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「ベビーカーは乗っていいんですよ」ベビーカーの母親が謝り続ける車内。舌打ちした男性の近くで僕がかけた一言

  • 2026.9.26
「ベビーカーは乗っていいんですよ」ベビーカーの母親が謝り続ける車内。舌打ちした男性の近くで僕がかけた一言

夕方の車内で響いた舌打ち

仕事帰りの夕方、僕が乗った電車は満員に近い状態だった。つり革をつかむのもやっとで、乗客はそれぞれ体を小さくしながら立っていた。

途中の駅で、赤ちゃんを乗せたベビーカーを押すお母さんが乗ってきた。ドアの横に立つと、できるだけ場所を取らないようにするように、ベビーカーを自分のほうへ引き寄せていた。

そのとき、すぐそばにいた五十代くらいの男性が、大きく舌打ちをした。

「邪魔なんだよ」

お母さんがびくっと肩を揺らす。

男性はもう一度舌打ちすると、今度は少し声を大きくした。

「邪魔なんだよ。混んでる時間に、こんな大きなもの持ち込むなよ」

「すみません…申し訳ありません」

お母さんは顔を赤くし、何度も頭を下げた。赤ちゃんは何が起きているのか分からない様子で、母親を見上げている。

周囲の乗客も気づいていたはずだが、誰も声を出さなかった。僕も一度は目をそらしかけた。

けれど、お母さんがベビーカーの取っ手を強く握ったまま謝り続けているのを見て、そのままにはできなかった。

「こちら、少し空けますね」

僕はできるだけ落ち着いた声で言った。

「ベビーカーは乗っていいんですよ。こちら、少し空けますね」

そう言いながら、僕は半歩ずつ奥へ移動した。

すると、隣にいた学生らしい青年が鞄を胸の前に抱え直し、その向こうの会社員も体をひねって少し詰めてくれた。わずかではあるが、ベビーカーの周りに余裕ができた。

近くにいた年配の女性も、お母さんの腕にそっと手を添えた。

「ここなら大丈夫そうね。赤ちゃん、いい子ねえ」

「ありがとうございます…」

男性は何か言いかけたものの、周囲を見回して口を閉じた。そのまま窓の外を向き、次の駅で黙って降りていった。

お母さんは僕のほうを向き、また小さく頭を下げた。

「本当にすみません」

僕は首を振った。

「いや、謝らなくて大丈夫ですよ」

その言葉に、お母さんはようやく少しだけ笑った。そばでは、赤ちゃんが小さな手を伸ばし、年配の女性の指をつかんでいた。

帰宅して妻に話したこと

その夜、家に帰ってから妻に車内での出来事を話した。

「ベビーカーのお母さんに、ずっと『邪魔だ』って言ってる人がいてさ」

妻は驚いた顔をした。

「それで、あなたは何て言ったの?」

「『ベビーカーは乗っていいんですよ。少し空けますね』って。それだけ」

妻は玄関に畳んで置いてある娘のベビーカーへ目をやった。

「でも、その一言が言えないことってあるよね」

自分でも、大げさなことをしたとは思っていない。ただ、あのとき黙ったままでいなくてよかったとは、今でも思っている。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた30代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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