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「隣を当てにして、失敗しました…」築42年の実家売却で“500万円ダウン”…40代女性が直面した誤算【一級建築士は見た】

  • 2026.10.7
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

「相続した実家の査定が、隣の家より500万円も低くて。敷地のほとんどが道路の予定地で、建て替えは2階までと言われたんです」

そう話すのは、Aさん(40代女性・パート勤務、夫と子ども2人の4人暮らし)です。夫とは結婚15年目で、昨年、父を亡くしました。母と相談し、父が昭和の終わりに建てた実家(築42年・3DK・延床約75㎡/土地約65㎡)を売ることにしたのです。

隣の家は、同じ頃に建った同じくらいの広さで、昨年1,800万円で売れたと聞いていました。ところが、不動産会社の査定は1,300万円前後でした。理由は、敷地のほとんどが「都市計画道路」(自治体が将来つくると決めている道路)の区域に入っているためです。

担当者からは「この土地では、建て替えは2階までです。3階建てを考える買い手には勧められないので、買い手が限られ、価格もこのくらいになります」と告げられました。

「祖父が『いつか前の道が広くなる』と言っていた気はしますが、そんな決まりがあるとは知りませんでした」とAさんは話します。

道路の予定地では、建てられる建物が決まっている

都市計画道路は、都市計画で位置と幅を決めた道路です。計画が決まっても着工までに数十年かかることは珍しくなく、計画決定から50年以上たっても着工していない路線が全国に残っています。

区域の中で建物を建てるには、都市計画法第53条の許可が必要です。同法第54条では、階数が2以下で地階がないこと、主要構造部が木造や鉄骨造などであること、容易に移転や除却ができることを満たす建物なら許可すると定めています。将来、道路をつくるときに、動かしやすい建物にしておくためです。いま建っている家にそのまま住み続けることはできます。自治体によっては、長く着工していない路線で3階建てまで認める運用もあります。

一方で、事業が始まれば、区域内の土地は自治体が買い取り、建物の移転にも補償が出ます。区域に入っているかどうかは、市区町村の都市計画図で確かめることができ、売買のときは重要事項説明の「法令上の制限」にも記載されます。

父の家は合法だった。それでも安くなる

Aさんの実家の前の道路は、昭和43年に計画が決まり、58年間、着工していません。父はこの区域の中に、許可を受けて木造2階建てを建てていました。当時としては、何も問題のない家です。

問題は、売るときに表れました。土地の狭いこの地域では、建て替えるなら3階建てにして部屋数を確保したい買い手が多いのですが、この土地ではそれができません。買い手が限られるぶん、値段も下がります。

「隣と同じ1,800万円を当てにして、失敗しました」とAさんは言います。夫は「役所で直接聞いてみよう」と言い、二人で市の都市計画課へ行きました。答えは「優先して整備する路線ではなく、事業化の予定は今のところありません。ただ、計画の見直しで変わる可能性はあります。本市では、3階建てを認める運用もしていません」というものでした。

「2階建てで十分」という買い手へ

Aさんと母は、1,300万円で売り出し、2階建てで十分という買い手を待つことにしました。3か月後、子どもが1人の30代の夫婦が「2階建てで足りるし、その分安いのがいい」と購入を決めました。

契約の重要事項説明では、都市計画道路の区域と建築の制限、事業化されれば土地の買い取りと補償があることが説明されました。

Aさんと夫は、自分たちが住む家の周りも、市の都市計画図で確かめました。計画道路の線は、かかっていませんでした。

土地を売る前も買う前も、都市計画図を見る

都市計画道路の区域にかかる土地は、建て替えの制限があるぶん価格が手頃で、2階建てで暮らす人には選びやすい土地です。将来、道路が整備されれば、買い取りと補償を受けられる面もあります。

一方で、制限を知らずに売り出したり買ったりすると、建て替えの計画も価格の見込みも崩れます。だからこそ、実家を相続するときや土地を買うときは、都市計画図で計画道路の線がかかっていないかを確かめることが欠かせません。

・都市計画道路の区域内で建物を建てるには、都市計画法第53条の許可が要る。基準は2階以下・地階なし・木造や鉄骨造など(第54条)。自治体によっては3階建てまで認める運用もある
・計画決定から数十年たっても着工していない路線は多い。対象地の自治体の都市計画担当窓口で、最新の制限と事業化の見通しを確かめる
・事業が始まれば土地の買い取りと移転の補償がある。制限と補償の両面を知って、価格を考える
・区域に入っているかは都市計画図で分かる。売買の重要事項説明の「法令上の制限」も読み飛ばさない

売る土地も買う土地も、市区町村の都市計画図で、計画道路の線がかかっていないか一度見てみてください。

参考:
都市計画法(第53条・第54条)(e-Gov法令検索)
都市計画法第53条に基づく建築許可(横浜市)
都市計画施設等の区域内における建築の規制(大阪市)


ライター:yukiasobi(一級建築士・建築基準適合判定資格者)
行政で住宅政策・都市計画・建築確認審査など10年以上の実務経験を持つ。現在は住宅・不動産分野に特化したライターとして活動し、空間設計や住宅性能、都市開発に関する知見をもとに、高い専門性と信頼性を兼ね備えた記事を多数執筆している。


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