遅いと不合格になるかと思って」

ハンドルを握る手には力が入り、緊張した面持ちで当時の記憶を語ってくれました。

なぜ「もたもた」が怒られたのか

受講者の方が免許を取ったころは、教習所への入校は半年待ちが当たり前だったそうです。指導員から「もたもたするな!」と厳しく言われることも、珍しくなかったといいます。

今の高齢者講習の対象となる世代の多くが免許を取ったのは、昭和30~40年代ごろ。日本で車が一気に普及した時代です。教習所には免許を取りたい人が多く集まり、限られた時間で大勢の教習生を指導する必要がありました。道路も急に増えた車で混み合い、交通の流れを妨げない運転が求められていたのです。

当時の指導方針は、運転技術に余力を持たせることで安全につなげるというもの。極端にいえば、「上手な運転は安全な運転」という考え方です。こうした指針と時代背景から、もたもたした運転は危険を招くとして、厳しい指導につながった面もあるのでしょう。

私が勤めていた教習所は昭和36年の開校で、指導員になりたてのころは開校当時からの大先輩が何人もいました。その先輩方から聞いた話も同じでした。教習中に遅かった場合は、叱ったり、検定では今ではほとんど使われない減点項目を当てはめたり、ひどい場合は失格にしたりしたそうです。

私自身も、コースで加速が遅いと後ろからクラクションを鳴らされ、教習後に先輩から「遅い」「指導が悪い」と叱られました。昭和に免許を取った方々の多くは、さらに厳しい指導を受けていたのではないでしょうか。

時代とともに指導の方法は変わり、今は一人ひとりに合わせた丁寧な指導が基本です。

講習という場面が呼び起こす記憶

高齢者講習の実車は、コースを走りながら、法令に沿った通行の方法や適切な運転方法を学ぶ時間です。75歳以上で一定の違反歴がある方を対象とした運転技能検査とは異なり、検定(教習所の卒業や仮免許取得のためのテスト)のように合否を決める場ではありません。

それでも、「講習」という言葉が、試験のような緊張感を呼び起こすことがあります。「遅いと減点される」という思い込みが焦りを生み、アクセルを踏む足にも余計な力が入っていたのでしょう。

肩の力を抜いていつもの運転へ

「今の講習は、速さを見るものではありませんよ」

そう伝えると、受講者の方は少しほっとした表情を見せてくれました。その後は落ち着いた速度で走り、安全確認もペダル操作も丁寧そのものでした。

日常の運転でも急がなくて大丈夫

教習生からもときどき質問されますが、普段の運転で「遅いと迷惑になるのでは」と焦る必要はありません。一般道の制限速度は、出してもよい速度の上限です。交通の流れに乗ることも大切ですが、違反をしてまで周りに合わせるのは禁物です。

後ろに車が続いて気になるときは、安全な場所で左に寄って先に行ってもらいましょう。70歳以上の方は、高齢運転者標識(高齢者マーク)を付けるのも一つの方法です。標識を付けた車への幅寄せや割り込みは、法律で禁止されています。

急がない運転が安全につながる

「もたもたしてはいけない」という思いには、昔からのさまざまな事情や心理状況が絡み合っていると考えられます。その一部は、車が急増した時代の教習の名残ともいえます。

今の道路で大切なのは、素早い加速やハンドリングではなく、状況に応じた速度で確実に操作すること。急がなくてもいいと分かれば気持ちにゆとりが生まれ、安全確認も丁寧になります。自分に合ったペースで、安心できる運転を続けていきましょう。


参考:
高齢者講習 70歳以上の方(栃木県警察)
道路交通法(デジタル庁)


ライター:ちだてつし
自動車教習所の指導員・技能検定員として、23年間にわたり現場で安全運転の指導・検定を担当。現在はその専門知識と現場での実務経験を活かし、安全運転やドライブテクニックに関するWebライターとして活動中。また、ペーパードライバーや外免切り替えの事業を展開し、運転に自信のないライダーを対象に、実践的なツーリングを通して運転技術を身につける「日本ツーリングサポート協会」を設立・運営。「安全で楽しいカー&バイクライフ」を伝える発信を行っている。日本二輪車普及安全協会の二輪安全運転指導員として活躍中。


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