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教習生「納得できん!失格はおかしい」合格発表直後に猛抗議…横断歩道で“一発中止”になったワケ

  • 2026.10.19
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

自動車教習所では、運転の技能を確かめる検定を受けてもらいます。仮免許を取る前の修了検定と、卒業前の卒業検定の2つ。
検定の前に、私たち指導員が必ず説明していることがあります。歩行者を妨げるなどの危険な行為は、その場で検定中止になるというルールです。

今回は、横断歩道で歩行者を見落とし、検定中止となった教習生のエピソードをご紹介します。なぜ歩行者に気づけなかったのか?指導員の視点から考えてみましょう。

検定前に必ず伝える「検定中止事項」のルール

検定は、100点満点から運転中のミスを減点していく方式です。持ち点が合格基準点を下回ると不合格になります。ただし、歩行者のいる横断歩道を止まらずに通過するような危険な行為は別。減点ではなく、その場で検定中止(失格)となります。

とはいえ、実際にそのまま通過させるのは危険です。多くの場合は、検定員がブレーキなどで補助し、「検定員補助」という項目で失格とします。

「納得できん!」検定中止を伝えた直後に

その日の検定も、事前にルールを説明してからスタート。ところが、ある教習生が交差点を右折する際、横断歩道を渡ろうとする歩行者に気づかず、そのまま通過しようとしたのです。担当の検定員はブレーキを踏んで補助し、失格としました。

検定後のワンポイントアドバイス(検定の講評)で歩行者の保護について伝え、合格発表で失格を告げたときのことです。教習生の表情が一変し、「納得できん!」と強い口調で抗議が始まりました。

歩行者がいた位置や中止の理由を説明しても、なかなか聞き入れてもらえない様子でした。

合格発表の後も続いた抗議

全員への合格発表が終わっても抗議は収まらず、場所を変えて話を聞くことに。

「あそこに人は立っていなかった!こんなので失格はおかしい」

語気の強い訴えは続きます。検定員が数人がかりでなだめるほどでした。

検定の結果を受け止めるのは、誰にとっても簡単なことではありません。それでも、歩行者の安全に関わる判断は変えられないもの。
危険性を改めて説明しても、教習生は最後まで納得しないまま、その場を後にしました。

なぜ「歩行者はいなかった」と思い込むのか

教習生には、本当に歩行者が見えていなかった可能性もあるでしょう。運転席からの視界には、意外な落とし穴がいくつもあります。

一つは、フロントガラスの両側にある柱(Aピラー)による死角。交通安全環境研究所の実験では、右折時に対面の歩行者がAピラーに隠れる状態が確認されています。セダンタイプの車では、歩行者が見えない区間が15.1mに及んだそうです。

もう一つ考えられるのが、検定の緊張による視野の狭まり。信号や対向車、走る順路に意識が集中すると、歩道側の人に気づきにくくなります。「いつもこの場所には人がいない」という思い込みが重なることもあるでしょう。

見落としは、特別な人だけに起こるのでしょうか?JAF(日本自動車連盟)の2025年の調査では、信号機のない横断歩道で歩行者がいても、一時停止した車は56.7%でした。4割以上の車が止まらなかったことになります。

「自分が見落としているかもしれない」という謙虚さ

運転中に危ういのは、「自分は完璧に確認している」という思い込み。どれだけ気をつけていても、見落としの可能性はゼロになりません。

歩行者がいるかどうか分かりにくい横断歩道が近づいたら、速度を落として左右の歩道まで目を配りましょう。右左折時に頭を少し動かし、Aピラーの向こう側を確かめるのも効果的です。

横断歩道での歩行者優先は義務ですが、もし歩行者や他の車のミスに遭遇したとしても、怒りに任せず冷静に対処する。そんな謙虚な姿勢が、自分と周りの人を守る大きな力になります。

一旦立ち止まる謙虚さを!

技能検定は、警察の運転試験と同等のレベルで運転操作・法令・状況判断を客観的に評価できるよう、改良を重ねてきた仕組み。教習所の検定も、各都道府県警察の指導の下で厳正公平に行われているのです。

検定中止に納得がいかず、抗議に来る教習生は年に何人か見られます。今回の教習生も、残念ながら最後まで納得していただけないまま。ただ、公道での見落としは、重大な事故に直結しかねません。

「自分が間違っているかもしれない」と立ち止まれる謙虚さを、ハンドルを握るたびに思い出してください。その姿勢が、安全運転の土台になるはずです。


参考:
「信号機のない横断歩道」まだ4割以上が止まらない!~JAF実態調査の結果を公表~(JAF)
Aピラー死角が交差点右左折時におけるドライバの歩行者視認性に及ぼす影響(交通安全環境研究所)


ライター:ちだてつし
自動車教習所の指導員・技能検定員として、23年間にわたり現場で安全運転の指導・検定を担当。現在はその専門知識と現場での実務経験を活かし、安全運転やドライブテクニックに関するWebライターとして活動中。また、ペーパードライバーや外免切り替えの事業を展開し、運転に自信のないライダーを対象に、実践的なツーリングを通して運転技術を身につける「日本ツーリングサポート協会」を設立・運営。「安全で楽しいカー&バイクライフ」を伝える発信を行っている。日本二輪車普及安全協会の二輪安全運転指導員として活躍中。


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