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「テレビの音も聞こえないんです」毎晩続く祭りの練習。だが、悩んだ僕が相談した結果

  • 2026.9.28

毎年9月と10月に始まる練習

毎年9月と10月になると、家の裏にある山車の小屋へ、夕方から若い人たちが集まってくる。秋祭りに向けた練習だ。

太鼓と鐘が鳴り、マイクを通した祭り歌が響き始めると、それが毎晩4時間ほど続く。

うちは一戸建てで、ちょうど練習場所の真裏に建っている。

晩ごはんの時間になると、太鼓の音で居間の窓ガラスが細かく震えるほどだった。

妻がテレビのリモコンを手に取り、音量を上げながらため息をついた。

「これじゃ、ニュースも天気予報も聞こえないね」

「そうだな…。でも、町の祭りだから言いにくいよ」

「祭りが嫌なわけじゃないけど、毎年これが続くのはつらいね」

僕も同じ気持ちだった。子どものころから祭りは好きだったし、山車を引くのも楽しみにしていた。

だからこそ、自分が苦情を言う側になることには抵抗があった。

それでも練習が終わるのは、いつも夜遅くだった。音がやんだあとも耳の奥で太鼓が鳴っているようで、布団に入ってもなかなか寝つけない。

以前、練習がなかった年に夫婦で静かな秋を過ごしたことを、何度も思い出していた。

町内会の会議で、思い切って伝えた

翌年の夏、町内会の会議で祭りの準備が議題に上がった。

言うなら今しかない。そう思い、僕は膝の上で握っていた手を挙げた。

「少し、いいでしょうか。祭りは大事だと思っていますし、僕も子どものころは山車を引くのが楽しみでした」

集まった人たちの視線がこちらに向いた。少し緊張しながら、僕は続けた。

「ただ、うちは練習場所の真裏なんです。毎晩4時間ほど続くと、テレビも聞こえなくて…。正直、かなり困っています」

会議室が静かになった。

前の列にいた祭りの世話役さんは、しばらく黙っていた。日に焼けた、僕より少し若いくらいの男性だった。

やがて立ち上がると、こちらを向いて言った。

「……真裏のお宅のことまで、考えられていませんでした。長い間、申し訳ありませんでした」

そう言って、世話役さんは頭を下げた。

僕は責めたいわけではなかったので、思わず「いえ、祭りをやめてほしいわけじゃないんです」と返した。

すると、若い人たちのまとめ役の青年が手帳を開いた。

「時間を早めに切り上げましょう。夜8時半までにして、マイクも使わないようにする。小屋の戸も閉めて練習する形でどうでしょう」

役員さんたちもうなずき、しばらく話し合った結果、その方法で練習を続けることになった。

次の秋、聞こえてきた音は

次の秋、家の裏から聞こえる音は大きく変わった。

太鼓の音は小屋の戸の向こうからくぐもって聞こえ、夜8時半になると練習は終わった。

妻がテレビの音量を下げながら、ほっとしたように笑った。

「ひさしぶりね。こんなに静かな夜」

祭りの当日、山車の前にいた世話役さんが僕たちを見つけ、手を振った。

「今年の山車、見に来てください」

僕は妻と並んで、いちばん前で山車を見送った。

祭りを大切にしたい気持ちと、静かに暮らしたい気持ち。そのどちらかを我慢するのではなく、一度きちんと伝えたことで、両方を守れる形になったのだと思う。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた60代以上男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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