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「住人の皆様の幸せを願って、宝くじを30枚購入しました」階段の掲示板に毎週増える大家さんの張り紙。ある朝見つけた部屋番号

  • 2026.9.27

踊り場の掲示板に増えていく紙

40代の私は、妻と二人で賃貸マンションに住んでいる。大家さんは70代くらいの男性で、マンションのすぐ近くの一軒家で暮らしている。

顔を合わせれば、いつも穏やかに笑って先に頭を下げてくれる人だ。

入居してしばらくしたころ、階段の踊り場にある掲示板に、大家さんの張り紙が出るようになった。

最初は清掃日や設備点検のお知らせなど、ごく普通の内容だった。

ところが、いつからか内容が少し変わった。

「今週は階段を掃除しました」

「来週は植木を手入れします」

そんな報告の紙が、毎週2枚ずつ増えていった。古いものは剥がされず、掲示板は少しずつ白い紙で埋まっていく。

年末の夜、仕事から帰って階段を上がっていると、その真ん中に見慣れない一枚が貼られていた。

「住人の皆様の幸せを願って、宝くじを30枚購入しました」

部屋に戻り、コートを脱ぎながら妻に話した。

「今度は宝くじを30枚買ったって書いてあったよ」

「え、住人のために?」

「そうみたい。幸せを願って、って」

妻は少し黙ってから、困ったように笑った。

「……ずいぶん変わったお知らせね」

私も「そうだな」と返したが、それ以上は何と言えばいいのか分からなかった。

年が明けると、文章まで変わった

年が明けると、掃除や植木についての新しい報告は貼られなくなった。

その代わり、短い詩のような言葉が並ぶようになった。

ある週には、「階段の光は、みなさまの窓へ帰っていきます」とだけ書かれていた。

翌週も、その翌週も、新しい紙が増えていく。どれも丁寧な字で書かれ、四隅まできっちりテープで留められていた。以前の報告や宝くじの紙も、掲示板の下のほうに残ったままだった。

ある朝、ゴミを出しに行くと門の前で大家さんに会った。

宝くじの張り紙について聞こうか迷っていると、大家さんのほうから穏やかに声をかけてきた。

「今年も、皆さんが幸せでありますように」

「あ……ありがとうございます」

私はそれだけ返して、その場を離れた。

大家さんに何かをされたことは一度もない。家賃でもめたこともなく、会えば今まで通りにこやかに挨拶をしてくれる。

その晩、妻に話した。

「今日も大家さんに会ったよ」

「何か言ってた?」

「今年もみんなが幸せでありますように、って」

妻は少し考えてから言った。

「悪い人ではないんでしょうね。でも、こっちからは何も言わないでおこうか」

「うん。そうしよう」

最後に増えた一枚

その後、ふと気づくと、ほかの部屋の郵便受けに出ていた名前がいつの間にか変わっていることがあった。

引っ越しのトラックを見た覚えはない。ただ、住人が入れ替わっているらしいことだけは分かった。

私たち夫婦は、今も同じ部屋に住んでいる。

そして今朝、ゴミ袋を提げて階段を下りたときのことだ。

掲示板に、また一枚、新しい紙が増えていた。

いつもの詩のような言葉が書かれている。

その下には少し間があり、最後に、うちの部屋番号だけが記されていた。

どういう意味なのかは、今も分からない。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた40代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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