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「お宅の枝が私道に出てるよ」息子が生まれた年に植えた桜を根元から伐採。切った後に気づいた事実とは

  • 2026.9.29
「お宅の枝が私道に出てるよ」息子が生まれた年に植えた桜を根元から伐採。切った後に気づいた事実とは

塀を越えた桜の枝

庭の桜は、息子が生まれた年に植えた木だ。

幹はすっかり太くなり、いつの間にか塀を越えて、隣の私道へ枝が少し張り出すようになっていた。

仕事が立てこんでいたこともあり、気にはなっていたものの、枝を切るのは延び延びになっていた。

その私道を管理しているのは、70代くらいのご主人だ。

朝夕、犬を連れて歩いている。

ある朝、僕が門の前で鉢に水をやっていると、ご主人が足を止め、桜を見上げた。

「お宅の枝が私道に出てるよ」

「すみません。近いうちに切ります」

そう答えると、ご主人は犬の綱を引いて歩いていった。

ところが数日後、仕事から帰った僕は、私道の入り口でまた声をかけられた。

「まだ出てるね。通るたび気になるんだよ」

言われていること自体は分かる。それでも、続けて注意されたことが引っかかり、その夜、僕は妻に話した。

「また桜のことを言われたよ」

妻は少し驚いた顔をした。

「息子の木なのに。切るの?」

「言われ続けるよりはいいよ」

週末、僕は脚立に上った。枝を見ながら迷ったものの、最終的には根元から伐ることにした。

桜がなくなった庭は、驚くほど明るくなった。妻は縁側から、黙ってその様子を見ていた。

桜がなくなって見えたもの

木を切ったあと、改めて私道を見ると、それまで桜の枝に気を取られていて気づかなかったものが目に入った。

道の両脇には膝ほどの高さまで草が伸び、その間には空き缶やレジ袋が引っかかっていた。

翌週の夕方、私道でご主人と行き会った。

ご主人は桜がなくなった庭をちらりと見て、うなずいた。

「すっきりしたね」

僕は少し迷ってから、私道の脇を指した。この先も隣同士なのだから、言い返すより一緒に片づけたほうがいいと思った。

「ええ、息子の記念の木でしたけど、切りました。もしよかったら、こっちの草とゴミも一緒に片づけませんか。僕も手伝います」

ご主人は僕の指した先に目を向けた。草の間の空き缶を見たまま、しばらく黙っている。

やがて、犬の綱を握り直して言った。

「…そうだな」

次の日曜の朝、僕たちは2人で私道の草を刈り、ゴミを拾った。

ゴミ袋がいくつもいっぱいになったころ、向かいの奥さんが通りかかり、足を止めた。

「まあ、ずいぶんきれいになりましたね」

ご主人は首の汗をぬぐいながら、少し決まり悪そうに笑った。

「ここは、うちが放っておいたからな」

それ以来、ご主人から桜の枝について何か言われることはなくなった。すれ違えば、向こうから帽子に手をやって会釈してくれる。

切った桜の枝は一本だけ残し、玄関の花瓶に挿した。

帰省した息子は、それを見ると目を丸くした。

「これ、うちの桜?玄関で見るのも悪くないね」


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた60代以上男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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