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『膵臓がんになりやすい人』と“口の中”の意外な関係。歯科医が解説する、見逃したくない「3つの変化」とは?

  • 2026.10.29
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

膵臓がんは初期症状が乏しく、早期発見が難しい病気の一つとして知られています。近年、全身の疾患とお口の健康との関わりが注目されるなか、歯周病に関わる細菌や慢性的な炎症が、膵臓がんのリスクと関連している可能性について研究が進められています。ただし、歯ぐきの状態を見ただけで膵臓がんの有無がわかるわけではありません。また、歯周病の予防や治療が直接膵臓がんを防ぐことにつながるかについても、現時点では解明されていません。

今回は、歯科医師の鷹巣多紀さんに、現在わかっている歯周病と膵臓がんの研究状況や、日頃から確認しておきたいお口のSOSサイン(歯ぐきの変化)について詳しくお話を伺いました。

歯周病菌と膵臓がんに、なぜ関係があるのか

---膵臓がんと歯周病には、どのような関係があるのでしょうか?

鷹巣 多紀さん:

「膵臓がんとの関係で注目されているのは、歯周病に関わる細菌と、歯ぐきで長く続く炎症です。代表的なのが『ポルフィロモナス・ジンジバリス』という歯周病菌で、口の中の細菌に占めるこの菌の割合が高い人では、その後に膵臓がんを発症するリスクが高いという関係が見つかっています。

歯周病の始まりは、歯と歯ぐきの境目にたまった歯垢による炎症です。歯垢は細菌のかたまりで、炎症が続いて歯を支える組織が傷むと、境目に『歯周ポケット』と呼ばれる深い溝ができます。この中は酸素が少なく、こうした細菌が増えやすい環境なのです。

炎症で傷んだ歯ぐきからは、細菌やその成分が血液中に入りやすくなります。また、体が細菌に反応してつくる、炎症に関わる物質も全身へ影響することがあります。歯ぐきで炎症が続くことが、全身で軽い炎症が長引く一因になると考えられているのです。

膵臓がんとの関係では、細菌や炎症が細胞の増え方や免疫の働きに影響し、がんの発生・進行に関わる可能性が検討されています。マウスを用いた実験では、この菌が口から膵臓へ移ることが確認されました。また、膵臓がんができやすい遺伝子の変化を持つマウスでは、がんになる前の病変の進行が早まる結果も得られています。

ただし、人で歯周病が膵臓がんを引き起こすと証明されたわけではありません。歯周病の治療によって膵臓がんを防げるかも、現時点では不明です。歯ぐきの見た目だけで膵臓がんを見分けることはできないため、出血や腫れに気づいたら、まずは歯ぐきの状態を歯科で確かめましょう。」

痛みがないからこそ危ない。見逃したくない「3つの変化」

---歯ぐきの異変を放置すると、どのようなリスクがあるのでしょうか。また、具体的にどんな変化に気をつければよいですか?

鷹巣 多紀さん:

「歯ぐきの異変を放置して心配なのは、痛みが少ないまま歯周病が進み、歯を支える骨が失われてしまうことです。『痛くないから大丈夫』と思っているうちに、歯がぐらついたり、噛みにくくなったりすることもあります。気をつけたい変化は、出血・腫れ・歯ぐきの下がりの三つです。

一つ目は、歯みがきのときの出血。炎症を起こした歯ぐきは、歯ブラシが軽く触れただけでも出血しやすくなります。『いつものこと』と見過ごさず、どのあたりから出血するのかを確かめて、歯科で相談しましょう。

二つ目は、赤く腫れる変化です。腫れたり引いたりを繰り返していても、原因の炎症が治まったとは限りません。歯周病のほかに、歯の根の炎症などで腫れている場合もあるため、原因を調べる必要があります。

三つ目は、歯ぐきが下がる変化です。『歯が以前より長く見える』『歯と歯の間のすき間が広がった』と感じたら、歯ぐきや、その下にある骨の状態を歯科で確認することが大切です。ただし、強い力で磨くことなどが原因の場合もあり、歯ぐきが下がっているだけで、歯周病が進行しているとは判断できません。

炎症が歯ぐきにとどまる『歯肉炎』の段階なら、適切な歯みがきや歯科での清掃によって改善が期待できます。一方、歯を支える骨まで失われた『歯周炎』では、歯みがきだけで失った骨を元に戻すことはできません。だからこそ、軽い変化のうちに原因を確かめ、必要な治療を受けることが大切です。

この三つの変化だけで、膵臓がんがあるかどうかを判断することはできません。まずは口の中の病気を見つけるきっかけとして、痛みがなくても歯科を受診してください。」

今日からできる、歯ぐきチェックと正しいケアの方法

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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

---歯ぐきの変化に気づくために、今日からできることがあれば教えてください。

鷹巣 多紀さん:

「最初の一歩としておすすめするのは、毎日の歯みがきに『歯ぐきの確認』と『歯と歯の間の清掃』を加えることです。たとえば、寝る前の歯みがきの時間に取り入れてみましょう。変化に気づくことと、炎症の原因になる歯垢を減らすことを、一緒に続けられます。

まず、鏡を見ながら唇を軽くめくり、赤く腫れた部分はないか、以前より歯が長く見えるところはないかを確かめてください。歯みがきのときに血がにじむ場所も、気づいておきたい変化です。どのあたりが気になったかを覚えておくと、歯科で相談するときに伝えやすくなりますよ。

磨くときは、歯と歯ぐきの境目に毛先を軽く当て、小さく動かしましょう。歯ブラシだけでは歯と歯の間まで十分に届きにくいため、すき間の狭い部分にはフロス、広い部分には合うサイズの歯間ブラシを使うのが基本です。フロスは勢いよく押し込まず、歯の側面に沿わせてゆっくり動かしてください。歯間ブラシも、無理なく入るサイズを選びましょう。

少量の出血があっても、その部分をまったく磨かなくなると、歯垢が残って炎症が続く原因になります。力をかけすぎないように清掃し、出血や腫れは歯科で確かめてもらいましょう。

また、歯石や深い歯周ポケットの中の汚れは、自宅のケアだけでは取りきれません。歯科で磨き残しや歯ぐきの状態を確認してもらうと、自分に合う道具や磨き方も分かります。毎日のケアと定期的な歯科での確認を組み合わせて、歯ぐきの健康を守っていきましょう。」

歯ぐきの小さな変化は、体からの大切なサイン

歯周病が膵臓がんを引き起こすと証明されているわけではなく、歯周病の治療で膵臓がんを防げるかも現時点では分かっていません。しかし、歯ぐきの出血・腫れ・下がりという身近な変化は、放置すれば歯を支える骨を失うことにつながる、見過ごせないサインです。

痛みがないからといって油断せず、毎日の歯みがきに歯ぐきの確認と歯の間の清掃を加え、気になる変化があれば歯科を受診する。この積み重ねが、口の中の健康を守るだけでなく、体全体の変化に気づく第一歩になるのかもしれません。


監修者:鷹巣 多紀
大学病院口腔外科にて研修後、一般歯科にて勤務。現在は1児の母として子育てと仕事に奮闘しています。
歯科医師ママkiki|note: https://share.google/uUYsDiSMnkNKZCrOw X: https://x.com/kikimama0405

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