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「登記には“宅地”と書いてあるのに?」600万円で土地を買った40代男性。注文住宅の相談で知った“家が建てられない理由”

  • 2026.10.7
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出典:PhotoAC ※画像はイメージです

皆さま、こんにちは。現役の不動産会社社長として、日々さまざまな土地や建物のご相談に向き合っている岩井です。

家づくりを考えているとき、知人から手頃な価格の土地を紹介されたらうれしくなるかもしれません。登記の書類に「宅地」とあり、周囲にも家が並んでいれば、「ここなら家を建てられる」と安心してしまう方もいるでしょう。

しかし、土地に家を建てられるかどうかは、登記の記載や周囲の様子だけでは判断できません。

今日は、知人から600万円で土地を購入した40代男性のエピソードをご紹介します。家族で楽しみにしていた注文住宅の計画は、工務店への相談をきっかけに、思わぬ壁にぶつかりました。

格安な土地。これなら建物にお金をかけられる

知り合いの不動産業者から聞いた話です。

40代のAさんは、妻とマイホームの購入を考えていました。希望は、家族がゆったり過ごせる注文住宅。しかし、土地代と建築費を合わせると予算が厳しく、なかなか計画を進められずにいたそうです。そんなとき、知人から「持っている更地を600万円で買わないか」と話を持ちかけられました。

現地を見に行くと、周囲には住宅が並んでいます。登記事項証明書(不動産の情報や権利関係を確認できる書類)に記載された地目(土地の種類を示す区分)も「宅地」。Aさんは、ここなら家を建てられると思ったといいます。

「土地代を抑えられた分、広い家にできるね」

夫婦は喜び、リビングの広さや部屋の配置について話を膨らませていました。

知人との取引という安心感もあり、不動産会社には仲介を依頼せず個人間で売買を進めることに。役所や建築士に家を建てられるか確認しないまま、Aさんは600万円で土地を購入してしまったのです。

工務店から告げられた「この計画では建てられません」

土地の購入後、Aさんは注文住宅の相談に工務店を訪れました。

「この土地に、家族で住む家を建てたいんですが」

ところが、土地の資料を調べた担当者から、予想していなかった説明を受けます。

「ここは市街化調整区域です。建築には条件があり、確認したところ、今回の住宅計画では必要な許可の条件を満たせません」

市街化調整区域とは、市街地が無秩序に広がることを抑えるため、開発や建築が制限されている区域です。土地を所有していても、自由に住宅を建てられるわけではありません。

「でも、登記には宅地と書いてありますよ。周りにも家があるのに、どうしてですか?」

家の間取りを相談するつもりだったAさん。話は、そもそも家を建てられるのかという問題に変わってしまいました。

「宅地なら大丈夫」ではなかった

納得できなかったAさんは、役所の担当窓口や建築士にも相談しました。

そこで知ったのが、登記上の地目と、建築に関する規制は別だということです。「宅地」という記載は、希望する住宅の建築が認められることを保証するものではありません。

また、市街化調整区域でも、土地の所在や過去の経緯、建てる人の要件などによって、住宅を建てられる場合があります。そのため、隣の家と自分の計画では、適用される条件が違うこともあるのです。

熊本市の資料でも、市街化調整区域では原則として開発や建築が制限されること、計画の際には土地や計画内容が分かる資料を持参して相談することが案内されています。

参考:市街化調整区域における立地基準(熊本市)

Aさんは建築できる方法がないか確認しましたが、今回の条件では計画を進められませんでした。

600万円で買った土地を400万円で手放すことに

Aさんは、売主である知人に土地の買戻しを相談しました。しかし、金額などの折り合いがつかず、話はまとまりませんでした。この土地を持ち続けていては、別の土地を買う資金を確保できない。夫婦は話し合い、売却することにしました。

最終的に、隣地の所有者へ400万円で売却。購入額の600万円との差額だけで200万円の損失となり、購入時にかかった登記費用も負担として残りました。

土地代を抑えて建築費に回すつもりが、家づくりの資金そのものを減らす結果に。夫婦が楽しみにしていたマイホーム計画は、延期せざるを得なくなったのです。

「土地を買う前に確認しておけば…」

安く買えたと喜んでいた土地によって、200万円を失い、家族で思い描いていた暮らしも遠のいてしまいました。

「知り合いだから安心」で進めない

個人間で土地を売買すること自体は可能です。ただし、宅地建物取引業者を介さない個人同士の取引では、通常、業者による取引のような宅地建物取引業法に基づく重要事項説明は行われません。建築の制限を誰が調べ、確認するのかが曖昧なまま進むことに注意が必要です。

重要事項説明とは、契約するかどうかを判断するための重要な情報を、契約前に宅地建物取引士が書面を用いて説明するものです。土地の取引では、都市計画法や建築基準法などによる制限も対象になります。

今回であれば、市街化調整区域にあることや、住宅を建てる際の許可・条件は、購入判断に直結する情報でした。

知人が悪意なく土地を売ったとしても、その人が建築の条件まで詳しく理解しているとは限りません。「宅地だから大丈夫」という言葉だけでは、確認したことにはならないのです。

契約前に「自分の家を建てられるか」を確認する

土地を購入する前には、建築士や工務店に希望する住宅の内容を伝え、役所で必要な許可や条件を確認しましょう。不動産会社を介して重要事項説明を受ける場合でも、不明点を残さず、自分の計画で建築できるか具体的に尋ねることが大切です。

許可が必要な場合は、取得できなかったときの契約解除や代金の返還についても、不動産会社に相談し、契約書に明記しておきましょう。購入後に問題が分かった場合は、契約書などを整理して弁護士に相談する方法もあります。

価格の安さや「宅地」という記載だけで判断せず、契約前に建築の条件を確認することが、家族の資金とマイホーム計画を守る備えになります。



筆者:合同会社ゆう不動産 代表 岩井佑樹

不動産売買の専門家として仲介・査定・買取に携わりながら、不動産Webライターとして1,000記事以上を執筆。「売る力×伝える力」を軸に、情報発信と販売の両面から不動産の価値を高めている。派手さよりも誠実さを大切にし、地域に寄り添う姿勢で「早く・高く・安心」の取引を支える不動産の専門家。


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