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「まさか、とは思いました…」駐車中の車に当て逃げされた40代女性→ドラレコには…“見覚えのある車”に絶句

  • 2026.11.1
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出典元:photoAC(画像はイメージです)

「保険会社から、相手の方に話をしてもらえませんか」

契約者のAさん(40代・女性)から相談があったのは、駐車中の車が当て逃げされた後のことでした。ぶつけた相手には、心当たりがありました。

自分から言い出しにくい相手なら、保険会社に代わりに話をつけてもらえばいい。そう考える人もいるのではないでしょうか。

しかし私は、Aさんのこの依頼を引き受けることができませんでした。

今回は、損害保険会社で事故対応を担当していた私が、実際に対応した当て逃げ事故を紹介します。

駐車中に見つかった傷とBさんの車

Aさんは自宅の駐車場に車を停めています。道路を挟んだ向かいには、複数の住人が利用する駐車スペースがあり、近所に住むBさん(60代・男性)もそこに車を停めていました。2人は、顔を合わせれば挨拶をする程度の間柄だったといいます。

ある日、駐車中のAさんの車の右前部に、ぶつけられた跡が見つかりました。ヘッドランプのカバーにはヒビが入り、バンパーとフェンダーも交換が必要なほどの損傷です。Aさんはすぐに警察に通報。修理工場で見積もってもらったところ、修理費は概算で25万円でした。

しかし、数日経っても名乗り出る人はいません。

そんななかAさんは、向かいの駐車スペースから出てくる車の前部に、へこみがあることに気づきました。車はBさんのもので、運転していたのは息子さんです。

「まさか、とは思いました。でもご近所ですし、確かめもせずに聞くわけにもいかなくて」

ドライブレコーダーが記録していたもの

Aさんの車には、駐車中の衝撃を検知して録画を始めるドライブレコーダーが付いていました。

映像は接触の衝撃をきっかけに録画されており、Bさんの息子さんの車の前部がAさんの車の前部に当たる様子が残っていました。

その後、息子さんの車はそのままバックで向かいの駐車スペースに入っていきます。接触した後も、Aさんに連絡したり、名乗り出たりした様子はありません。

映像によって相手は特定できました。しかし、相手は顔を合わせることもある近所の人です。

Aさんは自分から話を切り出すことに抵抗があったそうで、保険会社からBさんに話をしてもらえないかと私に相談してきました。

保険会社が間に入れない理由

Aさんの車は駐車中にぶつけられているため、Aさんに過失はありません。

契約者にも過失がある事故では、保険会社が契約者に代わって相手と示談交渉をおこなうことができます。これは契約者が相手への賠償責任を負い、保険会社もその賠償金を保険金として支払う立場にあるためです。

一方、今回のAさんには相手への賠償責任がなく、Aさんの保険会社から相手へ支払う賠償金もありません。このような事故で保険会社がAさんに代わって損害賠償について交渉すると、弁護士法第72条で禁止されている非弁行為にあたるおそれがあります。同条は、弁護士ではない者が報酬を得る目的で、他人の法律事務を取り扱うことなどを禁じた規定です。

そのため私は、保険会社からBさんと交渉することはできないとAさんに説明しました。そのうえで、ドライブレコーダーに事故の状況が記録されていることをBさんに伝え、まずは事故について確認してもらってはどうかと提案しました。

「保険会社が間に入れないのは分かりましたが、やっぱり不安ですね…」

そう口にするAさんに、私は次のことをアドバイスしています。

「あくまでも『映像を一緒に確認してほしい』という姿勢で話してみてください。証拠を突きつけて相手を問い詰めるような形にしなければ、Bさんも応じやすいかもしれません」

Aさんは弁護士費用特約にも加入していましたが、相手が近所の人だったこともあり、まずは自分でBさんへ事故について伝えてみることにしました。

映像のことを伝えると…意外な結末

Aさんがドライブレコーダーの映像について伝えると、Bさんは息子さんに事故のことを確認しました。息子さんも接触を認め、Aさんに直接謝罪しに来たそうです。

その後はBさんの保険会社が対応し、Aさんの車の損害は全面賠償されています。Aさんは自分の車両保険を使わずに済んだため、等級への影響もありませんでした。

後日、Aさんは私に次のように話してくれました。

「変な話だと思われるかもしれませんが」

Aさんはそう前置きして続けます。

「当て逃げがあってから、むしろBさんとはよくお話しするようになりました」

当て逃げ事故がきっかけではありましたが、AさんとBさんのご近所関係は良いものに変わったそうです。

当事者同士で解決できないときは

相手が事故を認めなかったり、話し合いがまとまらなかったりしても、今回のような自分に過失のない事故では、原則として保険会社に示談交渉を任せることはできません。

こうした場合に選択肢となるのが、弁護士費用特約です。事故の相手との交渉を弁護士に依頼した際の費用などを補償するため、保険会社が示談交渉に入れない事故でも、弁護士へ対応を依頼できます。

近所の人だからこそ「事実」をもとに話す

今回、Aさんは当て逃げされたにもかかわらず、相手がご近所だったことで、すぐに話を切り出すことができませんでした。

それでも、ドライブレコーダーの映像という客観的な記録があったことで、相手を決めつけるのではなく、まず事故について確認するところから話を始められました。結果として、その後のご近所関係が悪化することもありませんでした。

事故の相手が身近な人であればあるほど、感情や推測だけで話を進めないことが大切です。万一のときに事実を確認できる記録を残しておくことが、話し合いの第一歩にもなることは忘れないでおきたいところです。


ライター:スライカズヤ
保険・自動車分野を専門とするライター。損害保険会社で事案担当者として10年間、示談交渉・損害査定・自動車修理の協定業務に携わり、数多くの事故対応の現場に立ってきた。初級技術アジャスター、3級ファイナンシャル・プランニング技能士、損害保険事業総合研究所 本科講座修了。専門性の高い知識を、正確に、分かりやすく伝えることを信条とし、「当事者にならないとわからない」事故と保険のリアルを読者に届ける。


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