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被害者「払えないって言うんです」過失0:100のもらい事故で全損→社外パーツをめぐる20代男性の“大誤算”

  • 2026.10.22
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

「パーツにもこだわって乗っていたのに…」

もらい事故で車が壊れたなら、失ったものはすべて相手に払ってもらえる。被害者であれば、そう考えるのは自然なことといえます。

しかし、0:100の被害者であっても、愛車にかけてきたお金がそのまま戻ってくるとは限りません。それは、高価な社外パーツを取り付けていても同じです。

今回は、以前に損害保険会社で示談を担当していた私が相談を受けた、追突事故で愛車が全損となってしまった契約者の事例を紹介します。

追突されて全損になった愛車

契約者のAさん(20代・男性)の車に、後ろを走っていたBさん(60代・女性)の車が追突しました。原因は、Bさんのブレーキ操作が遅れてしまったことでした。過失割合は0:100(Aさん:Bさん)。Aさんに過失のない、いわゆるもらい事故です。

しかし、Aさんの車は修理費が事故直前の車の価値(時価額)を上回り、「全損」と判断されました。Aさんは修理せず、廃車にすることを決めます。

Aさんは車を大切にしており、こだわりの社外パーツをいくつも取り付けていました。そこでAさんは、相手の保険会社に社外パーツの購入額も上乗せして支払うよう求めました。

それに対し、返ってきた答えは「購入額をそのまま上乗せすることはできない」というものです。

「被害者なのに、相手の保険会社は払えないって言うんです」

納得できなかったAさんが、自分が契約している保険会社へ電話をかけたことで、私が相談を受けることになりました。

賠償の基準は「買ったときの値段」ではない

Aさんに過失のない事故では、Aさん側の保険会社が相手に支払う保険金がないため、原則としてAさんに代わって示談交渉はできません。そのため私は相談担当として、相手の保険会社が社外パーツの購入額を上乗せできないと回答した理由を説明しました。

事故の損害賠償では、事故直前の状態に戻す「原状回復」が基本的な考え方です。車が全損となった場合は、購入時の価格ではなく、事故直前の時価額が賠償額を考える基準になります。

この考え方は、社外パーツも同様です。事故時点で価値が認められれば車の価値に反映される可能性はありますが、購入額がそのまま上乗せされるとは限りません。購入からの年数や市場での価値などを踏まえて判断されます。

「社外パーツの価値が認められれば、車の時価額に反映される可能性はあります。ただ、購入した金額がそのまま上乗せされるわけではないんです」

私はAさんにそう伝えました。

廃車の前に残されていた2つの道

では、全損となった車に付いている社外パーツはどうすればよいのでしょうか。

私はAさんに、2つの方法を案内しました。

1つ目は、社外パーツを付けたまま、廃車の引き取り業者に車を査定してもらう方法です。取り外す手間はかかりませんが、社外パーツに高い価値が付くとは限りません。

2つ目は、相手の保険会社に相談し了承を得た上で、引き取り業者に待ってもらい、修理工場などで社外パーツを取り外す方法です。取り外したパーツは手元に残るため、その後に売却するなど、自分で扱いを決められます。なお、社外パーツを取り外して手元に残す場合、そのパーツの価値を踏まえて、車の査定額が調整されることがあります。

「それなら、パーツだけ外しておけばいい」と思う人もいるかもしれません。しかし、社外パーツの取り外しは、事故で壊れた車を元の状態へ戻すための修理ではありません。そのため、取り外しにかかる工賃などは相手からの賠償が認められず、自己負担となる可能性があるのです。

私が説明を終えると、Aさんは「うーん……」とつぶやきました。

「一度考えてみます」

しばらくの沈黙の後、Aさんはそう言って電話を切りました。

Aさんが選んだパーツの行き先

後日、Aさんから再び連絡がありました。

Aさんが選んだのは、多少の費用を自己負担してでも、社外パーツを取り外すこと。修理工場に依頼してパーツを外してもらい、その後はネットオークションなどを利用して、欲しい人を探すことにしたそうです。

「欲しい人もいるかもしれないですし、多少自腹を切ってでも使ってもらえたほうがいいと考えました」

購入した金額がそのまま賠償されるわけではありません。それでも、愛車と一緒に社外パーツを手放すのではなく、使ってくれる人に渡す。それがAさんの出した答えでした。

「いろいろ考えましたが、私にとってはこの方法が一番納得できると思ったんです」

Aさんは最後に、そう話してくれました。

社外パーツを付けた車が全損したときに確認したいこと

社外パーツに交換したときは、取り外した純正パーツを保管しておくのも1つの方法です。事故などで車を手放すことになった場合、純正パーツの有無が事故車の査定に影響することがあります。

また、全損となった車を手放す場合は、引き取りの前に社外パーツをどうするか保険会社と相談して決めておきましょう。そのまま車と一緒に手放すのか、合意のうえで取り外して手元に残すのかによって、必要な対応が変わります。取り外すのであれば、引き取り業者に待ってもらい、修理工場などへ作業を依頼する時間も必要です。

こだわって選んだパーツだからこそ、万が一のときにどのような選択肢があるのか、あらかじめ知っておきたいところです。


ライター:スライカズヤ
保険・自動車分野を専門とするライター。損害保険会社で事案担当者として10年間、示談交渉・損害査定・自動車修理の協定業務に携わり、数多くの事故対応の現場に立ってきた。初級技術アジャスター、3級ファイナンシャル・プランニング技能士、損害保険事業総合研究所 本科講座修了。専門性の高い知識を、正確に、分かりやすく伝えることを信条とし、「当事者にならないとわからない」事故と保険のリアルを読者に届ける。


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