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「同じ色の塗料を塗れば元通り」は大間違い?元自動車メーカー塗装担当が語る、愛車修理の盲点

  • 2026.10.22
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

車に傷がついたとき、修理店に塗装の補修を頼めば、元の色と同じように仕上がると期待する人もいるでしょう。しかし、真珠のような輝きが特徴のパール塗装では、色味だけでなく、光の当たり方による見え方も合わせる必要があります。

筆者は大手自動車メーカーの生産技術職として、工場で新車の塗装工程に携わっていました。また、一時期は営業現場を知るため、ディーラーや整備工場を訪れていました。筆者自身も、補修後のパール塗装を見て、周囲との色の違いに気づいた経験があります。

バックドアを補修したら、周囲の色に違和感が

筆者が見たのは、バックでポールにぶつけ、バックドアを修理店で補修した車でした。パール塗装の車で、修理前には、完全に元に戻すのは難しい旨の説明を受けていたと聞いています。

実際に補修後の車を見ると、傷を直すという点では問題ありませんでしたが、補修した部分と周囲の色になんとなく違和感がありました。角度を変えて見てみると、確かに色が違って見えたのです。

傷を補修することと、周囲の塗装になじむ見え方に仕上げることには、それぞれ難しさがあると感じました。

パールの色合わせは、塗料の配合だけでは決まらない

パール塗装の輝きを生むのは、「パール顔料」という微細な粒子です。顔料とは、塗料に色や輝きを与える材料のこと。本物の真珠を混ぜているわけではありません。

代表的なものには、雲母という鉱物の薄い粒子を、酸化チタンなどで覆ったものがあります。この薄い構造で光が反射し、光の波が重なって強め合ったり弱め合ったりする「干渉」によって、独特の輝きや色が生まれます。見る角度によって表情が変わるのも、こうした光の性質が関わっています。

さらに、塗装の層の重なりも重要です。例えば「3コートパール」は、基本となる色をつくる層、その上に輝きを加えるパールの層、最後に表面を保護してつやを出す透明なクリアの層を重ねます。色と輝きを別々の層でつくる構造です。

この場合、下の色を合わせるだけでは十分ではありません。上に重ねるパールの量や塗り重ね方によっても、輝きの見え方が変わります。また、塗った後の粒子の並び方も見え方を左右します。パール粒子の並び方が不均一になると、部分的に発色が異なります。同じ配合の塗料でも、粒子の並び方まで同じになるとは限らないのです。

そのため、パールの補修では、色味だけでなく、正面や斜めから見たときの明るさ、キラキラした質感まで合わせる必要があります。「同じ色の塗料を塗れば元どおり」と簡単にはいかない理由が、ここにあります。

修理前には、色と輝きの仕上がりを相談する

車には塗装色を識別するカラーナンバーがあります。しかし、番号が同じでも、補修用塗料の色が必ずぴったり合うとは限りません。

実際の車には製造時の色の個体差があり、同じ番号の塗料でも正確に色が合わない場合があります。色番号は手がかりになりますが、目の前の車と見え方を合わせるには、さらに確認や調整が必要になることも。もちろん、パール塗装は必ず色が合わないという意味ではありません。今回の色の違いだけで、修理店の技術不足だったと決めつけることもできません。

修理前には、どの範囲を補修するのか、色や輝きをどの程度まで合わせられる見込みなのか、違いが残る可能性はあるのかを相談しておきたいところです。「元と同じ色に」という希望を、仕上がりの具体的な話につなげることが大切です。


筆者:jaco

大手自動車メーカーで、自動車の塗装ラインの構築に携わった。車体の塗装面に色むらや異物がないか、品質検査を行った経験もある。現在はITエンジニア兼Webライターとして、ものづくりの現場で得た経験を生かして執筆している。趣味はキャンプ、登山、旅行。フリーランス時代には年間50泊ほどのキャンプを楽しみながら、アウトドアやIT系の記事を執筆していた。


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