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「全然見えなかったんです…」50代男性を襲った右直事故→たった“10%”の過失割合が生んだ「13万円」

  • 2026.10.25
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

「対向の車の陰で、全然見えなかったんです」

契約者のAさん(50代・男性)は、電話口でそう話しました。交差点を右折中に、対向から直進してきた車と衝突した事故です。

過失割合が80:20か、90:10か。

「たった10%の違いなら、大きな差はない」と感じる人もいるかもしれません。

今回は、以前に損害保険会社で示談を担当していた私が対応した右直事故(右折車と直進車の事故)をもとに、過失割合10%の差が負担額にどう影響したのかを紹介します。

右折待ちの車がつくっていた死角

事故が起きたのは、片側2車線の道路にある、信号機のある交差点。信号は双方とも青でした。

Aさんは右折しようと交差点に進入します。対向車線には右折待ちの車が停まっており、その陰になって、奥から来る車が見えにくい状態でした。

「仕事で時間が押していて…。早く移動しなければと焦ってしまいました」

Aさんは急いでいたこともあり、十分に減速しないまま右折を開始。

そのとき、対向の右折待ちの車の陰から、Bさん(50代・男性)の車が直進してきました。AさんはBさんの車の右側面に衝突します。

損害額は、Aさんの車が約50万円、Bさんの車が約80万円でした。

「右折した自分のほうが責任が大きいのは分かっています。でも、本当に見えなかったんです」

Aさんはそう話しました。

ドライブレコーダーに残っていた右折の速さ

右折車と直進車の事故では、右折車の過失が大きくなるのが基本です。

道路交通法37条では、右折する車は、その交差点で直進または左折しようとする車の進行を妨げてはならないとされています。つまり、双方が青信号で交差点に進入する場合、基本的には直進車が優先され、右折車はその進行を妨げないよう注意しなければなりません。

この考え方をもとに、過去の裁判例を参考にした基準では、双方が青信号の場合、基本の過失割合は80:20(右折車:直進車)とされています。

しかし、今回の事故は80:20では終わりませんでした。

AさんとBさん双方のドライブレコーダーを確認すると、Aさんが十分に減速しないまま右折していたことが分かったのです。

右左折する車には、交差点内を徐行することが求められます。

今回、Aさんからは対向車線の先が見えにくい状態でした。見えないからこそ、直進車が来ることを考えて、すぐに停止できる速度で右折する必要があります。

この徐行が不十分だったことがAさん側の過失を重くする要素となり、90:10(Aさん:Bさん)の過失割合がBさんの保険会社から提示されました。

「急いでいたことが、こんな形で過失割合に響くとは思っていませんでした」

私が過失割合の考え方を説明したあと、Aさんはそう言いました。

その後、私はAさん側としてBさんの保険会社と交渉しましたが、過失割合は変わらず、最終的に90:10で合意しています。

10%で動いた13万円

では、80:20から90:10へ変わったことで、Aさんのお金の負担はどれほど変わったのでしょうか。

Bさんの車の損害額は約80万円です。基本の80:20であれば、AさんがBさんに賠償する金額は64万円でした。しかし、90:10になったことで72万円となり、Aさんが賠償する金額は8万円増えます。

一方、Aさんの車の損害額は約50万円です。80:20であれば、Bさんから受け取れる賠償金は10万円でした。90:10になったことで5万円となり、今度はAさんが受け取れる金額が5万円減ります。

つまり、Aさんにとって過失10%の違いは、「相手に8万円多く支払う」「自分は5万円少なく受け取る」という両方向に影響し、合計13万円の差になりました。

過失割合は、相手にいくら賠償するかだけを決める数字ではありません。自分の損害について、相手からいくら受け取れるのかにも影響するのです。

自己負担45万円を支えた車両保険

Bさんへの賠償には、Aさんが加入していた対物賠償責任保険を使いました。

一方、Aさん自身の車には約50万円の損害が生じています。過失割合が90:10となったため、Bさんから受け取れる賠償金は5万円。車両保険がなければ、残る45万円はAさん自身で負担しなければなりません。

Aさんは、一般型(フルカバー型)の車両保険にも加入していました。免責金額(自己負担額)は1回目5万円、2回目以降10万円の「5-10万円」で、今回は保険期間中1回目の事故です。

そのため、Aさんには免責金額による負担が生じるものの、車両保険を使うことで自分の車に生じた大きな損害を補償してもらうことができました。また、今回の事故は3等級ダウン事故にあたりますが、同じ事故で対物賠償責任保険と車両保険の両方を使っても、下がるのは3等級です。

「相手から受け取れる金額がこんなに少なくなるとは思っていませんでした」

Aさんは、こう続けました。

「車両保険に入っていなかったらと思うとゾッとしますね」

「見えない」右折では、いったん速度を落とす

右直事故を避けるためにも、対向車などで先が見えないときは、「見えないから来ない」と判断せず、直進車が来ても止まれる速度まで落として右折することが大切です。

似た状況で起こる事故に、いわゆる「サンキュー事故」があります。対向の右折待ちの車から先に曲がるよう合図を受けて右折したところ、その車の陰から来た直進車と衝突する事故です。相手から合図を受けても、その先に直進車がいないことまで保証されたわけではありません。周囲が見えない状態で右折するときほど、自分の目で安全を確認してから進む必要があります。

「見えなかった」は、事故が起きた理由にはなります。しかし、注意を怠ってよい理由にはならないのです。


ライター:スライカズヤ
保険・自動車分野を専門とするライター。損害保険会社で事案担当者として10年間、示談交渉・損害査定・自動車修理の協定業務に携わり、数多くの事故対応の現場に立ってきた。初級技術アジャスター、3級ファイナンシャル・プランニング技能士、損害保険事業総合研究所 本科講座修了。専門性の高い知識を、正確に、分かりやすく伝えることを信条とし、「当事者にならないとわからない」事故と保険のリアルを読者に届ける。


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