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「無視してたわけじゃなかったの?」2年間挨拶を返さなかった青年。エレベーターで荷物を拾ったあとに聞いた一言

  • 2026.9.27
「無視してたわけじゃなかったの?」2年間挨拶を返さなかった青年。エレベーターで荷物を拾ったあとに聞いた一言

返ってこない「こんにちは」

夫を見送ってから、私はマンションでひとり暮らしをしている。エレベーターで住人と顔を合わせれば、自然とあいさつをするのが習慣になっていた。

そんな中、よく乗り合わせるのが、下の階に住む20代くらいの男性だった。いつもフードをかぶり、イヤホンをしたまま、うつむいて壁ぎわに立っている。

「こんにちは」

声をかけても、返事はない。こちらを見ることもなかった。

最初は聞こえなかったのだろうと思った。次に会ったときは少し声を張ってみたが、やはり反応はなかった。

そんな状態が、いつの間にか2年ほど続いていた。

ある晩、電話で娘にそのことを話した。

「もう2年くらいになるのよ。会えばあいさつしてるんだけど、一度も返ってこなくて」

「イヤホンしてるんでしょ?本当に聞こえてないのかもしれないよ」

「そうなのかしら。でも、毎回だとちょっと気まずくてねえ」

「気にしすぎないほうがいいよ。何か事情があるのかもしれないし」

娘に言われれば、その通りだと思った。

それでも、返事のない相手に何度も声をかけるのも気まずい。いつしか私は、ホールで彼の姿を見かけると、エレベーターを一本見送ることが増えていた。

床に落ちた買い物袋

冬のはじめの夕方、スーパーで買い物をした帰りだった。

紙袋を抱えてエレベーターに乗ると、奥にあの男性が立っていた。

今さら降りるのも不自然だと思い、私は黙って扉のほうを向いた。

そのとき、紙袋の持ち手が突然ちぎれた。

「あっ」

牛乳パックやパン、箱入りの食品が床に落ちた。慌ててしゃがもうとすると、男性が先にイヤホンを外してかがみ込んだ。

散らばったものを一つずつ拾い、私に渡してくれる。

「これで全部ですかね」

「ええ、多分。ありがとう。助かったわ」

私がそう言うと、男性は少し驚いたようにこちらを見た。

「あの…前から、僕に声かけてくれてました?」

突然そう聞かれ、私は一瞬言葉に詰まった。

「ええ。会ったときに、こんにちはって」

「やっぱり…」

男性は気まずそうにイヤホンを握った。

「すみません。夜勤の帰りとか、イヤホンしたまま帰ってくることが多くて。周りの声、ほとんど聞いてなくて…」

「じゃあ、無視してたわけじゃなかったの?」

「はい。たぶん、気づいてなかったです。すみません」

申し訳なさそうに頭を下げる姿を見て、私は力が抜けた。

2年間、嫌われているのかもしれないと勝手に気にしていたのだ。

「そうだったの。私も勝手に気にしてたわ。それより、拾ってくれてありがとう」

「袋、これじゃ持てないですよね」

男性は落ちた品物を抱え、私の玄関前まで運ぶのを手伝ってくれた。

翌日、先に聞こえた声

翌日の昼、ホールでエレベーターを待っていると、扉が開いた。

中には、あの男性がいた。

私に気づくと、彼はすぐにイヤホンを片耳から外した。そして少し照れたように笑った。

「こんにちは」

一瞬遅れて、私も笑った。

「こんにちは。お仕事、お疲れさま」

ほんの短いやり取りなのに、昨日までとはエレベーターの中の空気がまるで違って感じられた。

一緒に乗っていた管理人さんが、私たちを見比べて少し驚いた顔をしたあと、静かに笑った。

それ以来、私は彼の姿を見かけても、エレベーターを一本見送ることはなくなった。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた60代以上女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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