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「俺には関係ないですから」15万円の賠償を拒んだ20代男性→翌朝に態度一変…明かした“意外な事実”

  • 2026.10.21
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

「壊したタイルだけで十分では?」

契約者のAさん(20代・男性)は、修理の見積もりを伝えた私にそう返しました。

車で他人の物を壊したとき、「壊した部分だけを直せばよい」と考える人もいるかもしれません。しかし、壊した箇所と、賠償する範囲が必ずしも一致するとは限らないのです。

今回は、以前に損害保険会社で示談を担当していた私が対応した、修理の範囲をめぐる話し合いが思わぬ事実で動いた事例を紹介します。

自宅マンションの敷地で起きた事故

Aさんは車を切り返したときに、自分が住むマンションの共用部にあたる、車両進入禁止の敷地に乗り上げてしまいました。敷地の一区画に張られたタイルは、車の重みで半分以上が割れていました。

修理の見積額は15万円程度。割れたタイルだけでなく、残ったタイルも含めて一区画を全面的に張り替える内容です。一方、割れたタイルだけを張り替える場合は、9万円程度でした。

マンションは賃貸で、建物一棟を所有しているのはオーナーのBさん(50代・男性)です。

Aさんの対物賠償責任保険には、5万円の免責金額(自己負担額)が設定されていました。さらに、保険を使えば等級が3つ下がり、翌年以降の保険料にも影響します。

修理費の説明を聞いたAさんは、全面張り替えに難色を示しました。

張り替えを渋り続けたAさん

私は、一部のタイルだけを新しくすると、古いタイルとの色の違いが目立つことをAさんに説明。そのうえで、割れていない部分を含めた張り替えが必要と判断される場合もあることを伝えました。

それでも、Aさんの考えは変わりません。

「私が壊したのは確かですが、そんなことまでは知りませんよ」

Aさんの意向をBさんに伝えることはできます。しかし、Bさんが一部だけの張り替えに同意するとは限りません。合意できなければ、修理の範囲をめぐって争いになる可能性があることもAさんに説明しました。

「保険会社のあなたが交渉するんでしょ?俺には関係ないですから」

Aさんはそう言って、電話を切りました。

一晩で変わったAさんの答え

翌朝、Aさんから電話が入ります。

「まだBさんに伝えていませんよね?」

開口一番、Aさんはそう言うと、自分の親から聞いたという話を教えてくれました。オーナーのBさんは、同じマンションに住んでいる。しかも、Aさんの部屋の隣だというのです。

「親にも今回の事故を説明したら、怒られてしまって…」

Aさんは親から「マンションとしての価値を壊しておいて、『関係ない』はないだろう」と言われたそうです。その後、Aさんは全面張り替えに同意。対物賠償責任保険を使い、一区画のタイルを全面的に張り替えることになりました。

修理を終えたあと、Bさんからこんな言葉をかけられました。

「Aさんって、うちの隣の部屋の方だったんですね。円満に解決できて良かったです」

Bさんは、Aさんが当初、全面張り替えを渋っていたことを知りません。私はそのことには触れず、ご迷惑をおかけした旨をあらためて伝えました。

すべての手続きが終わり、Aさんに解決を報告すると、最後にこう言われました。

「ありがとうございました。助かりました。いろいろと」

なぜ「壊していない部分」まで賠償するのか

他人の物を壊した場合、加害者は生じた損害を賠償する責任を負います。今回問題になったのは、Aさんに責任があるかどうかではなく、どこまでを修理する必要があるかでした。

損害賠償では、事故前の状態を回復するために必要な費用が賠償額を考える基準のひとつになります。一方で、事故前より良い状態にするための費用まで、当然に認められるわけではありません。

ただし、壊れた部分だけを修理すれば十分とも限りません。タイルは長く使ううちに色や質感が変化するため、一部だけを新品に交換すると、周囲との違いが目立つ場合があります。

今回も、割れたタイルだけを交換すると、一区画の中に新旧のタイルが混在し、色むらが大きく残る状態でした。そのため、保険会社では割れていない部分を含めた一区画の張り替えを賠償の範囲として認めることになったのです。

賠償の相手は、すぐ隣にいることもある

Aさんは、Bさんが隣人だと知ったあと、全面張り替えを受け入れることになりました。ただし、Bさんとの関係によって賠償の範囲が決まったわけではありません。

対物賠償責任保険を使えば、保険会社が相手との示談交渉を進めます。そのため、事故を起こした本人は、相手と直接やり取りすることなく解決に至るケースもあります。

保険会社が示談交渉を代行しても、他人の物を壊した本人の賠償責任そのものがなくなるわけではありません。保険会社が間に入っていても、賠償する相手との関係まで切り離されるわけではないのです。


ライター:スライカズヤ
保険・自動車分野を専門とするライター。損害保険会社で事案担当者として10年間、示談交渉・損害査定・自動車修理の協定業務に携わり、数多くの事故対応の現場に立ってきた。初級技術アジャスター、3級ファイナンシャル・プランニング技能士、損害保険事業総合研究所 本科講座修了。専門性の高い知識を、正確に、分かりやすく伝えることを信条とし、「当事者にならないとわからない」事故と保険のリアルを読者に届ける。


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