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「絶対に売らないで」25万km超えの11万円の中古軽、買い替えに向かった店で親がハッとしたワケ

  • 2026.10.19
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出典:PIXTA(※画像はイメージです)

車のイベントで知り合ったAさんから伺った、心温まる愛車の所有記をご紹介します。走行距離が25万kmを超えたスズキのパレットを買い替えようと、Aさんはお子さんたちと中古車店へ向かいました。しかし、新しい車を見た下のお子さんから飛び出したのは、「絶対に売らないで」という意外な言葉でした。

親にとっては数ある車の一台であっても、子どもにとっては人生を共にした大切な存在だったのです。これはそんな気づきを得た家族の決断の物語です。

11万円で手に入れた20万kmの中古軽

2019年頃、Aさんはお子さんたちの保育園の送迎用として、新しい車を探していました。さまざまな選択肢を検討する中で、ヤフオクを通じて見つけたのがスズキのパレットだったそうです。2013年式でありながら、購入時の走行距離はすでに約20万kmに達していました。車両本体価格は約11万円という安さだったといいます。

20万kmの中古車と聞くと、とても長く走っている印象を受けるかもしれません。そのため、価格の安さだけで妥協して選んだように思われがちですが、Aさんにとっては明確な理由がありました。後部座席への乗り降りがしやすいスライドドアは、小さなお子さんを育てる保護者の方にとって非常に重宝されます。さらに、比較的年式が新しく、ご自身の好みに合うデザインだったことも決め手になりました。車検費用や陸送費などは別にかかったものの、子育て世帯のライフスタイルに合致したベストな選択だと感じて購入に踏み切ったそうです。

家族の日常にすっかり溶け込んでいった日々

そうして迎え入れたパレットは、購入後すぐにAさん一家の日常に欠かせない存在となっていきました。月に平均して1000kmほど走り、通勤やスーパーへの買い物はもちろん、休日のレジャーや実家への帰省など、毎日のように家族を乗せて走っていたそうです。

とくに記憶に残っているのが、毎日のように繰り返された保育園の送迎風景でした。当時まだ小さかった長女が、どうしても保育園に行きたがらずにぐずってしまう日もあったといいます。そんな時、Aさんは車内に人形を飾ったり、チャイルドシートを人気のプリンセスのものに変えたりと、なんとかご機嫌で乗ってもらえるように工夫を凝らしていました。時には特別なお菓子を用意して誘うこともあったそうです。

そして、無事に保育園が終わった帰り道には、ご褒美としてドライブスルーに寄ったり、帰り道にある公園で遊んだりすることも日常茶飯事でした。いつでも遊べるように、トランクにはボールや縄跳びが常備されていたといいます。こうした慌ただしくも温かい毎日の風景は、パレットと共に紡がれたかけがえのない思い出となっていきました。

25万kmを超え、ついに訪れた買い替えの検討

家族の生活を支え続けたパレットでしたが、購入から時間が経ち、総走行距離が25万kmを超えた頃から少しずつ状況が変わり始めました。車内にいるとあまり気にならないものの、車の外に出ると少し気になる異音が聞こえるようになってきたそうです。

車好きでもあるAさんは、この頃になるとN-BOXなど他の軽自動車の中古車価格が手頃になってきていることにも気づいていました。これだけ長く走り、少しずつ不具合も出てきている状況を考えれば、そろそろ新しい車への乗り換えを検討してもおかしくない時期です。そこで、良い条件の車があればその日に買い替えてもいいかもしれないと考え、Aさんはお子さんたちを連れて中古車店へ足を運ぶことにしました。

お店には20台ほどの中古車が並んでおり、お子さんたちも最初は新しくてきれいな車を見て楽しそうにしていたそうです。しかし、いくつかの車を熱心に見て回った後、Aさんが、「今日見た中でどれが一番良かった?」と尋ねた時のことでした。当然新しい車を選ぶだろうと思っていた予想に反し、下のお子さんは迷うことなく「パレット」と答えたのです。さらに、「この車は絶対に売らないで」と強く訴えかけてきたといいます。

子どもにとっての車という存在への気づき

思いがけない言葉を聞いて、Aさんは思わずハッとさせられたそうです。Aさんにとってパレットは、これまで何台も乗り継いできたうちの一台に過ぎませんでした。長く乗って古くなれば、次の新しい車へ買い替えるのが自然な流れだと考えていたのです。しかし、下のお子さんにとっては全く違う見え方をしていました。

下のお子さんは0歳の頃からずっとこのパレットに乗って育ちました。保育園に行く時も、家族で遊びに出かける時も、物心ついた時から常にそばにあったのがこの車だったのです。お子さん自身は単純に好きだからとしか説明しなかったそうですが、Aさんはその言葉の裏にある事実に気がつきました。子どもにとっては、生まれた時からずっと一緒にいる兄弟のような存在なのかもしれないと考え直したそうです。

同時に、そもそもこのパレットを購入した理由自体が、お子さんたちの送迎を第一に考えた結果だったことも思い返しました。子どものために選んだ車を手放すことを、子どもの言葉によって思いとどまることになったのです。この対比に気づいたAさんは、その場で新しい車を買うことはせず、一度自宅に戻ってこの車とどう向き合うべきか冷静に考え直すことにしました。

10万円の修理を経て、まだまだ続く家族の旅

自宅でじっくりと考えた結果、Aさんはお子さんたちとの思い出を大切にする道を選びました。まだ修理をすれば十分に乗れる状態であったことに加え、将来お子さんが免許を取った時に、このパレットで運転の練習をしてほしいという新たな願いも生まれたからです。

その後、10万円以上をかけて発電機やショックアブソーバー、ブレーキのオーバーホールなど、必要な箇所の整備を行いました。11万円で購入した車に10万円の修理費をかけるというのは、単なる経済的な視点だけで見れば不思議な選択に思えるかもしれません。しかし、この時のパレットはすでに、金額や走行距離では決して測ることのできない、かけがえのない家族の一員へと変わっていました。

現在、下のお子さんも小学生になり、パレットに毎日乗るわけではなくなったそうです。それでも久しぶりに乗ると、お子さんたちはやはりこの車が最高だと喜んでくれるといいます。最近ではパレットで約2000kmの旅行にも出かけたそうですが、実は行程の8割はフェリーだったと、Aさんは楽しそうに教えてくれました。

下のお子さんが免許を取得するまであと約12年。その頃には、上の兄弟が運転の練習中にどこかをぶつけてしまうかもしれないとAさんは少し笑いながら語ります。直せるうちはこれからも大切に乗り続けたいという言葉からは、車を通じた家族の温かい絆が確かに伝わってきました。



ライター:Masaki.N
自動車メーカーで車体開発エンジニアとして設計・先行開発に携わった後、マーケティング/市場リサーチ領域で商品導入・訴求設計にも従事。さらに自動車サブスク系ITベンチャーでマーケティングを担当し、ユーザー視点のコミュニケーション設計を経験。現在は自動車ライターとして、新車情報、技術解説、モデル比較、中古車相場、維持費、業界動向まで幅広く執筆。SEO記事・コラム・インタビューなど媒体横断で制作し、専門知識を生活者の言葉に翻訳して「買う/持つ」の判断を支援します。加えて、カスタムを含む実車取材・体験を通じて得た一次情報を記事に落とし込み、机上の知識にとどまらない“現場感”のある解説を強みとしています。


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