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「今日も始まったわね」毎日道路に響く向かいの奥さんの電話。ある日、早く帰った夫が足を止めた

  • 2026.9.27
「今日も始まったわね」毎日道路に響く向かいの奥さんの電話。ある日、早く帰った夫が足を止めた

夕方になると響く向かいの声

家で仕事をするようになって、窓際に机を置いた。

道路をはさんだ向かいの家には、40代くらいのご夫婦が住んでいる。

気になるようになったのは、夕方4時ごろだった。

向かいの奥さんが道路に出てきて、携帯電話で話し始めるのだ。それが、ほとんど毎日のように続いていた。

とにかく声が大きい。身内のことを話しているらしく、閉めた窓越しにも声が届く。

内容まで聞くつもりはないのに、仕事をしていても耳に入ってきてしまった。

ある日の夕方、ゴミ袋を出しに外へ出ると、隣の家の年配の女性が向かいを見ながら苦笑いした。

「今日も始まったわね」

「毎日ですよね」

女性は小さく息をついた。

「ご本人は、こんなに聞こえてるって気づいてないのかしらね」

「僕も、さすがに言いづらくて」

少なくとも隣の女性も同じように気になっていたのだと、そのとき初めて分かった。

そうして1年以上がたった。

僕は4時が近づくと窓を閉めるのが、いつの間にか習慣になっていた。

いつもより早く帰ってきたご主人

その日も4時を少し過ぎたころ、向かいの奥さんが道路へ出てきた。

いつものように電話の声が響き始めたとき、見慣れた車が角を曲がってきた。

向かいのご主人だった。いつもよりずいぶん早い帰宅だった。

車を停めて降りると、ご主人は電話中の奥さんのそばで足を止めた。

「ねえ」

奥さんが携帯電話を耳から少し離す。

ご主人は怒るでもなく、普段どおりの口調で言った。

「その声、角を曲がる前から聞こえてたよ。家の中で話したら?」

奥さんは一瞬きょとんとしたあと、周囲を見回した。ちょうど自転車を押して通りかかった近所の男性と目が合うと、男性は小さく会釈した。

奥さんは少し間を置いて、電話に戻った。

「…ごめん、またかけ直すね」

そう言って電話を切ると、そのまま玄関へ入っていった。ご主人も僕の家の窓のほうへ軽く頭を下げ、あとに続いた。

翌日の夕方4時、道路には誰も出てこなかった。向かいの家からかすかに話し声は聞こえたものの、何を話しているかまでは分からない。

それからも、道路まで響くほどの電話の声は聞こえなくなった。

後日、ゴミ出しで隣の女性と顔を合わせた。

「静かになったわね」

「ええ。窓を閉めなくて済むようになりました」

二人で笑った。

向かいの奥さんも、道で会えば以前と変わらず会釈をしてくれる。大げさな言い争いになったわけではない。ただ、自分の声が思っていた以上に周囲へ届いていると気づいただけだったのかもしれない。

夕方になっても、今では窓を開けたまま過ごせている。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた30代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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