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「仕事に影響出た分も払え!」過失割合100:0の事故、納得いかない相手が放った“想定外の一言”

  • 2026.10.20
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

「車がないと仕事ができないのに、どうしてくれるんだ!」

仕事に使う車が事故に遭えば、修理が終わるまで仕事に影響が出ることがあります。

自分に過失のない0:100の事故であれば、車を使えないことで生じた仕事上の損失も、すべて相手に負担してもらえると考える人もいるかもしれません。

しかし、仕事に使う車だからといって、その間の損失が必ず賠償されるとは限りません。

今回は、以前に損害保険会社で示談を担当していた私が対応した、宅配業に使う車が被害に遭った事例を紹介します。

配達から戻ると車に傷が

事故の当事者は、契約者のAさん(50代・男性)と、相手方のBさん(40代・男性)です。

Bさんは個人で宅配業を営んでおり、仕事には黒ナンバー(事業用の軽自動車に付けるナンバー)の軽貨物車を使っていました。

Bさんは道路脇に車を一時停止させ、荷物を届けるために車を離れていました。その後方から同じ車線を直進してきたAさんの車の左ミラーが、Bさんの車の右ミラーに接触した事故です。

Bさんが車を停めていたのは駐停車禁止の場所ではなく、ほかに過失割合を修正する要素もありませんでした。Aさんも自身に責任があることを認め、過失割合は100:0(Aさん:Bさん)として、Aさんの対物賠償責任保険で対応することになりました。

Bさんの車は右ミラーが脱落して走行できない状態となり、車そのものの修理費は概算3万円でした。なお、積んでいた荷物に損害はありません。

代車の案内に返ってきた言葉

私はBさんに電話をかけ、まずはAさんに代わってお詫びしました。

あわせて、車の修理期間中は、黒ナンバーの代車を手配できることも案内しました。Bさんが宅配の仕事を続けるには、代わりの車も事業用として使用できる必要があるためです。

しかし、Bさんからはこう返ってきました。

「代車だけじゃ足りない。仕事に影響を与えた分も払え!」

代車費用と休車損害の違い

Bさんが求めていた「仕事に影響を与えた分」に当たる賠償として、「休車損害」があります。私はBさんに、代車費用と休車損害がそれぞれ何を補うものなのかを説明しました。

代車費用は、修理期間中に代わりの車を借りる際に発生する費用です。代車を使って通常どおり仕事を続けられれば、仕事で得られる利益は減りません。

対して休車損害は、仕事に使う車が使えず、代わりの車も使っていない期間に減った営業上の利益を補うものです。一般的には、1日あたりの営業収入から、車を使わなかったことで支出を免れた経費を差し引き、休車日数を掛けて算出します。また、営業に使える別の車(遊休車)があり、それによって仕事を続けられる場合などは、休車損害が認められないことがあります。

つまり、代車費用も休車損害も、事故に遭った車を使えなかったことによる損害です。今回のように、代車を使えば通常どおり仕事を続けられる場合、同じ期間について代車費用と休車損害の両方を賠償の対象とすることはできないのです。

なお、名前の似たものに「休業損害」があります。休業損害は、ケガで働けなくなったことによる人身の損害で、休車損害とは別のものです。今回のケースでは、Bさんはケガをしていないため、対象にはなりません。

説明を聞いたBさんは「それでも納得はできない。弁護士補償特約を使う」と言い、電話を切りました。

弁護士を通じたやり取り

その後、私のやり取りの相手は、Bさんが依頼した弁護士です。

今回のケースでは、代車費用と休車損害の両方を請求することはできない点について理解してもらい、Bさん側は代車費用ではなく、休車損害を請求することになりました。

休車損害を算定するには、実際にどれだけ営業上の利益が減ったのかを確認する必要があります。そのため私は、Bさん側に確定申告書など、営業収入や経費が分かる書類の提出を依頼しました。

提出された書類をもとに1日あたりの損害額を確認し、修理に必要だった期間を踏まえて休車損害を算定します。Bさんの車は損傷が大きくなく、修理も1週間弱で終わっていたため、休車損害として数万円を提示しました。

弁護士を通じた交渉はその後も続き、最終的には、私が算定した金額とほぼ同額で解決しています。

仕事に使う車が被害に遭ったとき

今回の事故では、Bさんは道路脇に車を停めていましたが、駐停車禁止の場所ではなく、Bさん側の過失を修正する要素もありませんでした。停車中のBさんの車の横を、十分な間隔をとらずに通行し接触させたAさんの側に過失があると判断し、100:0(Aさん:Bさん)の事故として対応しています。

ただし、Bさんに過失がないからといって、事故によって生じた損失のすべてがそのまま賠償されるわけではありません。

事業用として使える代車を手配できる場合は、修理期間中も仕事を続けられます。一方、代車を使っていない期間に、車を使えないことで営業上の利益が減った場合は、休車損害によってその減少分を補える可能性があります。

仕事に使う車が事故に遭ったときは、車の修理費だけでなく、その間の仕事をどうするかも考えなくてはなりません。代車で仕事を続けるのか、休車損害を請求するのか、それぞれの方法で何が補われるのかを確認したうえで、保険会社と相談するとよいでしょう。


ライター:スライカズヤ
保険・自動車分野を専門とするライター。損害保険会社で事案担当者として10年間、示談交渉・損害査定・自動車修理の協定業務に携わり、数多くの事故対応の現場に立ってきた。初級技術アジャスター、3級ファイナンシャル・プランニング技能士、損害保険事業総合研究所 本科講座修了。専門性の高い知識を、正確に、分かりやすく伝えることを信条とし、「当事者にならないとわからない」事故と保険のリアルを読者に届ける。


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