1. トップ
  2. エピソード
  3. 「お前の服、ダサいから捨てたわ」と彼がテレビを見たまま言った日、私は空の収集所に立っていました

「お前の服、ダサいから捨てたわ」と彼がテレビを見たまま言った日、私は空の収集所に立っていました

  • 2026.9.29
ハウコレ

収集所のネットの下には何も残っていませんでした。母から渡されたデニムと、型紙から縫った1着。彼が差し出した紙袋の中身は、私が一度も足を止めたことのない店の服でした。

実家から戻ってクローゼットを開けると、ハンガーの半分が空になっていました。同棲して2年になる彼は、リビングのテレビの前でお菓子を食べています。聞くより先に、私は空のハンガーを1本ずつ数えていました。

テレビを見たままの一言

「ねえ、ここにあった服は?」寝室からリビングに出て聞くと、彼は画面から目を離さずに答えました。

「お前の服、ダサいから捨てたわ」

笑いながらでした。冷蔵庫の横に、見慣れない紙袋が置いてあります。クローゼットに残っていたのは、去年買った通勤用のブラウスと、彼と選んだコートだけです。色の落ちたデニムジャケットと、袖の形が少し歪んだワンピースがありません。

「あのデニム、お母さんのだったんだよ」

「知らないって。そんなの言われてないし」

「ワンピースも。あれ、私が縫ったの」

「……古いやつしか捨ててないよ」

彼はそこで初めてリモコンを置きました。私は寝室に戻り、それからサンダルのまま玄関を出ました。

空になった収集所

マンションの収集所まで走りましたが、ネットの下には何もなく、回収日の札だけが風でめくれていました。前日が収集日だったことは、部屋に戻ってカレンダーを見て思い出しました。

デニムは、母が私くらいの年に着ていたものです。1人暮らしを始める日に、母が玄関で「寒かったら着なさい」と渡してくれました。ワンピースは、服の専門学校に通っていたころ、初めて型紙から自分で縫った1着です。就職を選んで学校を離れたあとも、あの1着だけは手放せませんでした。

壁越しにテレビの音が続いていました。私はその日、寝室の椅子に座ったまま、扉を閉めていました。

紙袋の中身

3日後、彼が冷蔵庫の横の紙袋を差し出しました。

「これ、お前に」

中には、駅前の高い店のタグがついたままのワンピースが2着入っていました。私が一度も足を止めたことのない店です。

「私が着たいのは、これじゃない」

「ごめん。俺が悪かった」

どうしてあんな言い方をしたのか。私が聞いても、彼は玄関の方を向いたまま紙袋の持ち手を握り直すだけで、それには答えませんでした。

「捨てる前に、なんで聞いてくれなかったの」

そう言うと、彼は小さくうなずきました。

そして...

母に事情を話すと、若いころにあのデニムを着た写真が送られてきました。今はそれを、クローゼットの扉の内側に貼っています。紙袋の2着は、タグをつけたまま端にかけてあります。

彼はあれから、取り込んだ私の服を勝手にしまわず、寝室の椅子に置いておくようになりました。先週、その写真を見ていた私に、彼は初めて「そのデニム、どんな服だった?」と聞きました。

私が話し終わるまで、彼は口を挟みませんでした。新しい2着には、まだ袖を通せずにいます。

(20代女性・事務職)

本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。

(ハウコレ編集部)

元記事で読む
の記事をもっとみる

注目コンテンツ