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医師「心臓へ重い負担をかける」→実は『心不全』を引き起こす原因に…冬場に気をつけるべき「危険な生活習慣」とは?

  • 2026.10.31
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

空気が冷たくなると、なんとなく息切れしやすくなったり、靴下の跡がくっきり残るほど足がむくんだりすることはありませんか。「年のせいかな」「疲れているだけ」と見過ごしがちなその症状、実は冬場に悪化しやすい「心不全」のサインかもしれません。

特に冬は、寒さや入浴習慣、食生活の乱れが重なり、知らず知らずのうちに心臓へ大きな負担をかけてしまう季節です。なぜ冬に心臓はダメージを受けやすいのか、そして今日から見直すべき危険な生活習慣とは何なのか。麻酔科専門医であり、周術期管理のスペシャリストでもある松岡雄治さんに詳しくお話を伺いました。

なぜ冬は危険? 心臓を襲う「血管の収縮」と「水分増加」の二重苦

---冬場に心不全が悪化しやすいと言われますが、体の中では具体的にどのようなことが起きているのでしょうか?

松岡雄治さん:

「冬場に心不全が悪化する最大の原因は、寒さによる『血管の収縮』と、塩分や感染症による『血液量の増加』が同時に心臓へ重い負担をかけるためです。

日本循環器学会の心不全診療ガイドラインでも、寒さや塩分過多、感染症は心不全を急激に悪化させる主な要因とされています。冬場の体内では、心臓に二重の物理的な過負荷がかかっています。

【冬場に心不全が悪化する体内メカニズム】

  • 室温低下や寒風により交感神経が刺激され、末梢血管が強く収縮する
  • 心臓が血液を押し出す抵抗(後負荷)が急上昇する
  • 同時に塩分過多やインフルエンザなどの感染で体内の水分量(前負荷)が増加する
  • ポンプ機能が限界を迎え、送り出せなくなった血液が肺や全身に溢れ出る(肺うっ血)

これは例えるなら、固く縮んで細くなったホースへ、無理やり大量の水をポンプで流し込むような状態です。ホースの出口が狭まるほど、そこに向かってポンプとして送り出す心臓の筋肉は疲弊し、手前の肺は血液が渋滞して溢れかえります。

冬の寒さや食習慣の偏りによる影響を防ぐことには限界があります。体内で起きている血管の過度な縮みや水分の増加には適切な介入が必要です。息苦しさや疲労感を感じた際は我慢せず、循環器専門医に相談しましょう。」

その入浴方法、危険信号。「ヒートショック」が心臓を直撃する

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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

---冬場にやってしまいがちな、心臓に負担をかける生活習慣にはどのようなものがありますか?

松岡雄治さん:

「暖房のない部屋での着替えや熱いお湯への長風呂は、急激な血圧の乱降下(ヒートショック)を引き起こし、心臓へ極度の負担をかける危険な習慣といえます。

寒冷と熱湯による激しい温度変化は、心臓のポンプ機能に重大な影響をもたらします。学会のガイドラインにおいても、入浴時の温度や負担に対する厳格な管理が推奨されています。

【誤った入浴・防寒習慣が及ぼす心臓への影響】

  • 暖房のない脱衣所で寒さに晒され、血管が縮み血圧が跳ね上がる
  • 42度以上の熱い湯船に急に入り、今度は血管が急激に広がる
  • 血圧が急降下し、心臓や脳への血流が一時的に低下する
  • 血圧を保とうと心拍数が急増し、心臓の筋肉が大量の酸素を消費する
  • 心不全の急激な悪化や、重大な不整脈を誘発するおそれがある

長年慣れ親しんだ入浴方法や生活スタイルを変えるのはそれ自体ストレスということもあるかもしれません。しかし、ある日突然、これまでどうにか耐えていた血管や心臓が音を上げてしまうおそれがあることを考え、負担の小さな習慣を取り入れていきましょう。」

明日からできる! 心不全を防ぐ「体重測定」と「脱衣所の保温」

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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

---心不全の悪化を防ぐために、今日からできる具体的な対策を教えてください。

松岡雄治さん:

「心不全悪化を防ぐ効果的な最初の一歩は、『朝一番の体重測定』と『脱衣所を温めるヒーターの設置』です。

学会のガイドラインでは、短期間の体重増加を水分の滞りを示す警告サインと位置付けています。また、部屋ごとの温度差を減らす環境整備も、血圧の急変動を防ぐ確かな予防策となります。

【明日から実践できる心不全予防のチェックリスト】

  • 毎朝の体重計測:排尿後・朝食前に測り「3日間で2kg増」なら体液貯留を疑う
  • 脱衣所とトイレの保温:小型ヒーターを置き、居室との温度差をなくす
  • 入浴条件の管理:湯温は心臓への負担が少ない「40度以下(ぬるめ)」、湯に浸かる時間は10分以内を目安に長湯しない。水圧による心臓への負担を減らすため、お湯の深さは「みぞおち」くらいにとどめる
  • 現実的な減塩:鍋物のスープは飲み干さず具材を中心に食べる。一切の塩分を断つような極端な制限は食欲を落とすことに注意しつつ、出汁や酸味を効かせて美味しく減塩する
  • 感染症の予防:手洗い・うがいに加え、ガイドラインでも強く推奨されているインフルエンザや肺炎球菌ワクチンの接種を受ける

『3日で2kgの体重増加』は、脂肪によるものではありません。体内に水が溜まっているサインです。さらに、冬場はブーツを履くなど前かがみになる動作が増えますが、『靴紐を結ぶ時などに息苦しさを感じる』、あるいは『夜布団に入って横になると息苦しく、体を起こすと楽になる(起座呼吸)』といった症状がある場合は、肺に水が溜まり始めている緊急度の高いサインの可能性があります。

特に「横になると息苦しくて眠れず、座っていないと息ができない(起坐呼吸)」「息を吸うとゼロゼロ・ゴロゴロと音がする」「ピンク色の泡状の痰が出る」「安静にしていても激しい息切れが治まらない」といった症状が出ている場合は、肺に水が溢れ返っている極めて危険な状態(急性肺水腫)です。翌朝まで様子を見たり、自力で運転して病院に向かったりすることは絶対に避け、直ちに救急車(119番)を呼んでください。

すべての予防策を毎日完璧にこなそうとご自身を追い詰める必要はありません。セルフケアでカバーしきれない部分や、少しでも息苦しさを感じた場合は、我慢せずに循環器内科を受診してぜひお気軽にご相談ください。」

完璧を目指さず、できることから心臓をいたわろう

冬の心不全悪化は、「寒さによる血管の収縮」と「塩分・感染症による水分増加」という2つの負担が重なって起こるものだと分かりました。特に、何気なく続けている暖房のない脱衣所での着替えや熱い湯への長風呂は、思った以上に心臓へ負担をかけている可能性があります。

とはいえ、すべてを一気に完璧にこなす必要はありません。まずは「朝一番の体重測定」と「脱衣所の保温」という、取り組みやすい一歩から始めてみてはいかがでしょうか。もし3日で2kgの体重増加や、靴紐を結ぶ時の息苦しさ、横になると苦しく起き上がると楽になる症状に気づいたら、それは体からの緊急サインです。我慢せず、早めに循環器内科へ相談することが、この冬を安心して過ごすための確かな一歩になるはずです。


監修者:松岡雄治
麻酔科専門医。総合病院、大学病院、小児専門医療機関での勤務を通じ、幅広い周術期管理に従事。現在は急性期病院で麻酔科医として勤務する。日々、美容領域を含む各診療科の手術に携わっている。医師としての知識と経験を活かして医療系ライターとしても活動し、医療・健康・美容分野の記事執筆、医学論文の解説、商品監修、AI技術開発関連プロジェクトへの参加などの実績を有する。睡眠コンサルタント、睡眠検定1級の資格も保有。

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