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「よく考えたら…」山道で“ドラレコなし”の衝突事故→後日、相手が証言を一転?!過失0:100の決め手になった“痕跡”

  • 2026.10.19
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

「そちらがセンターラインを越えていた。現場では動転していたけど、よく考えたらそうだった」

ドライブレコーダーのない車同士の事故で、相手があとから言い分を変えてきたら、どうすればよいのでしょうか。

映像が残っていなければ、事故当時の状況をあとから確認することはできません。「相手の言い分に押し切られてしまうのではないか」と、不安に思う人もいるのではないでしょうか。

今回は、以前に損害保険会社で示談を担当していた私が対応した、山道での正面衝突事故を紹介します。

キャンプへ向かう山道での正面衝突

Aさん(30代・女性)は、同乗者を乗せてキャンプ場へ向かっていました。

山道を上っていたAさんの車に、下ってきたBさん(50代・女性)の車が近づいてきます。Bさんの車線側は山の斜面、Aさんの車線側はガードレールのある崖です。

現場は緩やかなカーブでした。Aさんの説明では、Bさんの車がセンターラインを越えてこちらに向かってきたのが見えたため、ブレーキをかけながら左へ寄せたそうです。

それでもBさんの車は、センターラインを越えたまま近づいてきたと言います。Aさんはほぼ停止するまでブレーキをかけ、車の左側面をガードレールに擦りながら回避しました。しかし、Bさんの車は車体全体がAさん側の車線にはみ出した状態で、Aさんの車とほぼ正面から衝突したそうです。

衝突によって双方の車は前部が大きく押し込まれ、ラジエーターにまで損傷が及びました。どちらも全損(修理費用が車の時価額や車両保険金額を上回る状態)となっています。なお、このときエアバッグは開いていません。

Aさんと同乗者は、ともに打撲と捻挫のケガを負いましたが、骨折などはありませんでした。

後日に変わった、Bさんの「事故状況説明」

現場では、Bさんも自分がはみ出したことを認めていたそうです。

ところが後日、BさんはAさんに対して、「センターラインを越えていたのはAさんのほうだ」と言い出しました。

センターラインを越えてきた対向車との事故は、基本の過失割合が0:100(はみ出していない側:はみ出した側)です。どちらがはみ出したかによって、過失割合はひっくり返ってしまいます。

また、双方の車にドライブレコーダーは付いていません。事故時の状況は映像としては残っていませんでした。

私はAさんの保険会社の担当として、被害事故の相談を受けていました。ただ、Aさんが自身に過失がないと主張する以上、弁護士法第72条(非弁行為の禁止)との関係から保険会社がAさんに代わって相手と交渉することはできません。

さらに、Bさんも自身に過失がないと主張していたため、Bさん側の保険会社も同様に示談交渉には入りません。そのため、まずは当事者同士で話し合うか、弁護士費用特約を利用して弁護士に交渉を依頼することなどを検討する状況でした。

Aさんは、電話口でこう話しました。

「こっちはできるだけ回避もしたのに…。今さら私がはみ出したことになるんですか」

ガードレールに残っていた塗料

私はAさんに、映像はなくても、事故の痕跡は車や現場に残っていることを説明しました。

一つ目は、ガードレールの塗料です。

Aさんから車の損害写真を送ってもらったところ、左側面にはガードレールと同じ白い塗料が付いていました。また、現場のガードレールにも、Aさんの車と同じ黒い塗料が残っていることを確認しています。

つまり、Aさんの車とガードレールが接触していたことになります。Aさんが「Bさんの車を避けるため、左へ寄せた」とする説明と、車やガードレールに残った痕跡が一致していました。

開かなかったエアバッグ

もう一つの材料は、エアバッグです。

日本自動車工業会によると、エアバッグは停止している同クラスの車に時速40〜60kmで正面衝突したとき程度の強い衝撃で作動するようにつくられています。

Bさんは事故について、こう説明していました。

「Aさんの車がセンターラインをオーバーしてきて、走行している自分の車にぶつかってきた」

Bさんの説明どおりであれば、走行していたBさんの車に、対向してきたAさんの車が正面から衝突したことになります。

たとえば、双方が時速20〜30km程度で向かい合って走っていたとすれば、衝突時の相対速度は時速40〜60km程度で、作動の目安に当たる速度域です。

もちろん、エアバッグが作動するかどうかは、速度だけでなく、衝突の角度や車体構造などにも左右されます。そのため、エアバッグが開かなかったことだけで事故時の速度を断定することはできません。

ただ、今回の事故では双方の車が大きく損傷した一方で、エアバッグは開いていませんでした。この事実は、少なくともAさんが「衝突前にブレーキをかけ、ほぼ停止するまで減速した」とする説明と矛盾するものではありませんでした。

Aさんから伝えてもらったこと

私は二つの材料を整理し、AさんからBさんに伝えてもらうことにしました。あわせて、Bさんが受け入れない場合には、弁護士費用特約を使って弁護士に依頼する考えがあることも伝えてもらっています。

Aさんによると、Bさんは不満そうな様子で話を聞いていたそうです。

「Bさんから、『そこまで言うなら自分の保険会社に連絡してみる』と言われました。正直、怒りは感じましたが、これで少しは話が進みそうです」

Aさんは私にそう教えてくれました。

その後、Bさんの保険会社からAさんに連絡が入り、Bさん側に100%の過失があるとして話を進めることになりました。Aさんは、車の損害やケガについてBさん側から賠償を受けています。

また、Aさんが回避する際に接触したガードレールにも損害が生じていました。この接触も、センターラインを越えてきたBさんの車を避けるために生じた一連の事故として扱われ、ガードレールの損害についてもBさん側が賠償することになりました。

ドラレコがなくても事故の痕跡は残る

今回、Aさんの説明を裏付ける材料になったのは、事故後に車や現場に残っていた痕跡でした。

重要なのは、その痕跡をあとから確認できる形で残していたことです。Aさんは自分の車だけでなく、接触したガードレールも写真に収めていました。そのため、事故後に双方の言い分が食い違っても、Aさんの説明と現場の状況を照らし合わせることができました。

交通事故では、ドライブレコーダーの映像だけが事故状況を確認する材料になるわけではありません。安全を確保したうえで、車の損傷箇所や接触した物、現場の状況などを写真に残しておくことも意識しておきたいところです。


ライター:スライカズヤ
保険・自動車分野を専門とするライター。損害保険会社で事案担当者として10年間、示談交渉・損害査定・自動車修理の協定業務に携わり、数多くの事故対応の現場に立ってきた。初級技術アジャスター、3級ファイナンシャル・プランニング技能士、損害保険事業総合研究所 本科講座修了。専門性の高い知識を、正確に、分かりやすく伝えることを信条とし、「当事者にならないとわからない」事故と保険のリアルを読者に届ける。


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