1. トップ
  2. エピソード
  3. 図書館からの返却期限の通知に、1行だけ添え書き→「続き、入荷しました」に私は走りました

図書館からの返却期限の通知に、1行だけ添え書き→「続き、入荷しました」に私は走りました

  • 2026.9.27
ハウコレ

新着の棚に案内されて下巻を手に取りながら、私は司書の名札を初めて読みました。なぜあの1行が私に届いたのか、その場では聞けないままでした。

「返却期限が近づいています」という定型文の下に、見覚えのない1行が続いていました。

上巻だけの棚

近所の図書館とは、返却期限の連絡が届く公式のチャットでつながっています。通知は決まった文面で、人の気配を感じたことは一度もありませんでした。そのやりとりの前、私は借りていた小説の上巻を返却カウンターに出しています。続きが気になって検索機で調べても、下巻は出てきませんでした。

「下巻は、ないんですね」

受付の司書に聞くと、申し訳なさそうに頭を下げられました。

「申し訳ありません。当館では上巻しか所蔵がなくて」

「そうですか」

それだけ言って、私は本を置いて帰りました。続きは自分で買えばいいと思いながら、結局は買わずに別の本を借りて、そのまま日が過ぎていました。

定型文の下の1行

届いた通知の上半分は、いつも通りでした。ご利用中の資料の返却期限が近づいています、という文面です。その下に、改行を1つ挟んで、短い一言が続いていました。

「続き、入荷しました」

署名も、本の名前もありません。自動で送られる文面に、こんな行が混ざるはずがありません。だとしたら、誰かが打ち込んだことになります。あのとき頭を下げた司書だろうか、それとも別の職員だろうか。画面の向こうの様子は、想像するしかありませんでした。返信欄に「ありがとうございます」と打ちかけて、消しました。文字で返すより先に、本を手に取りたかったのです。私はサンダルをつっかけて、図書館までの道を走りました。

新着の棚にあった1冊

図書館に着いて、私はまっすぐ返却カウンターへ向かいました。あの日と同じ司書が立っていました。

「あの、メッセージに、続きが入荷したって」

「はい。新着の棚にあります」

司書が案内してくれた棚に、真新しい下巻が1冊ありました。誰かに先に借りられていてもおかしくなかった本です。貸出の手続きを待つ間、私はその人の名札を初めて読みました。

「ありがとうございます」

言えたのはそれだけで、なぜ私に連絡をくれたのかは、聞けませんでした。

そして...

下巻は、その日のうちに読み終えました。返却するとき、私はカウンターの横にある購入希望の用紙を初めて1枚取りました。今までは、ないなら諦めるものだと思っていました。

(20代女性・事務職)

本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。

(ハウコレ編集部)

元記事で読む
の記事をもっとみる

注目コンテンツ